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診療科・部門

産科・婦人科

当科の特色

(1) 婦人科

内視鏡手術とがん診療が中心になっています。2020年の総手術数は、COVID-19のパンデミックの影響で減少したものの1410件あり、そのうち腹腔鏡や子宮鏡を用いた内視鏡手術が970件という実績となっています。内視鏡手術の利点は何と言っても、傷が小さく、体への負担が少ない点にあります。そのため退院が早く、日常生活への復帰が早いことが特色です。退院までの標準日数は子宮鏡手術で翌日、腹腔鏡手術なら術後4日目となっています。腹腔鏡手術は、小さい穴を通したカメラや器械を使っての手術のため、一般の開腹手術とは異なった高度な熟練した技術が求められますが、当科では早くから内視鏡手術に取り組み、内視鏡手術件数は10,000件以上に達しています。これらの豊富な経験の積み重ねを生かし難度の高い内視鏡手術も行えるようになっており、今や内視鏡手術が標準といえます。夜間や緊急の患者さんも、当院では救急体制も麻酔科も充実していますので内視鏡で緊急手術を行う事もできます。また、ダ・ヴィンチによるロボット支援下腹腔鏡手術も行っております。

I 良性疾患

良性の腫瘍は、すべてが手術になるとは限りませんが、状況により手術になることも少なくありません。私たちは、良性疾患の手術はほとんど内視鏡手術で行っております。

① 子宮筋腫
子宮筋腫は女性の約20%に見られる疾患で、多くは手術の適応になりません。しかし、月経量が多い、月経痛がつらい、お腹が出てきて困る、頻尿がある、これから妊娠した時の合併症が心配というような時は手術の対象になります。ほとんどの場合、腹腔鏡で手術を行い、子宮の内腔に出てきた筋腫のみを切除するときには子宮鏡で行います。子宮筋腫のみを切除する子宮筋腫核出術と子宮を摘出する子宮全摘術の両方があり、希望に応じて術式を決めていきます。おなかが膨らむような大きな子宮筋腫にも、多くは腹腔鏡で行うことが可能です。

② 子宮内膜症・卵巣チョコレート嚢胞・子宮腺筋症
月経のときに月経血と共に脱落する子宮内膜が、子宮内腔以外で増殖する疾患で、子宮筋層に増殖したものを子宮腺筋症、それ以外の部位に発生したものを子宮内膜症、特に卵巣内に溶けたチョコレート様の液体が貯まるものを卵巣チョコレート嚢胞と呼んでいます。

子宮腺筋症は、強い月経痛や月経量が異常に多くなることがあり、治療の対象になることが多いです。一時的には、月経を止める偽閉経療法が有効ですが、長期間投与ができないため、手術が必要になることもあります。子宮全摘術と子宮を残す子宮腺筋症核出術があり、ともにほとんど腹腔鏡手術で行います。ただし、子宮腺筋症が子宮筋層全体にわたっている場合に子宮腺筋症核出術を行っても再発しやすいので注意が必要です。

子宮内膜症はおなかの中に癒着をきたして、不妊症の原因になったり、月経痛や下腹痛をきたす疾患で、多くは鎮痛剤、低用量ピルや偽閉経療法などの薬物療法の対象になります。卵巣チョコレート嚢胞は、近年では卵巣がんとの関連も言われており、手術の対象になることが多いです。卵巣と卵管を摘出する付属器摘除術またはチョコレート嚢胞のみを摘出し、卵巣は温存する核出術があります。核出術では、出血を少なくする薬物を卵巣に注射して、不妊治療に影響をきたす卵巣の予備能の減少を最小限にしています。また、卵巣や卵管の癒着を剥離して、妊孕能を高めることも行っています。

子宮内膜症の中でも、薬物でも治りづらい深部子宮内膜症という疾患があります。子宮の近くにある仙骨子宮靱帯という結合組織から直腸や膣の周囲にまで強い痛みを伴うしこりができて、強い月経痛・排便痛・性交痛の原因になります。このような状態は、通常強い癒着を伴い、腸管や尿管などの臓器を巻き込んでいることも少なくないですが、腹腔鏡で病変を除去すれば、かなりの除痛効果があります。

③ 卵巣腫瘍
卵巣腫瘍は前述のチョコレート嚢胞のほかに、奇形腫、漿液性、粘液性などがあり、良性腫瘍であることを確定するには、手術が必要になり、通常は腹腔鏡手術で行います。時に卵巣の茎が捻転して、強い痛みが発生することがありますが、その際の緊急手術にも対応しています。

④ 異所性妊娠(子宮外妊娠)
子宮以外の部位で妊娠している状態で、時に腹腔内に出血が多くなり、強い腹痛をきたし、危険な状態になることがありますので、通常腹腔鏡手術が必要になります。異所性妊娠で最も多い卵管妊娠では、卵管を残し、卵管に残っている可能性のある妊娠の組織を薬物で治療する方法も積極的に行っています。

⑤ 骨盤臓器脱(子宮脱など)
骨盤臓器脱は、膣から子宮や膀胱などの臓器が脱出してくる状態で、排尿障害を伴うことも多く、日常の生活に支障をきたす疾患です。ペッサリーリングを膣内に挿入して脱出をおさえることができますが、リングが出てきたり、リングがこすれて膣から出血が続く場合、手術が必要になります。手術は数通りの方法があり、当院では腹腔鏡下仙骨膣固定術の施設認定を取得し保険診療で行うこともできるので、患者さんの状態に応じた手術を選択いたします。

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II 婦人科腫瘍

婦人科腫瘍は、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、卵管がん、腹膜がん 子宮肉腫 外陰がんの方々の治療を行います。治療ガイドラインなど、根拠に基づく診療を行いながら、患者さんの状態や合併症、社会における役割、ご家族との関係、ご本人の生き方に対する考え方などを治療前から十分に話し合い、それをもって治療方針を一緒に考え決定していきます。そのため、看護師、医療ソーシャルワーカー、薬剤師、チャイルド・ライフ・スペシャリスト、臨床心理士、在宅看護支援看護師など多職種と連携し治療を進めていきます。治療の目標は、もっとも治療効果が高い治療を行い、その結果、治療前の生活を取り戻すことです。治療による後遺症や合併症(リンパ浮腫、排尿障害、ホルモンの低下、骨粗しょう症のリスクなど)が発症した場合、治療後の生活の質の低下や社会復帰が妨げられることがないように、リンパ浮腫外来、女性医学外来などの診療に力を入れています。このような考えに基づき、可能な限り患者さん個々の状態にあわせ、副作用や合併症の少ない治療の選択を行います。北海道という広い特性上、通院に数時間がかかってしまうような遠方の方も多く、地域との連携や緊急の時の対応に備えるよう対応を行います。治療終了後は、再発の有無についての経過観察を行います。治療後についても、治療中と同様に、社会活動、生活について可能な限り支援させていただきます。

対象疾患
子宮頸がん、子宮体がん、子宮肉腫、卵巣がん、卵管がん、腹膜がん、膣がん、外陰がん 他

主に施行している治療
手術、化学療法、放射線治療、内分泌治療、緩和治療、妊孕能温存治療、リンパ浮腫に対する集学的治療、化学療法に対する支持療法

 

子宮頸がん
手術、放射線療法、化学療法を行います。単独の治療や、それぞれの組み合わせの治療を行います(手術と化学療法の併用や放射線治療と化学療法の併用など)。治療方針は、腫瘍の進行期、組織型、年齢などを総合的に考慮し決定します。手術は、子宮頚部上皮内病変の場合は円錐切除術、浸潤がんの場合は開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援下手術などでの子宮摘出を提案いたします。化学療法は、通常の静脈内全身投与のほかに、手術前に子宮動脈より直接子宮に抗がん剤を注入し、全身への化学療法の副作用を軽減しながら、腫瘍に直接作用させることにより、腫瘍からの出血の減少、腫瘍の縮小を行う方法があります。この方法によって腫瘍は縮小し、より侵襲の少ない手術を行うことが可能となります。子宮頸がんの手術は、進行期や腫瘍の状態により子宮の摘出方法が異なり、合併症がそれぞれ異なってきます。子宮を支えている靭帯(基靭帯)まで摘出する広汎子宮全的術を行う場合、排尿機能が低下する可能性があります。手術前に腫瘍を縮小させることで、排尿に関わる自律神経を温存できる手術をより確実に行いやすくなり、合併症の軽減となることが期待されます。 放射線治療の場合、(化学療法を併用することが多い)入院治療または通院治療にて、放射線科専門医師と連携をして治療します。それぞれの社会的な事情などを考慮しながら、約1か月半(状況によって異なります)の治療を継続ができるようにいたします。

子宮体がん
手術、化学療法、内分泌療法を行います。単独の治療や、それぞれの組み合わせの治療を行います。多くは手術が基本治療となり、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援下手術より選択します。手術前の診断でステージⅠA期かつ類内膜癌グレード1または2と診断された方は、リンパ節郭清を省略することができます。ステージⅠB期以上の場合、リンパ節郭清術を行います。リンパ節郭清により術後続発性リンパ浮腫の合併症のリスクがありますが、手術前後より、リンパ浮腫専門スタッフの指導のもと、予防、早期発見につとめます。それにもかかわらずリンパ浮腫が発症した場合は、専門外来にて、集学的治療を積極的に行います。
手術後は、摘出した子宮やリンパ節などの病理組織を確認し、再発リスク検討を行い、必要に応じて化学療法を提案させていただきます。化学療法の副作用(脱毛、倦怠感、しびれなど)に対する支持療法を十分に行い、専門薬剤師による薬剤師外来、緩和医療、臨床心理士などとかかわりをもちながら、副作用軽減につとめます。

卵巣がん・卵管がん・腹膜がん
卵巣がん、卵管がん、腹膜がんは、手術前に病理組織で確定診断を行うことが困難なため、初回手術時に腫瘍を摘出して病理診断を行い確定診断とします。この初回手術時に、術中迅速病理診断を行い、悪性の診断がつけば、子宮卵巣卵管摘出、大網摘出、(リンパ節郭清)を施行します。一方、卵巣癌は症状がでにくく、検診を施行していても、早期発見が難しいがんといえます。お腹の中にがんが散らばってしまう腹膜播種という状態になりやすく、初回の手術で摘出しきれないこと、摘出ができても、腸などの合併切除が必要となり侵襲が大きくなってしまう場合があります。このような、初回手術で摘出が困難な場合、CTガイド下生検または審査腹腔鏡などにて組織の一部を採取し診断を確定します。これらの方法は、体の状態が不良であっても、負担が少なく組織を採取することができます。組織の診断を確定後、術前化学療法行い、お腹のなかに広がった腫瘍を縮小させ、その後、子宮卵巣卵管摘出、大網摘出、リンパ節郭清(必要に応じて腸管、横隔膜、肝臓部分切除などの合併切除)の手術を行います。リンパ節郭清の必要性については、CT検査、PETCT検査、腫瘍マーカー検査などを総合的に評価し提案させていただきます。これは、根治手術といい、すべての腫瘍を摘出することを目標とします。手術の後、通常は化学療法が必要となります。化学療法終了後は、維持療法として、PARP阻害薬(内服)やベバシズマブ治療(点滴)をお勧めします。

子宮肉腫
子宮肉腫は、子宮の筋肉からできる平滑筋肉腫や間質から発生する肉腫などが存在します。手術前に子宮筋腫と子宮肉腫との鑑別は困難なことが考えられ、MRI拡散協調画像による評価や急速に増大する腫瘤などにより診断を疑うことになります。子宮筋腫の手術をしたらその結果肉腫だったとのことで、その後の治療を行うこともあります。基本は手術による子宮摘出です。化学療法は、摘出が困難な腫瘍が存在する場合などに施行します。化学療法は有効だという報告もありますが十分といえず、今後はさらに施行については、個々に検討を行う必要があります。

遺伝性乳がん卵巣癌症候群について
遺伝性乳がん卵巣癌症候群はBRCA1またはBRCA2遺伝子に変化があると、乳がんや卵巣がん、腹膜がんを発症しやすいといわれています。卵巣がんと診断された患者さんのうち17.8%に、卵巣がんの発生や進行と関連のある遺伝子に病的な変異があることが分かりました。BRCA 遺伝子は男女関係なく誰でも持っている遺伝子で、BRCA遺伝子に変化がある場合は、卵巣がんだけでなく、乳がん、膵臓がん、前立腺がんなどを発症する可能性も高まることが知られています。当院では、卵巣がん、卵管がん、腹膜がんの方にBRCA遺伝子変異の有無を、血液検査で検査をすることができます。また、乳がん発症後などですでにBRCA遺伝子変異があると診断された場合、卵巣卵管がんになる前に腹腔鏡で卵巣卵管を予防的に切除する「リスク低減手術」を行うことができます。前述したとおり、卵巣卵管がんは検診をしていても進行した状態で発見されることがあり、リスク低減手術は卵巣卵管がんの予防にとても重要な役割があると考えられます。その場合、妊娠出産という人生のライフスタイルなど個々の生き方に関与し、卵巣摘出後はホルモン欠落症状(更年期、骨粗しょう症、脂質異常症)などへの不安に対し、さまざまな状況に配慮し、女性医学専門医師や遺伝カウンセラーなどで十分な診療を受けることをお勧めしています。

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(2) 周産期  [母子はぐくみセンターのページはこちら]

室内

妊娠中から妊婦さんとお話し合いをしてその人に合った分娩プランを立て、栄養の取り方、生活の仕方や様々な不安などに対し色々とアドバイスを行っています。3室の分娩室はすべて陣痛から分娩まで個室内で行うLDRとなっています。夫の立ち会いはもちろん、ご家族で新しい命の誕生に立ち会うこともできます。アロマセラピーやBGMによる自然な和痛を行いながら分娩まで過ごしていただきます。分娩は個性に合ったフリースタイルを取り入れ、側臥位や四つん這いなどその妊婦さんに最適なスタイルでのお産を行っています。出産されたママにはお祝い膳をご用意しております。

 赤ちゃんの哺育にはいかなる側面からも母乳がベストであることは世界的に認められた事実です。しかし全てのお母さんが簡単に母乳哺育をできるようになるわけではありません。当科の助産師は皆さんが母乳哺育できるよう入院中ばかりでなく退院後も母乳育児外来や電話相談などで様々なアドバイスをいたします。
妊娠は通常は安全に経過しますが、時に母児が様々な妊娠中のトラブルにより危険にさらされることがあります。このような時、ほかの専門科の協力が必要なことが少なくありません。当院はほぼすべての診療科が揃っており、協力してトラブルに対処しています。分娩時に胎児の急変があった場合にも、迅速に麻酔科や小児科と連携をとり対処するシステムをとっています。産後の出血が多く、母体の命が危うい場合にも麻酔科や輸血検査室などの協力体制を整えています。このように他科と協力して、妊娠中に起こる不測の事態に対応することができるので、安心して分娩に臨めます。
当院には、リスクの高い赤ちゃんや早産にも対応できる、新生児のICU(NICU)があり、様々な合併症を持った妊婦さん、異常妊娠やハイリスクな妊婦さんも紹介されてきます。あらゆる病気に対応できる各専門科があり、緊急時にも麻酔科が迅速に帝王切開に対応し、生まれた赤ちゃんはすぐに小児科医が診てくれる、このようなバックアップがあってこそ良いお産に臨めるのだと思います。

また、当院はさい帯血バンクの提携産科施設です。さい帯血は白血病などの重い血液疾患の治療に役立てられます。さい帯血バンクについて詳しく知りたい方は、下記のホームページをご参照下さい。

 

北海道さい帯血バンク(日本赤十字社 北海道ブロック血液センター ホームページへ)

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(3)母子感染

当院では、母子感染の専門家が母子感染の診断や治療にあたり、予防にも積極的に取り組んでいます。
母子感染で有名なのは、TORCH症候群です。TORCHとは、Toxoplasma、Others (梅毒、パルボウイルスB19など)、Rubella(風疹)、Cytomegalovirus、Herpes simplex virusの頭文字です。日本での出生児数は年間、後遺症をきたす先天性サイトメガロウイルス感染が1000人、先天性トキソプラズマ感染100~200人、先天性ヘルペス感染/新生児ヘルペス100人、先天梅毒20〜50人、先天性パルボウイルスB19感染10人(流行年は100人)、先天性風疹感染が0~5人です。
例として、トキソプラズマとサイトメガロウイルスについて解説します。トキソプラズマ、サイトメガロウイルスやパルボウイルスB19の妊娠管理マニュアル、妊婦感染予防パンフレット等は、http://www.med.kobe-u.ac.jp/cmv/index.html からダウンロード可能ですので、ぜひ利用して下さい。

妊娠中初めてトキソプラズマに感染すると胎盤を経由して胎児に感染し、水頭症、脳内石灰化、小頭症、網脈絡膜炎、小眼球症、精神神経・運動障害、肝脾腫などの先天性トキソプラズマ症を起こします。ヒトには、感染動物の筋肉に含まれるシストや、ネコ科動物の糞便中のオーシストに汚染された土、食物や水を介して経口感染します。

日本人妊婦の抗体保有率は、4%です。トキソプラズマ妊婦スクリーニング方法を図に示します。妊娠初期にトキソプラズマIgGを測定し、IgG陰性者は妊娠中の初感染予防のための教育と啓発を受けます。妊娠中の経口感染の予防法として、以下を心がけてください。① 生肉、加熱不十分肉を決して食べない。② 海外旅行(中欧)では、肉料理をさける。③ ガーデニングは手袋をする。④ 野菜や果実の土をよく洗う。⑤ 野良猫や子猫の糞に注意する。

IgG陽性妊婦はIgMを測定します。IgM陽性は初感染疑いとして扱い、胎児超音波断層法などの精査と胎児感染予防の目的でスピラマイシン治療(900万国際単位/日・分3を分娩まで)を行います。トキソプラズマIgM陽性妊婦のうち、およそ7割はpersistent IgMないし偽陽性で本当の妊娠中の初感染ではありません。IgG avidity(保険未収載)は必須ではありませんが、希望があれば自費で測定できます。羊水PCR陽性の場合、スルファジアジン(4g/日)とピリメタミン(50 mg/日)、および葉酸(5~10 mg/日)の治療を併用します。先天性感染が疑われる新生児に対しては、分娩時羊水・血液・髄液PCR(保険未収載)、臍帯血IgM、眼底、頭部画像検査を実施します。先天性感染と診断され、児に症状がある場合には、スルファジアジンとピリメタミンによる治療を1年間行います。

私たちは、2005年からトキソプラズマIgG、IgM陽性の妊婦にはIgG avidity検査を行い、スピラマイシン等の治療を行ってきました。これまで胎内感染は出生児7人に認められましたが、1人を除いて全員が健康に成長し発達しています。ご心配であれば、いつでも受診してください。検査により適切に診断し、必要な治療を行います。

 

次に、サイトメガロウイルスですが、日本では新生児300人に1人が先天性感染を起こし、1000人に1人が症候性感染児として出生しています。日本人妊婦の抗体保有率は約70%です。初感染では母体は無症状であることが多く、時に感冒様症状や発熱を伴います。CMV抗体陰性の妊婦では妊娠中に1〜2%が初感染を起こし、うち30~40%が胎児感染にいたります。CMV抗体陽性の妊婦では、妊娠中のCMV再感染や潜伏ウイルスの再活性化によって、0.5~1%の割合で胎児感染を起こします。胎児感染の数%が死産や早期新生児死亡に至ります。先天性CMV感染の20~30%が症候性、70~80%が無症候性感染児として出生します。症候性感染児の約90%に精神遅滞、運動障害、難聴などの後遺症が、無症候性感染児でも約10%に難聴などの後遺症が残ります。

 

妊婦の管理法と母子感染予防についてですが、妊婦にCMV IgGスクリーニングを行い、IgG陰性者には妊娠中の初感染を予防するための教育と啓発を行います。多くの妊婦はCMVについて、妊娠中の初感染によって胎児に影響が出ることについて認識が乏しいです。症状、感染経路、児への影響を説明した上で、CMVを含んでいる可能性のある小児の唾液や尿との接触をなるべく避けるよう、また十分な手指衛生を心がけるように教育し啓発します。IgG陰性の妊婦は、妊娠34~35週にCMV IgGを再検し、陽性化があれば初感染と診断されます。一方で、ターゲットスクリーニングとして、ハイリスクである超音波異常、切迫早産、早産、胎児発育不全(FGR)、発熱・感冒症状を認める妊婦では、CMV IgGとIgMを測定します。IgG陽性であれば新生児尿CMV核酸検査を保険適用で行ないます。新生児聴覚スクリーニングでリファー(要再検)となった場合、生後3週以内に産科施設で尿CMV核酸検査を行います。リファーになる新生児の5~6%が先天性CMV感染です。

先天性CMV感染が疑われる新生児に対して、尿CMV核酸検査および血液IgM、聴性脳幹反応、眼底、頭部画像などの検査を行います。生後3週以内の新生児尿核酸検査が陽性の時、先天性CMV感染と診断され、症候性感染児には、抗ウイルス薬治療を行います。
最近、当院の山田らは、症候性感染の出生児は抗ウイルス薬治療によって2割が軽度の後遺症で、また4割が正常に発達することを発表しました(J Infect Chemother 2020)。先天性感染児の早期の診断と治療開始によって、後遺症が減少することが期待されています。

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(4)不育症、抗リン脂質抗体症候群

当院では、専門家(不育症学会認定医)が不育症の診断や治療にあたり、新たに開発した検査法や治療法も取り入れています。
2回以上の流死産の既往がある場合を不育症と言います。異所性妊娠や絨毛性疾患(全胞状奇胎、部分胞状奇胎)は流産回数に含めません。すでに生児がいる場合でも、2回以上の流死産の既往があれば不育症に含めます。流死産は連続していなくてもよいです。流死産歴がたとえ1回であっても、次回妊娠における流死産や産科異常発症のリスクが高い場合、たとえば原因不明の妊娠10週以降の胎児死亡などは、不育症に準じて精査を行ってもよいです。また、生化学的妊娠(化学流産)を繰り返す女性も、今は不育症の定義には入りませんが、精査を行ってもよいです。

自然流産は、10~15%の頻度で起きます。 2回以上の流産既往は4.2%、3回以上の流産既往の頻度は0.88%と報告され、日本には不育症の患者数は少なくとも30~50万人いるとされます。山田らが最近の数年間に経験した不育症の原因やリスク因子を円グラフに示します。左側の青い部分は不育症のおよそ半数以上を占め、一般的には原因不明とされてしまいます。

 

まず、不育症の既往歴や生活習慣に関する問診を行い、表に示すような推奨検査や選択的検査を行います。

研究的検査にあるネオ・セルフ抗体とは、HLAクラスII分子が、ミスフォールド蛋白を抗原として提示して、自己抗体(ネオ・セルフ抗体)ができてしまう新しい免疫病が日本で発見されました(図)。このネオ・セルフ抗体のうち、抗β2GPI/HLA-DR抗体は抗リン脂質抗体の一種で、2019年からのAMED研究班(研究開発代表者 山田秀人)によって、不育症女性227人の23%がネオ・セルフ抗体陽性となり、これまで原因不明とされていた不育症の20%で陽性であることもわかり、低用量アスピリンやヘパリン治療によって健康な子供をもつことが可能になると期待されています(Tanimura K, et al. Arthritis Rhematol 2020)。しかも、ベン図にあるように、これまでの抗リン脂質抗体で調べるよりも、陽性者がより多くみつかるのが特徴です。

 

不育症の治療に関しては、表にあるように見つかった原因に対して適切な治療法を選択します。しかし、それでもおよそ半数以上は、これまでの検査法では原因不明となります。この場合、一般的にはテンダーラビングケアやカウンセリングを行います。

原因・リスク因子不明で難治症例に対する治療法としては、免疫グロブリン大量療法があります。山田らは4回以上の流産歴がある難治症例に対して、妊娠初期の免疫グロブリン大量療法(20g×5日間、計100g)を1993年から行なっています(Hum Reprod 1998;13:2620-2623; ISRN Obstet Gynecol.2012; doi: 10.5402/2012/512732)。2021年2月までに、4〜14回の流産歴がある不育症患者の71妊娠に免疫グロブリン大量療法を行い、52妊娠(73.2%)で子供をもつことができました。胎児染色体異常妊娠を除いた58妊娠での生児獲得率は90.0%(52/58)にものぼります。

 

日本において、妊娠初期の免疫グロブリン大量療法の有効性を調べる目的で、多施設研究のRCT「原因不明の不育症を対象としたGB-0998の二重盲検群間比較試験」が行われ、2014年から2020年まで症例が登録されました。妊娠4-6週に胎嚢が確認されてから、免疫グロブリン400mg/kgを5日間連続で静脈内投与しました。対象は、以下を満たす不育症患者です。①原発性習慣流産、②自然流産歴は4回以上あり、染色体正常流産の既往が1回以上ある、③リスク因子不明ないしリスク因子が見つかり、それに対する治療をしても染色体正常の流産をした経験がある、④年齢42歳未満、⑤夫婦染色体異常、抗リン脂質抗体症候群や偶発的抗リン脂質抗体陽性がない、⑥免疫グロブリン療法の経験がない、⑦血栓塞栓症の既往がない。2021年2月時点、本RCTの解析の結果、免疫グロブリン投与群ではプラセボ投与群に比較して、有意に生児獲得率が高いことが判明しました。現在、保険適用に向けて準備をしています。

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(5) 不妊症

お子さんが1年以上できない場合、不妊症と定義され、何らかの原因が隠れていることがあります。その原因は様々で、調べてみなければなかなかわかりません。当科では不妊症の外来を開いており、まず不妊の原因を検査し、患者夫妻の状態に応じた治療を行って妊娠を目指しています。不妊外来は毎日行っており、勤労で日中受診できない婦人のために夜間外来も開設しています。当院では、不妊に関わる子宮内膜症や子宮筋腫といった疾患の内視鏡手術を数多く行っており、また妊娠後も継続して妊婦検診を行い、分娩後も新生児集中治療室(NICU/GCU)を備えているため、ハイリスク妊娠にも対応しております。体外受精コーディネーターの資格を持った助産師も在籍しておりますので、不妊治療から分娩までサポートして、安心して治療に臨めるような体制を整えております。

Ⅰ 一般不妊

まず、最初の1周期で不妊原因の探索を行います。検査は子宮卵管造影、精液検査、ホルモン検査などを行い、治療方針を検討していきます。排卵障害があれば排卵誘発剤を使用して、超音波検査や尿検査で排卵をモニタリングしタイミングを指導してきます。精液に異常があれば人工授精(AIH)や顕微授精(ICSI)が必要になることもあり、無精子症の場合は精巣内精子採取(TESE)によるICSIが勧められます。卵管の閉塞や癒着、子宮筋腫や子宮内膜症などの不妊の原因となる疾患があるときは、腹腔鏡による手術で妊娠のための環境を整えます。当院では不妊症の腹腔鏡手術を数多く行っており、負担が少ない治療を行えるよう考えております。

Ⅱ 補助生殖医療(体外受精・顕微授精・凍結胚移植)
 

一般不妊治療でなかなか妊娠に至らないときや、卵管閉塞・乏精子症などの場合、補助生殖医療(ART)による治療が勧められます。卵巣から卵子を採取して、受精した胚を子宮内に戻す治療方法で、現代の不妊治療に欠かせないものになっています。当院では2002年よりARTによる治療を開始しており、2,000件以上の実績があります。卵子を採取する採卵は、医師が経腟超音波を用い、麻酔をかけて痛みを感じないようにしてから行います。採取した卵子は、専任の培養士が受精の操作を行い、受精した胚を子宮に移植します。胚移植は麻酔の必要がなく、短時間で終了します。排卵誘発により多くの胚が得られた場合は、急速凍結法(ガラス化法)により凍結して、妊娠のチャンスを広げます。胚の透明帯が厚く、卵の孵化が起こらないために妊娠しづらいと予想されたときは、レーザーを用いて透明帯を切開するアシステッド・ハッチングを行っております。個々の患者さんの状況に合わせて、適した治療法を選択していきます。
ARTの費用については、以下のように設定されておりますが、自治体より補助を受けることができ、当院も特定不妊治療費助成(http://www.city.sapporo.jp/eisei/funin/josei.html)の指定医療機関になっておりますので、お気軽にご相談ください。
当院では着床前診断を開始いたしました。特定の単一遺伝子を持つ子供が生まれる可能性がある場合、あるいは均衡型転座により流産を繰り返す場合に、体外受精により得られた胚(受精卵)の一部の細胞を採取し、胚は凍結しておきます。採取した細胞の遺伝子や染色体を検査し、異常の無かった胚を子宮に移植します。詳細は生殖医療ホームページをご参照ください。

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人工授精・治療費用
内容 金額 備考
人工授精 10,000円  1回につき
  
補助生殖医療・治療費用
内容 金額 備考
排卵誘発(投薬・注射・採血 等) 自費(保険点数準用)  
エコー検査 2,000円 1回につき
採卵料 70,000円 5回目以降 40,000円
胚(受精卵)培養 100,000円 5回目以降 50,000円
顕微受精料 20,000円  
新鮮胚移植 40,000円  
2段階胚移植 胚移植代+10,000円  
(採卵後の)初回凍結胚移植 80,000円 胚凍結代金含む
2回目以降 凍結胚移植

60,000円

 
精子凍結/凍結精子保管料(1年間) 10,000円 1年毎に更新
凍結胚保管料(1年間) 20,000円 1年毎に更新
孵化補助
(アシステッド・ハッチング)
10,000円  
精巣内精子採取(TESE)後の精子調整(凍結代含) 50,000円  

※1回あたりの費用はおよそ35万円前後(排卵誘発+採卵料+胚培養+胚移植)です。
※消費税別


ARTの治療内容は複雑でわかりにくいものなので、当院では資格を持った体外受精コーディネーターが、時間をかけて不妊治療や体外受精について説明し、患者夫妻の治療への不安を解消するようにしています。

体外受精コーディネーター外来(予約制)
外来日:金曜日(16:00~17:00)隔週
担 当:中村康子(助産師)、神谷知里(胚培養士)

 

Ⅲ 不妊外来

不妊外来はいつでも通院できるよう毎日行っており、働く患者さんが通院しやすいように、月・水・金曜日は夜間外来を開設しています。基本的に主治医制ですが、主治医が手術等で診療できない時は、外来の担当医が診察します。初診は紹介状無しでも診察いたしますので、お気軽に受診してください。

  午前 午後 夜間(17:30~18:30)再診のみ
和田、滝本 和田、滝本 輪番医
福士、都築 都築  
小野、島袋   輪番医
福士、太田 福士  
和田、中谷 松本 輪番医

※紹介状は不要です。

 

IV がん治療開始前の妊孕能温存の治療

当院では、乳がんや精巣腫瘍などの悪性腫瘍で、化学療法や放射線治療で卵巣や精巣の機能が低下する前に卵子や精子を採取し、凍結保存しています。癌の治療が終了してから不妊治療を行い、妊娠にチャレンジします。詳細は生殖医療のホームページをご覧ください。

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(6) ウィメンズヘルス

女性ホルモンは生理や妊娠にだけ関係あるものではなくヒトの健康や若さを保つために必要不可欠なものです。ホルモンの失調や消失(閉経)は様々な健康への害をもたらします。下の図のように女性ホルモンがなくなると更年期障害ばかりでなく全身的な健康への影響が急速に進みます。更年期は自分にとってどのような体への影響がでるのかをチェックする良いチャンスです。若い人の無月経、月経に伴う苦痛や月経前緊張症、更年期障害、閉経後の骨粗鬆症などはいずれもホルモンに関連する疾患ですが、適切な治療を受けられずに悩んでいる方も多いのが現状です。ピルや閉経後ホルモン療法は日本では過度に恐れられている印象があります。人によっては有害な事象が出るリスクもあることは事実ですが、適切な使い方をすれば大きなメリットも得られます。もちろんこれらの疾患に対する治療法はホルモン療法ばかりではありません。それぞれに他の良い薬や漢方療法などがあり、個人に合った治療法を選択することが可能です。当科にはホルモン療法やそれらの疾患のいろいろな治療法に精通した医師がおりますのでご相談ください。

閉経の影響は一生

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(7) リンパ浮腫

婦人科がんや乳がんの手術や放射線療法を受けた後の大きな悩みの1つはリンパ浮腫です。リンパ浮腫が起きると蜂窩織炎という炎症を繰り返してだんだんひどくなり手足が硬く腫れ上がるなど、ひどい変形を起こし日常生活が困難になることもあります。何よりも女性にとって手足が腫れて変形することは耐え難い苦痛です。そのような重大な合併症にもかかわらず現在正式に保険がきく病気としては認められておらず、治療に取り組む医療機関もほとんどなく自己判断で弾性ストッキングやスリーブを着用したり自己流マッサージをするしかないという状態でした。
先進諸国ではリンパ浮腫に対して複合的理学療法を行うことが標準となっています。複合的理学療法とは炎症を防ぐためのスキンケア、リンパ液を流すリンパドレナージ(マッサージ)、圧迫療法、運動療法の4本柱からなっています。どの柱が欠けても充分な効果をもたらしません。また症状の出方は個人差が非常に大きいのでその人に合ったプログラムを行う必要があります。当院のリンパ浮腫外来は2003年1月、北海道初のリンパ浮腫治療専門外来として開設され、現在では北海道内外から多くの患者さんが受診されています。 当科の特色として、外来を担当する医師自らがリンパ浮腫治療セラピストの資格を持ち治療にかかわっております。これは全国的にも例を見ません。そして同様に専門訓練を受けセラピストの資格をもった5名の看護師(2020年4月現在)および理学療法士とチームを組んで治療を行っています。初期治療として3週間程度の集中治療を行い、その後の維持療法としてのセルフマッサージやセルフバンテージ(圧迫包帯)の指導を行います。普段の弾性ストッキングやスリーブも形・サイズ・圧迫の強さ・織り方など様々な違いがあり個人にあったものを選択します。場合によってはオーダーメイドが必要な事もあります。医師・看護師・理学療法士がそれぞれの特性を活かし、他科とも連携をとりながら、総合病院の特質を活かして充実したリハビリ施設を利用した質の高い治療が提供できるように心がけています。私たちは所属するリンパ浮腫治療研究会、日本産科婦人科学会、日本脈管学会などの関連学会を通じ、リンパ浮腫の複合的理学療法の健康保険適用を求めて厚生労働省に働きかけを行っています。

リンパドレナージ
 リンパドレナージ
バンデージ
 バンデージ
圧迫運動療法
 圧迫運動療法
 

 

リンパ浮腫外来

セルフケア講習会
リンパ浮腫外来では、皆さんに正しく効果的なセルフケアを継続していただくため、定期的にセルフケア講習会を行っております。講習会では、「外来で習ったマッサージのしかたが自己流になってしまう」「マッサージを忘れてしまった」など、皆さんがお困りのことを気軽に相談できる場にしたいと思っています。

≪お問い合わせ先≫
手稲渓仁会病院リンパ浮腫外来
月・水・金 14:00~17:00 電話/011-681-8111  内線2206

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