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看護・介護部長

ケアを繋ぐ

9月に入りました。少しずつ過ごしやすい日が増えてくると良いのですが、まだまだ暑いですね。
4月に入職した新人看護師さんも、出来る事がずいぶんと増え、患者さんとの会話もスムーズにできるようになってきました。これから夜勤見学など、新たなチャレンジが待っています。

 さて、当院は回復期リハビリテーション病院という特徴から、入院患者様は、ほぼ急性期病院から転院されてくる患者様になります。
やっと入院生活に慣れた患者様・ご家族様にとって、知らない病院へ移る事はとても不安が大きいものだと思います。
少しでも転院前の不安が解消され、社会復帰に向けて新たなスタートが切れるよう、転院前の患者様・ご家族様と面談する、転院前訪問を始めました。
当院の看護師が現在入院している病院へ出向き、患者様やご家族、退院支援看護師と面談し、転院後の入院生活や、当院の退院支援など説明しています。
今まで、診療情報提供書や看護添書だけで、受け入れ準備をしていることがほとんどでしたが、実際にお会いすることで、私たちも安心して療養環境の準備ができます。
先日、転院されてきた患者様は認知症があり、経管栄養のチューブを引き抜く危険性のある方でした。身体拘束をせずに見守れるよう「認知症マフ」を使用している事を教えていただき、使い方の実際なども見せていただきました。転院後も継続して使用できるようにと、1つ頂く事ができ、転院当日から使用していますが、チューブを引き抜く事なく過ごされています。

「認知症マフ」とは、柔らかいニットや布でできた筒状の製品で、外側や内側にアップリケやボタンなどが付いています。
認知症の方が筒状の中に手を入れ、触れることで気持ちが落ち着き、チューブ類を触る事から気持ちが逸れるようです。
イギリスの高齢者施設が発祥とも言われています。

「認知症マフ」を初めて見た当院の看護師たち。翌週にはひとりの師長さんが作ってきてくれました。手を入れると、ふんわり暖かく気持ちが良いのです。
認知症の方の尊厳を守るケアが海を渡り、そして先駆けて取り入れていた病院の看護師さんから、当院へと繋がりました。
当院でも、この「認知症マフ」を作ってくれるボランティアの方を募ろうかと考えています~♪♪

2023年9月
看護・介護部長  樋渡 ひとみ

 

学会運営の準備がはじまりました

 暑い日々が続いていますが、二十四節気では8月8日から「立秋」に入ります。
秋の兆しが見え始める時期のようです。空が高くなり、いわし雲が見え始めるかもしれません。「暑い、暑い」と言いながらも、秋の空を眺めると、今年もあと4ヵ月・・。急に焦り出したりするものです。

 先週、院長と職員7名で八王子市で開催された「第46回全国デイケア研究大会」へ参加してきました。
来年度の大会長を当院の橋本院長が務めるにあたり、事務局メンバーと共に次年度のご挨拶やPR活動をしてきました。
今回のデイケア大会では来年の診療報酬改定を見据えた話題や地域包括システムの展開において「自助・公助・共助」の実際の取り組みや、「介護DX」と多岐に亘るテーマで学びの多い2日間となりました。
八王子市をあげた「おもてなし」が素晴らしく、懇親会でも伝統芸能の楽しむ事ができました。

 また、次年度の大会PRではお揃いの「熊出没注意」のTシャツを着てチラシとささやかではありますが、北海道名菓を会場の皆さんへお渡ししました。
とても喜んでくださり、「北海道に行きたいです!」「楽しみにしています!」と声をかけていただき、これから準備する上で励みにもなりました。
事務局メンバー手作りのPR動画がとても評判がよく、メンバーの皆さんの頑張りを知っているだけに、とても嬉しかったです。
実は、来年度はもう一つ、「回復期リハビリテーション病棟協会研究大会」開催を控えています。同じ年度に2つの学会を準備するのは初めてで、心配ではありますが、ありがたい事に、創意工夫とおもてなしの心を持った職員が多く、きっと、ワイワイとアイディアを出しながら、乗り越えていけると信じています。
 来年の夏は遠い北海道まで来てくださる皆さんに満足いただける大会となるよう、準備をすすめていきましょう。

 

 
2023年8月
看護・介護部長  樋渡 ひとみ

「提案する場」を大切に

 やっと夏らしい暑さが続くようになりました。大通り公園では「花フェスタ」が始まり、更に賑わっています。当院から近いミニ大通りも次々と季節の花が咲き、紫陽花が見頃になっています。

 5月~6月にかけて、各病棟のチームリーダーと看護介護部教育委員会の病棟代表者にに向けて話す機会を作りました。
チームリーダーの皆さんへは、固定チームナーシングにおけるチームリーダーの役割と病院の基本方針に基づき、看護介護部としてどんな活動をしていくか。それを踏まえ、病棟のBSC達成に向けてリーダーの皆さんに期待することを話しました。
教育研修室の皆さんには、渓仁会グループのキャリア支援体制における評価制度と研修のつながり。そして、当院の少し先を見据えて、看護師・介護職が更に強化すべき内容を教育・研修盛り込んで準備をしていく事と、OJTを展開する際に「教える」と言うことについても学習していく事を伝えました。
病棟ではリーダー層として活躍している皆さんも、今年度の自分の役割が病院基本方針や、「この先の未来への準備」に関わるとは、思っていなかったかもしれません。

なぜ、このような機会を作ったかというと、どうせ働くなら、傍観しているよりも運営に参加した方が絶対に面白いし、仕事は楽しくなるからです。
運営は管理者がするものと思っているスタッフが多いかもしれませんが、そんなことはなく、病棟の係活動だって、当院のサービスや職場環境改善につながっています。
選ばれた事に自信を持ち、与えられた役割は、自分の後ろにいる同僚の顔や、患者さんの顔を思い浮かべながら「提案する場」を大切にしてほしいと思います。

先日、院長、事務長と院内ラウンドをしました。
病棟のスタッフから、当院の仕組みで、患者さんやご家族に説明する際にわかりにくい部分や、患者さんの療養環境の改善につながる意見をいただきました。
どれも「なるほど!」と思う事ばかりです。早速、仕組みを作った当初の意図、期待していた結果が現れているかなど、評価していくことになりました。
現場にある、たくさんの智恵と経験を「誰かのために」「~のために」使えるとよいですね。

covid-19 が5類となり、私たちの生活も元の状況に戻ってきました。この夏は楽しい企画を計画している方も多いと思います。医療職としての意識は忘れず、体調管理はしっかりして、北海道の短い夏を楽しみましょう。

 

2023年7月
看護・介護部長  樋渡 ひとみ

「ごきげん」でいること。

 気がつけば5月も下旬になりました。病棟をラウンドしていると、先輩の後ろに、子鴨のようにくっついて歩く新入職員や臨地実習に来ている学生さんの姿をあちこちで見受けられます。
先輩の表情からはキリリと「頼もしい」オーラが現れていて素敵です♪

 ゴールデンウィークが終わるとメディアでは、「5月病」について取り上げられる事が多くなります。「5月病」とは、新入職員や人事異動など環境変化のあった方が、新しい環境への適応がうまくいかず、なんとなく体調が悪い、やる気が出ないなど心身に不調があらわれる状況を言われています。医学的には「適応障害」や「抑うつ状態」に関連すると言われています。対策は様々ですが「ストレスをためないことが大切」「気分転換をしましょう」「良質な睡眠を取るよう心がけましょう」などと書かれています。まじめな人が多い医療職は「○○せねばならない」「○○すべき」・・なのに、「私はできていない」というギャップに落ち込む人が多いかもしれません。
でも、初日の自分に比べたらものすごく出来る事が増えているに違いありません。反省しすぎずに、できる事に意識を向けていけると良いと思います。

 今月の看護主任会議では「経験学習とリフレクション」についてミニ学習会を開きました。「人に教えるコツ」や指導者となった際に、指導場面を振り返る機会を意図的に作る目的で、振り返りシートの作成にも取り組むことになりました。
問題解決思考型が多い医療職は「出来ないこと」に目が向きがちです。リフレクションを通して、反省だけではなく出来ていることや、失敗からの学びを次に活かす経験を通して、成長していけるとよいと思っています。

 そして、自分で自分を「ごきげん」にする方法を知っておく事も大事です。
特に病棟マネージャーの皆さんは、朝のスタッフステーションでは「ごきげん」でいることを心がけて欲しいと思っています。スタッフが安心してスタート切るためには大切なことです。
ちなみに、私が「ごきげん」でいる方法は韓国ドラマと娘の推し活への便乗です。美味しいごはんを食べ、娘とキャッキャと笑い眠りにつくせいか、体はふくふくと大きくなるばかりですが、気持ちのアンチエイジング効果はあるような気がします。
みなさんの考えるだけで「ワクワク」する自分の「ごきげん処方」についても知りたいので、教えてくださいね。
6月も健やかにすごしましょう♪

2023年5月
看護・介護部長  樋渡 ひとみ

お花が咲きます

 はじめまして。前任の森河部長に代わり、今年度から看護・介護部長を担うことになりました樋渡(ひわたし)と申します。どうぞよろしくお願いします。

 今年、看護・介護部では新人看護師9名を含む13名の新しい仲間を迎え入れることが出来ました。
教育を担当する職員を中心として、新入生オリエンテーションの準備を行い、5日間の研修が終了しました。現在、配属部署でOJTが進行中です。

看護・介護部の新人研修は「ルーキーサポートプログラム」として1年間で19本の研修を行う予定です。

 話は変わるようですが、私には高2になる娘がいます。
彼女と初めて外出したのは、生後25日目のこと。早朝、マンション向かいの公園に出かけようと信号待ちをしていた時のことです。

ふらりと私の横に男性のご老人が近づいて来ました。変わった身なりをされていたので、私は一瞬、身構えて距離を置こうとしましたが、そのご老人は娘を覗き込むようにして言いました「お嬢さんですね。大切に、大切に育ててくださいね」

私は「はい。大切に、大切に育てていきます」と返答しました。
なんとも不思議な時間で、今でも、あのご老人は天使だったのだろうと信じています。

 写真は通勤の道すがら、目に入った看板です。
まだ雪も残る中、土の中で芽吹く花を守るために歩行者にお知らせなのでしょう。
新入職員の辞令交付の朝、職員の頭の上にこの看板が掲げられているように見えました。

ようこそ、札幌渓仁会リハビリテーション病院へ。
職員一同、大切に、大切に育てていきます。

 

2023年4月
看護・介護部長  樋渡 ひとみ

人は宝

 今年の春は急ぎ足でやって来た。
冬の氷道に蒔かれていた砂の回収と清掃が始まり、そこかしこが埃っぽく感じる。

さて、私はこの3月で看護介護部長を退任する。
これまで、多くの方々の励ましとご支援、ご理解の元で病院づくりに携わることができた。振りかえると、自分の未熟さに恥ずかしさを感じることも少なくないが、大きな機会をいただけたことに感謝は絶えない。

 ドラッカーは「あらゆる組織が、『人が宝』と言う。ところが、それを行動で示している組織はほとんどない。本気でそう考えている組織はさらにない」と、「プロフェッショナルの条件」という本で述べている。
皆さんはどうだろうか。
自分は職場において「宝」のように大事にされていると感じているだろうか。
『人が宝』を実現している企業や組織の雰囲気は、働く人々は笑顔で穏やかな雰囲気があり、忙しそうだが活気がある、そんなイメージをもつ。
多様な価値観をもつ人々の中でも、なすべき目標や望ましい行動指針が浸透し共有され、そして、互いにリスペクトしている態度や発言。愛おしい子を育むように見守り、関わり、励まし、賞賛する。
そんな職場は誰でも望むところである。
組織が行動でそれを示し続けること、去るときになってもそんな事が頭から離れない。

 渓リハ病院は、進歩、深化、進化を続けながら、多くの利用者の方々へ幸せのリハケア医療サービースを提供し、選ばれる病院になり続けることをこれからも願っている。

 

2023年3月27日
看護・介護部長  森河 琴美

他者の合理的な理由

 例年よりも寒暖の差が激しく、降雪にも波があった冬が過ぎ、3月は生温かな朝でスタートした。ここ数日で雪解けが一気に進む様子から、今年の春が早く訪れることへ期待が膨らむ。
先日、岡山で開催された回復期リハ病棟協会研究大会には、当院から多くのスタッフが現地参加した。地元のお土産と共に久しぶりに活気ある報告を受け、こちらも元気をもらった。現地参加による+アルファーの効果を実感する。

 さて、年度末は何かと話し合いの機会が多くある。
スッキリと短時間で終えることもあれば、時間をかけても一歩も進まないことも少なくない。また、発言者が固定し硬直してしまうことも経験する。
中原淳さんの「話し合いの作法」には、その理由が的を射る言葉で語られている。

そもそも『日本人は話し合いが苦手』『話し合いは対話と決断』『対話と決断には作法がある』など、話し合いの作法を理解する必要性には納得する。
中でも、合理的な理由は自分にだけあるのではなく他者にもあり、そこを越えて相手をリスペクトしていく過程が対話であると。
多職種カンファレンスの進め方に悩んでいるリーダーも参加者も、社会人にとって必要な基礎力として、この作法を学ぶ必要があると感じた。そして、その作法が身につくまでに実践での修行の大切さも感じた。

 先ほどの学会の参加者が「多職種チームアプローチ」や「チームづくり」に関する演題が相変わらず絶えないと話していた。
不確実な世の中を進むためには、強いリーダーシップではなく、しなやかな対話力を持つ器用さが求められているようだ。

間もなく対面面会が再開される。
気を張る日々はしばらく続くが、+アルファーの効果を信じ進めていきたい。

 

2023年3月1日
看護・介護部長  森河 琴美

変化をおもしろがる

 今年の冬は寒い!連続10日以上真冬日が続いている。
北国に住む私たちも、頬を刺す寒さはさすがに堪え、転ばないように全身に力を入れながら歩いている。
春の便りが待ち遠しい。

 当院は、4月の新入職員を迎え入れるために、新年度の病棟再編成を3月に行う。
全病棟が回復期リハ病棟のため、病棟異動と言っても新鮮みには欠けるが、異動するスタッフにとっては大きな出来事である。
私はこれまで、同じ医療法人の中で10数カ所の異動を経験した。
診療の領域や期待される役割も異なる中、いつも「自分にやれるだろうか」と自問自答しながら、「何とかなるだろう」と越えてきた。
その中で、支えになったのは周りの人々である。
同職種も多職種も、新参者には「困っていないだろうか」と手を差しのべ気を使ってくれる。
新参者の流儀も重要で、自分をオープンにすると周りも手を差しのべやすい。そうして、互いに受け入れ合い、成長の痛みを乗り越える。

 異動は、アンラーニングのチャンスと実感する。
勝原裕美子さんは「学びほぐし」という言葉で、ものごとを多角的にみる視点や新たな価値に触れ、新たな自分の価値をつくっていくと話されていた。
林真理子さんも「成熟スイッチ」の本の中で、”変化をおもしろがること”に触れている。
新しい価値の中(集団)に入ることは勇気がいることだが、成長という成果を得ることができる。変化の敷居を自分で下げていくことも大切である。

 新型コロナウイルス感染症が5月8日より5類感染症に変更される。
この変化をどう受け入れ準備していくか、こちらはおもしろがるというより真剣に向き合い備えていきたい。

 

2023年2月1日
看護・介護部長  森河 琴美

 

過去からの使者

 令和5年の新年が明けた。
3年ぶりの行動制限のない年末年始。
帰省や旅行に出向く人、初詣や駅伝を沿道で応援する人、一足早く開催された成人式に出席する人々など、晴れやかな笑顔を見ていると気持ちが和んだ。

 さて、新年に入り、「積ん読」していた本の中から、喜多川泰 著「運転者」を読んだ。
「報われない努力なんてない」というフレーズに心惹かれ購入したが、タイミング悪く読めずにいた。

『何で自分ばっかりこんな目に合うのか?』と自暴自棄になっている主人公に、謎のタクシーの運転手が関わっていくストーリーである。
◇好機(チャンス)は機嫌がいい人にめぐって来る
◇運はいいとか悪いではなく、貯めて使うもの
◇どんなことが起こっても、人生においては必要な大切な経験で、長い目でみると報われない努力はない
小説には過去からの使者のメッセージが、運転者の言葉を通じて苦難を乗り越えるヒントとなり語られている。
日々の生活や仕事の中で、新たな問題や難題が発生することは珍しいことではない。それがドンドン詰まってきて、身動きが取れない苦しさを感じることもある。
そんな時、他者からの言葉は大きなヒントになる。一歩立ち止まり自分を俯瞰(ふかん)してみることが、心持ちを整え、新たな一歩への後押しとなる。
他者だけではなく、過去の自分の足蹠や記した物もヒントになり自信を取り戻すことも少なくない。

今年はどんな年になるだろう。
過去の経験を足がかりに、少しでも笑顔でいる時が多い1年であることを願っている。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

年頭に際して
看護・介護部長 森河琴美

再びビジョン練る

『師走』は12月を指す和風月名であり、1年12か月の中で、日常的に馴染み深く使用されていると感じる。

それだけ、日本人にとっての12月(師走)は特別な月という認識なのか。
新しい年を晴れやかにスタートするために、1年間に蓄積された善きことも悪ことも清算する月であり、感謝、あいさつ回り、掃除。
師走は忙しい月でもある。
当院では、ここ数か月は新型コロナウイルス感染症の対応に尽力している。
なかなか「精算」ができないしつこい感染症のため、私たちはひとりひとり乗り越える力をつけながら、仲間で協力しあい耐える日々が続いている。

 さて、当院は開院し今年6年目である。
幹部職員は、開院時に作ったビジョンを評価しながら次の中長期ビジョンをつくる協議を重ねている。
私達の強みや売りは何か、求められている役割は何か。次の5年後・10年後はどうなっていたいのか。
先が見通せない情勢と苦しい現状の中で、心躍るような目指すべき旗を立てたいものである。

先日、看護管理者の研修生が、「病院づくりで看護部長がもっとも大事にしていることは何か」との質問に、「ワクワクするビジョンです」と答えた。
ケア職スタッフが、人の心に響き、人の身体を癒し、人に自信を与えられるようなケアが実践できるようになることを、いつも願っている。
ワクワクは全ての原動力になると信じ、今月も一生懸命走り抜けたい。

皆さま、今年も大変お世話になりました。

 

2022年12月1日
看護・介護部長  森河 琴美

Must Can Will

 北大の美しいイチョウも葉を落とし始め、晩秋は駆け足で過ぎようとし、市街地にも初雪が降る模様である。                                                                                                              院内のコロナウイルス感染の拡がりはようやく終息の兆しが見えてきたが、市中感染の拡大は大いに気がかりな状況である。                     ワクチンと治療薬とこれまでの沢山の経験から得たノウハウともって次に備えていきたい。

 さて、先日スタッフが「働くこと」について次のような話しをしていた。
「若いスタッフが、『仕事で貯まったストレスを解消するために休む』と言っていたが違うように思う」「確かに仕事にはストレスになる要素は多くあるが、そのストレスを含め、仕事を楽しまないのはもったいない」「自分が好きな仕事を選んでしているのであれば、仕事も休日も同じように楽しまないと人生がもったいない気がする」と。                                    なるほど。                                 仕事も休日も同じように楽しんで行えば、人生は本当に豊になる。その仕事も、誰に決められたわけではなく自分で選んで就いているのであれば、尚のことである。

年度の折り返しで、次年度に転職を考えているスタッフと面談することも増えている。                                   「したいこと」が見つかり、希望を持って向かおうとする姿には背中を押しエールを送りたい。一方で、「やるべきこと」も十分に行えず「できること」を増やす努力も見えず「したいこと」を語る者も少なからずいる。               現実は、「やりたいこと」だけ行えるものではない。              やりたいと思えないような「やるべきこと」を求められるのが仕事である。    その中で、Must(やるべきこと)を粛々と遂行し、Can(できること)を増やしていくと、Will(やりたいこと)の機会(Chance)が自然にやってくると言われる。

現実からの逃避ではなく、機会を引き寄せたいものである。
もちろん、楽しんで。

 

2022年11月1日
看護・介護部長  森河 琴美

コロナウイルスの対応

 10月が始まった。
紅葉はゆっくりと始まっているが、暖かでお天気続きのため、長く移り行く秋の彩りを楽しめるようだ。

 さて、先頃、「リハビリテーション・ケア合同研究大会@苫小牧2022」が開催され、当院からも数名のスタッフが発表・参加した。
対面による研究大会への参加は、ほぼ3年ぶりである。
現地で発表する者、オンラインで参加する者など、いわゆるハイブリッド開催ではあったが、久しぶりに会う方々の熱量を肌で感じ、意見交換を行う姿に、対面で学び合う意義を深く感じた。
分かれている会場の誘導と案内のために、暑い中、道路に立つスタッフの方々。
コロナ禍の中、大変なご苦労を重ねて準備された主催者の方に、心からの敬意と労いの気持ちを抱いた大会でもあった。

 当院では、7月末から続くコロナウイルス感染が収束に至らず、多くの方々にご迷惑をおかけしている。
と同時に、この厳しい状況に真摯に向き合い対応し乗り越えようとするスタッフに助けられている。
互いに労いながら、共にこの難局を乗り越えていきたい。

 

2022年10月1日
看護・介護部長  森河 琴美

食の記憶

 空は高く、トンボも飛び始め、日の出や日の入り時間の変化がゆっくり秋に近づいていることを知らせてくれている。夏は駆け足で過ぎ去ってしまった。
行動制限が緩和された今年は、’3年ぶりの〇〇’を久しぶりに経験されたのではないだろうか。
札幌大通り公園のビアガーデン、河川敷の花火大会、夏のキャンプ、帰省・・・
思う存分とまではいかないにしても、ひと時、大事な時間を過ごせたのではないだろうか。

 話は飛ぶが、私の実家のお盆と言えば、ジンパ(ジンギスカン・パーティー)である。故人の好きだったジンギスカンを家族らで囲み、思い出しながら偲ぶのである。残念ながら職場の会食制限のため、今年も開催することはできなかったが、私にとってはお盆=ジンギスカンである。
当院のホームページブログに、七夕(北海道の七夕は8月7日)の行事食とデザートの‘赤肉メロン’の記事が掲載されている。う~ん、北海道っぽい!
「食の記憶がもつ特性」について加藤健二氏は(第11回日本認知心理学会論文より)、『おいしかった食を想起している時、「なつかしさ」感情がもつポジティブな心理機能が得られている可能性がある』。更に『おいしかった食の記憶は、さまざまな側面(共食、景色など)の複合的で総合的なものである』と述べている。食の記憶は、単に美味しかったという記憶に留まらず、誰とどこで楽しい時を過ごしたかのポジティブな気持ちも一緒に記憶されるようだ。
入院患者さんにとって病院の食事はどのような記憶として残るのだろう。
当院の食事はおいしいと評判であるが、味だけではなくそこにまつわる様々な記憶ができるだけポジティブなものであるよう、環境を含めて一食一食を大切に提供するという責任を感じた。

 9月からさっぽろオータムフェスト(食の祭典)が3年ぶりに開催される。
美味しさを味わうと共に、苦境の中で頑張っている生産者の方の思いを受け止めながら秋の北海道を楽しみたい。

 

2022年9月1日
看護・介護部長  森河 琴美

想像力をもって声を聴く

 コロナ禍になって3度目の夏は、連日「過去最高」の新規感染者数を更新している。
当院も、休まざるを得ない職員が増えはじめ、医療サービスの機能を辛うじて維持している苦しい状況である。短い夏を楽しみたいところではあるが、間もなく始まる医療者へのワクチン接種に期待しつつ、油断なく感染対策を継続しピークを乗り越えていきたい。

 さて、最近の物価高、「この後、どうなるんだろう」と不安な気持ちになる。電気代や食料品やガソリン代、生活をする上で欠かせないものが値上がりし、旬の野菜でさえも天候の影響でちゅうちょするような値上がりを見せている。
更に、高齢者に対する10月からの医療費の自己負担額の増加(所得に応じ)。年金暮らしで病院通院している方々は、これまでと同じように病院に通うことができるのか心配するところである。

立花隆さんは『「知」のソフトウエア』の本の中で、情報のインプットについてこう書いている。相手の本意を聞く(正しい情報を得る)ためには、1つには準備、2つ目には想像力が大事だと。相手はどのような人で、どのような意見や考えを持っている方かを調べ、聴く内容を周到に準備する。そして、頭の中で絵を描くように事実をつないでいく想像力が大事であると。得られた情報が間違うと、アウトプットも本筋とかけ離れたものになり、必要な手立てにならない。

生活に困窮している人々の声は、私たちの生活を支える公共サービスや政治を司る方々に正しく届いているだろうか。その声は正しく反映されているだろうか。
どうか想像力をもって小さな声を聴いてほしいと願う。
マスク生活の中では、発する声の表情さえも読み取りにくくなっている。相手の置かれている状況に心を寄せて、声を聴き、私たちの成すべき事に反映していきたい。

 

2022年8月1日
看護・介護部長  森河 琴美

アクティビティ・ケアの効果

 気温が40℃を越える、あるいは10年に1度の大雨は、かつては”異常気象”と言っていたが、最近は異常なことではなく日常化している。温暖化は、今までの便利過ぎる生活様式の見直しや、災害への備えを怠らぬよう警告を発し続けているようにも感じる。
開放的で楽しみが盛り沢山の夏だが、油断することなく備えていきたい。

 さて、多くの回復期リハビリテーション病院では、様々な「アクティビティ・ケア」を取り入れている。体操やゲーム、レクレーションとよばれるさまざまな活動プログラムに楽しみながら参加し、他者と関わることで、生活全体が活性化すると言われている。
また、生活リズムの改善につながり、退院後の生活機能を再建するきっかけになるという報告もある。

当院でも、『まるべりぃ体操』や季節感を凝らした創作レクレーションなど、多職種の担当者が話し合いながら、企画し、計画的に実施している。
コロナ禍で一時は中止していた活動も、対策を取りながら少しずつ再開できていることは嬉しいことだ。
看護介護部では、一昨年より『まっする体操』を開始した。
これは、介護予防指導士の研修を終えた介護福祉士が中心になり、体操の内容を検討し、リズミカルな音楽に合わせて行う体操である。
昼食後の休息を終えた頃、参加者はラウンジに集合し15分程度の体操を行う。数名の時もあれば、10余名を越す時もある。
セラピストが行う運動や反復練習は患者個別で行うが、『まっする体操』は他の患者とも関わりながら一緒にみんなで行うことに醍醐味がある。声を出し(マスク下ではあるが)、皆を盛り上げているインストラクター(介護福祉士)と、参加する患者との一体感と達成感は、見ていて微笑ましい。
体制が整わず毎日の開催には至ってはいないが、脳の障害に対する可逆性をもたらす大事な活動と信じこれからも行っていきたい。

 リハビリテーション・ケア合同研究大会[苫小牧2022]が、北海道の苫小牧市で開催される。行動制限が幾分緩和され、現地参加が叶うことが嬉しいこの頃である。

 

2022年7月1日
看護・介護部長  森河 琴美

自分をマネジメントする

 札幌にも初夏がやってきた。山の緑は一層深まりエゾセミが鳴き始めている。
この清々しく爽やかな景色は、日々のうつうつとした気持ちを晴らしてくれているようだ。

 今年度になり、私の身近では、定年をむかえる方や役割の任期を終え職場を変わられる方が少なくない。共に頑張ってきた方が一線を離れてしまう淋しさを感じつつ、次のステージへの準備は、遠くない将来自分にもやってくることで他人事とは思えない。
日本看護協会は、ナースが健康で生涯現役で活躍するために「プラチナナース活躍促進サポートブック」を作成し、安全に働き続けられる環境の整備を管理者へ働きかけている。
その中に、「働き方や生活設計」を考えることを促した内容がある。
まずは、当事者自身が自分をマネジメントすることが大事であるということである。

 ドラッカーは「自らをマネジメントする」として、『あなた自身の強み、仕事のやり方、価値ありとするものを知ること』『何かをすると決めたならば、期待と結果を照合するフィードバック分析を行い、自らを成長させなければならない』と述べている。組織や社会に対しどのような役割を果たしていくのか、その責任を負うということである。
こうしている間も、医療やケアに関する知識や技術は新しく生まれ、かつて常識とされていたことも刷新されていく。まずは、周りに対する興味・関心を錆びつかせず、ブラッシュアップしていく自分を楽しみたいと感じた。

 間もなく、看護学生さんの基礎教育臨地実習が始まる。
スポンジのように経験を吸収し成長していく学生さんからエネルギーをもらいながら、共に学び成長する喜びを感じたいものである。

 

2022年6月1日
看護・介護部長  森河 琴美

伝える・伝わる

 札幌にも春が駆け足でやってきた。
本州の桜は、1週間の時間をかけて開花から満開になるらしいが、北海道では3日程度で一気に咲ききる。山の残雪も雨と風の勢いで消え始め、いよいよ胸躍る芽吹きの季節が始まる。

 新年度になり、どの部門にも新しいスタッフが入職し、院内に新しい風を吹き入れてくれている。この機会は、今までの思考や行いを見直す絶好のチャンスでもある。新入職員研修や、看護管理者の目標面談など「伝える」機会が多いこの時期、意図して「伝えていること」は、相手に「伝わっている」のかという点を省察した。

かねてより、相互関係を深めるコミュニケーションの大切さや難しさについて、コラムの中でも書いてきた。「そんなつもりはなかった」「わかってくれたと思った」というのは、発する側の都合のよい思い込みであり、伝え方の姿勢や言い方は素直に省みなくてはならない。
伝えることが準備できる場合は、前回の時との周辺環境の違いや反省点を踏まえ内容を更に吟味しなくてはならない。
プレゼンが始まった後は、相手の反応に合わせて、自分の知識と経験の引き出しを総動員しながら場を作りあげていく。
最後に、「伝わったでしょうか?」と確認し、ストライクの返答や反応が合った時は、ホッとし報われるような安堵感を憶えるのである。伝えたいことが伝わることの充実感は、マズローの自己実現の欲求が満たされたようで心底嬉しいと感じる。

私を含め伝える機会が多い立場の者にとって、プレゼンテーションに関わるマルチスキルは重要である。「伝わる」という結果と共に、相手の気持ちを動かし行動の動機となる魅力あるプレゼンテーションとなるよう、「伝え方」にもこだわり磨くことがプロとして求められている。

 痛ましい事故や事件、侵略行為によって傷つけられている人々の、平和と健康を心から願って止まない。

 

2022年5月1日
看護・介護部長  森河 琴美

希望の春

 「桜満開」の羨ましい全国ニュースを他所に、札幌にも「積雪ゼロ」間近の4月がようやくやってきた。
いつもなら、光の温かさや芽吹きの兆し、そして、新入職員のフレッシュさにワクワクとした希望の春を実感する。が、今年は、重苦しい空気が漂う。
COVID-19感染症による日々の生活の閉塞感や業務への影響。
そして、ニュースで報道されるウクライナの惨状。画面に映し出されるウクライナの人々の絶望に胸が痛む。

 希望を持てず明日がみえない時は、じっと日々をやり過ごす。
誰もあなたを侵すことも、無理に変えることもできない、ささくれた怒りの感情もコントロールできる。
そうして、少し落ち着いたら、自分の意見に固執せず、他人の意見を受け入れてみよう。
差し出された手を握り返してみよう。
他人を受け入れるキャパシティを、あなたは十分に持ち合わせている。
変化を恐れることはない。
そうすると、何か希望となる兆しが見えてくる。
そう、あなたはひとりではなく、チームのひとりだから。

この4月から新しい院長の元、第2章が始まる。
人々にとってかけがえのない病院であり続けるよう、努力の日々は続く。

 

2022年4月1日
看護・介護部長  森河 琴美

書くということ

 今年の3月は、例年とは景色が違う。
立春を過ぎてからの「観測史上最多の積雪量」には多くの方が苦しめられ、その残骸が遠慮もなく大山となって鎮座している。
一方で相変わらず猛威を振るうCovid-19、ロシアのウクライナ侵攻、胸が苦しくなるようなことが絶えない春である。 

 年度末になり、スタッフが様々なケア実践をまとめたものを目にする機会が多い。そこに至るまでのスタッフの道のりは決して容易いものではない。
イメージを形にする苦労、イメージを言葉に表すことの苦労、文章にする苦労、他人に理解してもらうよう表現する苦労、型にまとめる苦労・・・苦労は絶えないのである。
しかし、だからこそ、そこには自分の本当が表現されるのだと思う。 

柳田邦男さんは「書くということは、内面にあったものを、目に見える文章という形に容観化することである。(中略)それは自分の内面の確認作業になり、自己の再認識になる。そのような自己の再認識が、生きる方向性をつかむことにつながり、生き直す力を生む出すエネルギーになる」と、述べている。 

 言葉として表現(何を体験したのか、どう感じたのか、そこから何に気づいたのか)した経験は、自分を一歩前に推し進めてくれる自信につながる。
間もなく新年度。
1か月後には、また、新しい自分に会えるような心持ちである。

 

2022年3月1日
看護・介護部長  森河 琴美

安全を守り病院機能を維持する

 今年は例年にない大雪で、札幌の積雪量は1.5倍。
路肩には身長を優に越える高さの雪山がこんもりと積まれています。
間もなく節分、季節の変わり目と同時に天候が変わる潮目となることを願ってやみません。

 さて、新型コロナウイルス感染症は、全国で感染拡大の猛威をふるっています。
当院でもひとり、しばらく経ってまたひとりと陽性者が出て、収束が見えない状態が続いています。出揃い始めている専門的な知見と行政の指針、そしてこれまでの経験を元に最善を尽くす日々です。

石垣靖子先生が、令和3年度北海道看護研究学会のシンポジウムで語られた言葉を胸に、安全をまもり病院機能が維持できるよう、明日への一歩につなげていきたいと思います。
 『医療に携わる専門職は、その職種を問わず一人ひとりがサイエンス(科学性)とアート(人間性)を高めていくことが使命であり、このことに上限はない』

 

2022年2月1日
看護・介護部長  森河 琴美

看護師さん

 新しい年を迎えました。
陰陽五行説から見た2022年の干支「壬寅」は、「春の胎動が大きく花開くためには、地道な自分磨きを行い、実力を養う必要がある」ことを意味するそうです。
皆さんは、“自分磨き”していますか?
普段は意識していないことも、花開く糧となるように、少し意識して行う必要がありそうです。

確かに、年が明けると、「今年はどんな研修を組もうか」と、教育に関わることやスタッフの成長につながる目標を考えることが多くなります。先日開催された渓仁会グループの「特定行為研修」説明会にも多くのスタッフが参加し、自分で歩んで行こうとする逞しく真面目な看護師に感嘆の思いでした。

 看護師には、一般スタッフ用、リソースナース用、看護管理者用など、実践領域に分かれたキャリアラダーが整備されています。自分が目ざす実践力の目標を描くために、上手く活用している者もいれば、全く自分には関係のないものと自己評価さえしていない者もいます。
活用し難い課題もあるでしょうが、自分の成長の道しるべとなるものであるため、毛嫌いせずに活用してもらいたいものです。

 私は、小林麻央さんが生前のブログに掲載した「看護師さん」を、こんな看護師でありたいとひとつの道しるべとしています。
ご紹介すると共に、みな様にとって良い一年であることを願って年頭のコラムといたします。

看護師さん (2016.10.8)
 昨日は、病院でした。
 通院していると、突然 入院棟の看護師さん達には会えません。
 入院中は、ある意味、一番「底」の状態の身体でお世話になるので、
 それを受け止めてくださる看護師さんたちの器は計り知れないです。
 入院はしたくないけれど、もう会えないのも寂しいものですね
 人と人って、どのくらい長く一緒にいるか、や、どのくらい深い付き合いか
 だけでは語れないから面白いです!
 ほんの数日間の付き合い、ほんの5分の会話で、私の人生を前向きに変えて
 くれた人もいました。
 一生忘れられない看護師さん

 

2022年1月4日
看護・介護部長  森河 琴美

学生さんの就職活動

 札幌は、半月遅れの初雪が降り、近郊のスキー場もようやくオープンし始めた。
一方、社会生活活動の再開に水を差すように新型コロナウイルスの新たな変異種出現のニュースが出始め、予断を許せない日々である。

 先日、看護大学が主催する就職説明会に参加した。スーツに身を包み緊張の面持ちの3年生が、参加病院のブースを訪れ病院概要等の説明を受ける。ほとんどの学生は、自分がしたい看護や領域を思い描けずにいる様子が伺えた。病院の雰囲気をつかむインターンシップや見学会が中止になっているため、説明会(オンライン含む)が大事であるとも話していた。
看護学生用の企業サイトでは、コロナ禍の就活に向け“就活ノート”の作成を勧めていた。「自分がなぜ看護師を目指しているのか」「実習の中で感じたことや印象に残っていること」を書き出し、就職にあたって大事にしたいことを整理するのだそうだ。

 インターネット普及前の1997年、企業の仕事が不透明であることや、新入職員の離職を背景に、「経済構造の変更と創造のための行動計画」が閣議決定され、文科省・経産省・厚労省の共同で「インターンシップ推進にあたっての基本的な考え」が取りまとめられ、インターンシップが浸透したらしい。今では、学生の「仕事体験」という目的から「就職活動のひとつ」と認識され、インターンシップに参加すると就職に有利であるという誤った認識や、企業が優秀な学生を囲い込むなどの問題も生じているそうだ。
   看護の領域でも、大学化の広がりで就職先の選択自由があたり前となったことや、2010年度の新人看護職員教育プログラム整備の義務化によって、就職先の見える化が進んだように思う。主体的に職場を選ぶ自由と自己責任、学生さんも必死である。

長い看護師のキャリアには転職は必ずある。その時々に、看護の奥深さや楽しさややりがいを感じられるような患者や職場との出会いがありムダな経験は何ひとつない。
とは言え、当院が実践している看護が学生さんの目ざす看護とマッチングするか検討できるよう、丁寧に発信し伝えていきたいと感じた。

1年の締めくくりが穏やかな日々であることを願って。

2021年12月1日
看護・介護部長  森河 琴美

社会活動の自由

 いつになく暖かい晩秋である。先月中旬は、山や峠に雪の便りが訪れ、急いでタイヤ交換を済ませた方も多かったのだが、ここに来て足踏みをしている。しばらく里の紅葉が楽しめそうである。

 さて、新型コロナウイルス感染症の新規発生者数が低下し、社会活動の制限に緩和の兆しが見られている。外での会食や旅行等の移動、イベントへの参加など基本的な感染対策を講じつつの拡大である。
一定の条件などの制限はあるが、緩和措置は嬉しいものである。
対面で友人に会う喜び、音楽や観劇を楽しめる日を心から嬉しいと感じ、肩に張り付いていたコリがほぐれるような気持ちである。

 退院した患者の手記に、「社会活動への参加」について書かれていたものがあった。『いよいよ、ひとりの外出。病院へ乗り物2つ乗換え。できるだけ階段に遭遇しないよう念入りに準備。天気は晴れ予想。パニックになったらタクシーに乗ればいい。「助けて下さい」も遠慮なく言えるだろう・・・? うまい蕎麦は次の楽しみとしよう』
退院後3ヶ月が経過した後、ひとりで外来に行く心境が手に取るようにわかる。ワクワク感、心配、できるだけの準備とパニックになることへの不安。助けを求める勇気。
退院した方々は、いろいろな回復の段階を経て社会活動に参加する。そして、自律観や健康観を取り戻し、心の自由と身体の自由、社会的な自由を手にしていく。
”したいこと”があること。”したいこと”をやってみようと思えること。”したいこと”が出来るようになること。この、ひとつひとつの段階を寄り添いながらサポートしていきたい。

 第6波の兆しに怯えながらではあるが、ひととき心の自由を満喫したい。

 

2021年11月1日
看護・介護部長  森河 琴美

学ぶ機会の多様化

 紅葉は一気に!と、いうより“じんわり”と拡がり、暖かい秋を迎えている。
今年、北海道のどんぐりは豊作のようだが、好奇心旺盛のヒグマが、住宅地や市街地に出現し私たちの生活を脅かしている。冬眠時期まで心配です。

 さて、新型コロナウイルスの流行から、学習の形態が一気に変化した。
対面で行っていた講義や研修はオンラインで実施され、オンデマンドのe-ラーニングツールの活用も日常化している。
学会の開催方法も、対面か中止かという状況から、対面と配信を組み合わせたハイブリット、一部オンラインで質疑応答を行う形態、後にオンデマンドでも視聴可能な形態など、バラエティーである。
初めて発したカタカナ用語も多く、遅れないように必死に後を追い、離れないようについて行くのも必死である。

 学ぶ機会が無くなるという閉塞感に比べると、学習機会は一気に多様化しその形態はよりアクセスしやすいものに変化した。
では、その機会を喜々として活用しているだろうか。

主体的な学習行動の動機要因は4つ「認知」「感情」「欲求」「環境」である。反対に、学習意欲を低下させる理由に「困難さ」と「退屈/面白くない」があるそうだ。知りたい・学びたい欲求と感情が動き、学習ツールが使える状態であっても、アクセスの難しさや手間、期待外れの内容では、次の学習行動に転化しないようである。
適切で魅力あるツールやコンテンツを選ぶことや学習機会へのアクセルを容易にすることが、新たな課題と認識している。とは言え、『対面』の場がもたらす刺激や充実感を大事にしながら、数少ない対面の機会を大事にスタッフと関わっていきたい。

 

2021年10月1日
看護・介護部長  森河 琴美

身体拘束のない日常

 北海道・札幌は、緊急事態宣言の中で9月を迎えました。
COVID-19感染症の広がりは全道に渡り、秋の美味しい味覚の数々は、自宅に取り寄せて細々と楽しまなくてはいけない窮屈な淋しさを感じます。

 さて、今週初め、回復期リハ病棟協会主催の「身体拘束ゼロを目指す看護」オンライン研修運営に携わりました。
身体拘束に関しては、2015年度に急性期病院の金沢大学附属病院で、身体拘束ゼロを遂げた活動に、全国の看護師が大きな衝撃を受けました。
『患者の安全を守る』という大義のため、「取ってほしい」と懇願する患者に、「ごめんなさい」と言って抑制を行う看護師の心情。
身体拘束は、患者の安全を守るエビデンスのある行為なのか。人としての尊厳を守るケアとはどういうケアなのかが、私たちに問いかけられました。

 その後、全国の急性期や慢性期、さまざまな病院でこの課題にとり組んでいる実践の報告があります。
回復期リハビリ病院でも、この課題に積極的にとり組む病院が増えてきました。
オンライン研修では、先駆的に活動している実践の知恵を共有し、始めることが変わる一歩だと背中を押されました。そして、「皆さんが工夫して行っている成功体験の共有が大事」であると。

同じ時開催された、第25回日本看護管理学会学術集会でも、「続・身体抑制は誰のため? 本当にやりたい看護とは」をテーマに、パネルディスカッションが行われています。
コロナ禍の今だからこそ、患者に向き合う丁寧な看護が問われていると感じます。
身体拘束のない日常、“患者はのびのびと過ごし、医療者も倫理的なストレスを感じない”人として嫌なことをされないという大きな問題に対し、看護師は元より関わる多職種と対話を続け、互いのパートナーシップで乗り越えていきたいと思います。

 

2021年9月1日
看護・介護部長  森河 琴美

聴くこと

「暑いですね」「夏バテしていませんか」「この暑さ、いつまで続くんでしょうね」月の1/3が30℃を越え、じめじめと湿度も高い日々が続いている札幌です。
あと半月位の辛抱でしょうか・・・ 皆さま、もうひと頑張り下さい。

 さて、北海道新聞に<脳幹出血との闘い 山本記者の体験記>という連載が4月から開始され、欠かさず読んでいる。
ある日、突然患者になってしまった山本記者が、社会に戻っていく体験が生の言葉で綴られている。6月からは、この記事に共感した一般の方々の体験を取材し、記事となっている。山本さんは、体験している障害の感覚をわかりやすく言葉にしている。『見えていなかったというより、見ようともしていなかった世界が、実は目の前にあった』と表現し、障害をもつ感覚がどのようなものか教えてくれている。

体験記としては、鈴木大介さんの<「脳コワさん」支援ガイド>も、高次脳機能障害をもつ鈴木さんの体感する世界や困っていることが語られ、教えられることが沢山ある本である。その中で、『会話の困難』にどのように援助してほしいかが記されていて、『話が終わるまで遮らずに聞く』『ゆっくり話す』と、ある。

 山本さんの記事も鈴木さんの著書も、体験したことのない世界や他者理解のためのヒントを教えてくれる。中でも「聴く」ことについて考えさせられる。
人の語りを、最後まで遮らずに丁寧に聞く。邪念を持たず、解釈を入れて中断することなく聞く。相手が語りやすいように、ゆっくりと問いかけ心を寄せて聞く。
いずれも自信はない。
時間に追われ、効率化と結果が求められるような生活や仕事の中で、「あの時、もっと話しを聞いてあげればよかった」と、後悔することも少なくない。
相手が自分のことをわかってくれた時の嬉しさや幸せな感じ、1日がガラッと変わってしまうような満足感。
 今日を機に、Hear(聞こえる)とListen(理解しようと進んで聴く)を使い分け、他者理解と相互理解に努めたいものである。

 

2021年8月1日
看護・介護部長  森河 琴美

先の読めない中で、先のことを決める

 真夏日を1日しか体験することなく7月になった。いつになく爽やかな初夏である。
まん延防止等重点措置中の札幌は、今年もビアガーデンや〇〇祭りは中止となり、我慢の夏を迎えている。
一方、疑念や心配の中でオリ・パラの準備は進んでおり、「大変なことにならないように…」と、星に願うばかりだ。 

 先頃、日本看護協会出版会から出版されている「新型コロナウイルス ナースたちの現場レポート」を拝読させていただいた。
最前線で対応に当たるナース、教育者、学生、休職中の看護師、関連団体など、コロナ禍を共有している者たち162名がそれぞれどのような経験をしているのか744ページに渡る膨大なレポートである。
特に、巻頭レポートの永寿総合病院 看護部長 北川順子さんの『そんなことがあったな、といつか思うときが来るのか』は、圧倒されるものであった。
永寿総合病院のクラスターは、コロナウイルス感染症のことがよくわかっていなかった20203月に発生している。この頃は、マスクを始め感染防止に関わる衛生材料全てが品薄で、当院でも苦労した時期であったと記憶している。
平易な言葉で淡々と語られているのだが、患者を思い、スタッフを思い、地域を思い、病院を思う管理者の温かいまなざしを感じ、胸が熱くなった。

  この本は、他にも奮闘する沢山の看護師の生の言葉が語られている。何を思い、どうしたのか。真摯に看護に向き合う姿には、力強さや清々しさを感じる。と同時に、個人的な事情を犠牲にしながら苦難の中にある人々を支え、共に歩もうとする看護師の姿を、多くの一般の方々にも知ってほしいと感じた。 

 同書に、『先の読めない中で、先のことを決める』という言葉があった。
ここ数年、そして、しばらくこの状況は続く。我に突きつけられている言葉のように感慨深い。

 

2021年7月1日
看護・介護部長  森河 琴美

時と時間について

 札幌に美しい新緑の季節がやってきた。外出制限のある緊急事態の宣言下では、せめて通勤風景の変化を感じ楽しみたいものである。

 近頃は、量的な「時間」と質的な「時」について考えることが多い。
始まりは、NICD[意識障害・寝たきり(廃用症候群)患者の生活行動回復看護]の学びからであった。当院の看護師は今年度、意識障害を有する患者の看護のアプローチ方法を新たに学び、生活行動の回復に向け取り組もうとしている。
その研修の中で、筋肉や関節を使わない状態が数日から数週間の「時間」を経たことで、固まってしまう状態を目の当たりにしている。安静と称する寝たきりの状態が及ぼす弊害である。
回復期リハビリ病院では、意識障害を有する方や寝たきりにより起きてしまった問題に対し、「時間」をかけながら意味のあるケア「時」を提供しなくてはならない。そして、意味のある生活行動となるような働きかけ(時間と時)が必要であると。ケア実践の奥の深さと素晴らしさを実感し学んでいる。

 同じ時、札幌市内の新型コロナウイルス感染症のパンデミックに対し、同法人内の病院それぞれが総力を上げ、対応に尽力している。
一方で、一般市民の方から軽んじるような発言を見聞きすると、医療従事者が感じている危機感や責任感とのギャップに驚かされ残念な気持ちになる。
感染対策という危機や災害禍の「同じ時間(時代)」を過ごしている者が「同じ質の時」を過ごしているのではないことを実感するのである。

 井部俊子さんは、『看護のアジェンダ 第196回 時と時間と不精な多忙』(医学界新聞)の中で、いかに意味のある「時」を持つかについて話している。
量的な「時間」は、人々に等しく24時間/日与えられている。与えられた時間が「たった15分」と感じるか「充実した15分だった」と感じるかは、いかに意味をもって過ごすかに関わると。
私にとって、戻らないこの15分をいかに過ごすか、不精な多忙に囚われないよう過ごしたいものである。

2021年6月1日
看護・介護部長 森河 琴美

                       

今、私たちに起こっていること

 例年にない温かな4月から一転し、5月の連休は寒々しい毎日だった。
あっという間に咲いて散った桜の後から、追い立てられるように春の花々が咲き始め、殺風景だった世界に彩りをもたらしている。

 さて、今月は「今、私たちに起こっていること」についてお伝えしたい。
ご存じのように、新型コロナウイルスの感染は、変異型ウイルスに置き換わりながら全国的に加速するような拡大をみせている。札幌市においても、コロナ対応の入院病床がひっ迫し、まん延防止等重点措置を要請する程の拡大を見せ状況は深刻である。

 昨年から、病院に勤務する職員は、強い使命感と緊張感をもって過ごすことを強いられている。続くストレスは疲労感をもたらし、互いを思いやる余裕や温かな気持ちさえ奪い去ってしまう恐れがある。
そういう毎日を私たちは過ごしている。
今、当院の看護師3名は、陽性者が出た病院の非感染病棟の支援に出向いている。彼らの奮闘を祈りつつ、不在を支えている病棟スタッフに感謝の気持ちを持ちながら、この難局を一緒に乗り越えていきたい。

 連休明けから、当院の職員にも医療者向けのコロナワクチン接種がスタートした。5年目を向えて、今月から新しいユニフォームに変更された。
良い方向に向かうことを願って、職員皆でこの5月を乗り越えたいと思っている。

 

2021年5月7日
看護・介護部長 森河琴美

陽春の到来

 札幌の4月は、観測史上初の暖かい春を迎えた。
雪と氷の冬を過ごした者にとって、暖かく花々が咲き始める春は格別の喜びをもたらし、心がウキウキと弾む。

 さて、少し前になるが、臨地実習総括の評価会議がリモートで開催された。コロナ禍の中で、臨地実習に変わる対応や工夫の報告があり、教員の方々と臨地側の熱意を感じた。と同時に、当院で経験した「オンライン実習」の評価で、『顔が見えない・反応がわからない中で、臨床の知が伝わったという実感がない』と、話す臨床指導者が多かったことについて考えた。
また、同じ時、看護実践の事例検討の中でも、『対面で説明できないため、意志決定の支援が上手く進まなかった』という話しも多く聞き、医療実践における「対面」の意味について考えた。

 ケアリングにおける相互関係は、ミルトン・メイヤロフが『連続した相互関係の中で行われる行為によって、相手の自己実現を目指すことがケアリングの本質である』と述べている。更に、『看護師と患者は【体験・経験】を通して、【能力】を高めることや【思考】することを通し相互性のある自己成長を達成する』と。『ケアされる人とケアする人の相互成長』について述べている。
限られた時間での関係性は、一方向の情報提供や指導・助言に留まりやすく、相手の反応に応じて、思考を深めることや互いの能力を高め合う域に達することは難しい。その為、ケアを提供した側の達成感や自己成長感も低く、消化されない思いが胸に残ってしまう。
 ケアを受けた側はどうだろう。回復期リハビリならではの、スタッフとの一体感や新たな力が呼び起こされるような感覚を患者や家族が持てているだろうか。評価をいただかなくてはならないと感じた。相手の課題や悩みを共に考え、一緒に乗り越える場と時を過ごす過程で得られるものが、リモートでも僅かな対面の時間でも得られるような工夫が求められている。

 間もなく新入職員研修が始まる。
感染予防対策に一層注意が必要な状況であるが、対面による相互作用の効果を期待し、新たなエネルギーを得たいと感じる。

2021年4月1日
看護・介護部長 森河琴美

芽吹き

 この3月で大学を卒業する甥の転居準備が始まった。就職先は網走市である。
オホーツク海に面した最果てのイメージと、片道5時間の距離が淋しい気持ちに拍車をかけている。しかし、私ら家族の淋しさを余所に、本人は何ともイキイキと明日への準備をしている。未知なるものに向かっていく若さにエネルギーをもらった気持ちになった。

 さて、当院では、次年度の目標に向かうための地ならしの目的で、3月に部署間の人事異動を行う。
看護介護部でも、地域連携室の師長や専従業務を行っていた認定看護師の異動を行った。
今月1ヶ月間は、新しい人間関係を築くことや今までと異なる風土の中で業務を行うことの違和感や緊張感を持ちながらの日々となることだろう。

 ドラッカーは、「管理者は共に働く人たちの全員の強みを把握するべきである」と述べている。「働いてもらうのは、できないことのためではなく、できることのためである」であると。
私自身、全員のスタッフの強みを把握してはいるか疑問であるが、それぞれのスタッフの個性や、病院のビジョンに対するコミットメントや期待は理解している(つもり)である。異動では、誰もが新人のような気持ちになり、できないことやわからないことも当然ある。今まで培ってきた”できること”に自信を持ち、ケアの強みやあなたらしさが少しずつ受け入れてもらえることを期待している。
そして、新たなフィールドで新しい自分を発見できる芽吹きを心から願っている。

 私は、5つの病院と4つの部署の異動を経験し、時に階段を降りる経験もしながら、ふり返ると昇ってきていたと実感している。
横串院長は、新入職員研修の中で高村光太郎の道程の一説を引用する。
「僕の前に道はない 僕の後に道はできる」と。
その言葉を胸に、次の階段へのチャレンジをしていきたい。

2021年3月1日
看護・介護部長 森河琴美

コロナ禍の学生実習


 札幌は極寒の冬真っ盛り。
立春を目前にしているが、さすがの道産子もヒートテックで全身を包む日々を過ごしている。

 さて、コロナ禍の中、初の「リモート臨地実習指導」を経験した。
新型コロナウイルス感染症の広がりのため、病院では外部の人の来院を制限している。看護学生の病院実習も例外ではなく制限の対象になっている。そのため、病院実習に来ることができない看護学生のために、病院実習ならではの学びを経験してほしいという願いから、教員の方と試行錯誤で準備し、無事(?)終了となった。

 病院実習のだいご味は、何といっても出会いである。
看護師には、学生の時の忘れられない(本気スイッチを押してくれた)患者さんや指導者やスタッフの方が一人やふたりは必ずいる。人との出会いだけではなく、実習環境(学生ながら、今日は病棟に緊張感がある、落ち着いていると感じとることができる)を体感することも重要な要素である。これらの環境の中で、すばらしいケアの局面を見て感じて、看護師への職業意識を一層強めることができるのである。

 このだいご味を体感するために、回復期病棟ならではの生活動作の自立への変化と経過を、動画で撮影し視聴し、ディスカッションする方法を取り入れた。
患者さんの中には、「学生さんの勉強になるなら撮って」と、快く引き受けてくれた方も少なくない。動画編集の際、生活動作が自立されていく経過だけではなく、ひとりで行えるという自信を取り戻した患者さんの表情のすばらしさに心を打たれた。子どもが初めて立ち上がり一歩一歩と歩き出す得意げな表情と同じ感動である。Re Born(再び生まれる)、再びその人らしく一歩一歩歩んでいる姿を、学生の教材を通し感じ入った。

 看護のすばらしさを感じる仲間や後輩を育てることは、携わる誰にとっても大きな喜びであることを改めて感じた日々であった。

 

2021年2月1日
看護・介護部長 森河琴美

未来につながる記憶をつくる


 札幌は、マイナス11℃の例年にはない厳しい寒さで年が明けた。
多くの人々が「静かに過ごす」ことを受け入れ、それぞれに新年への願いを込めた祈りの日々を過ごしたのではないだろうか。

 さて、私は、「毎日ひと言日記」を20年間続けている。日記を始めたのは、一晩寝てしまうと忘れてしまう性分のため、毎日を意味ある一日で終えようと考えたためである。新年は日記帳の更新に当たり、これを機に今までの日記を整理することにした。
読み返すと、ひと言で終わらずに書き連ねている日もあれば、悔しい出来事があった時は「思うことなし」と終わっている日々もある。時事の出来事への思いや悲しみや仕事への向き合い方、歳を重ねる毎に健康への感謝も目立つようになっている。総じて、ポジティブな表現で1日を終えることが出来ていることに自分らしさを感じた。

 榎本博明氏は著書「なぜイヤな記憶は消えないのか」の中で、『経験した事実は変わらなくても、自伝的記憶を前向きに意味づけることで、前向きに行動することができ、未来も換えていくことができる』と述べている。自分に降りかかった出来事を消すことはできないが、その意味を書き換えることができるのだと。私たちが生きているのは「事実の世界」ではなく「意味の世界」で、事実のもつ意味の経験を積んでいくのだと。

 日記は、起こった事実と共に自分がどう感じ受け止めたのかが綴られている。
それを、今の心持ちの私が読み返し、まずまず幸せな人生を経験し過ごすことができていると思える。辛く悔しい経験も向き合い乗り越えようと努力し苦労したことも、未熟な私には必要だった経験と感じることができている。

 コロナ禍の厳しい日々は続く。10年後に振り返った時に、未来につながる記憶として意味づけることができるよう日々に感謝し過ごしていきたい。

 

                        2021年 年頭に際して。
                        看護・介護部長 森河琴美

夜と霧

 もう師走です。

 カレンダーは残り1枚になり2020年が終わることを知らせてくれていますが、どこか他人事のようで実感をもてていないのです。
新型コロナウイルス感染症の蔓延により社会的な行動抑制が続き、心や感情にも抑制がかかり、時間の流れや曜日や季節の感覚も奪われてしまったように感じています。

 さて、当院でも市中の感染流行と同時に陽性者が発症し、ひとりの患者さんが帰らぬ人になってしまいました。共にリハビリを頑張り励ましあいながら退院を待ちわびていた私達も、この訃報に言葉を失っています。
この事実を噛みしめると共に心から哀悼の意を捧げたいと思います。

 今この時も、私達を含め沢山の医療従事者がこの感染症に立ち向かいながら、懸命に生命を守る努めを果たすために前を向いています。
夜と霧が明けることを、朝が来ることを信じて。

                         2020年12月1日
                         看護・介護部長 森河 琴美

COVID-19感染対策強化中

 街中の紅葉が深まり、晩秋を呈してきました。

 皆様へ、この場をお借りしてご報告です。
 ホームページ画面でもお知らせしていますが、只今当院は、COVID-19陽性者の発生の為、札幌市保健所と連携し感染対策を実施しています。

 感染拡大を制御し、早期に病院機能が戻るよう病院職員全体で取り組んでおります。しばらく、ご心配とご迷惑をおかけいたしますが、ご承知の程よろしくお願いします。
                         2020年11月1日
                         看護・介護部長 森河琴美

食について


 旭岳に初雪の便りが届き、いよいよ衣替えの季節に変わったことを実感する。
今年感じている時間の流れの速さに流されず、せめて実り豊かな北海道の秋を楽しみたいと感じている。

 さて、当院の臨床倫理委員会では、スタッフの倫理観の醸成と日常的に発生する倫理的問題について解決策を一緒に検討している。その中で、問題にあがる一番多いテーマは「食」に関係する問題である。
 加齢や疾患による摂食・嚥下機能(噛む・飲みこむ機能)が低下し、食べたいものが食べられなくなってしまう患者さんは少なくない。リハビリにより徐々に改善される場合もあれば、機能回復が難しい方もいらっしゃる。
患者さんによっては、口からではない栄養摂取の手段(胃ろうなど)について話し合いが必要な場合もある。「食べたい」と願っても、願いを叶えることができない限界に対する医療者のジレンマも少なくないのである。

 食は、人が生きるために欠かせない。それは、単に栄養を取ることだけではなく、その人らしさであり、その人そのものを表わすものであり、文化である。
一方、潰瘍性大腸炎を患い食べることを禁止されていた頭木氏は、著書「食べることと出すこと」の中で、『顎や舌の飢餓感』という表現で、噛めない・味わえない苦痛を表現している。飢えという感覚は「生きる・活きる」根源であり、渇望であることに改めて気づかされた。
 私たちのリハビリの日常は、看護師や歯科衛生士や言語聴覚士が、口の中の衛生環境を整え、飲みこみの訓練を根気よく行う。「どら焼きが食べたい」「から揚げが食べたい」と言う患者の願いやその人らしさ、渇望を満たすたゆまぬ関わりなのである。

 看護学生さんの臨地実習が、感染対策の元で開始されている。臨床でしか学ぶことのできない、患者が体感している「病と病をもつその人」を理解し、ケアがなすべきことを考えてほしいと願っている。

                          2020年10月1日
                          看護・介護部長 森河琴美

非日常の営み


 蒸し暑さの残る中で飛ぶトンボは、初秋が始まっていることを知らせてくれている。
暑さを乗り越えるため身体に力が入った生活をしていたので、何となく緩むようなホッとするような空気感である。

 さて先日、私事ながら体調を崩し「今日から入院して下さい」と急な入院生活を経験することになってしまった。普通に健康に社会生活を営んでいた者が、患者になってしまった経験について今月は述べてみたい。
 即日入院の指示は、平日の夕方。一旦帰宅することもできない状況であった。自覚する不快な症状を「何とかしてほしい」と感じつつ、頭は混乱していた。
病気のこと、治療のこと、入院生活のこと、仕事のこと、家族のこと、退院後のこと etc. 大きさと深さはそれぞれ違えども、そういったことが一変に押し寄せてくる。
病院に勤めている者にとって、病院で起こるそのほとんどは、日課や規則として決められたルーチン化された生活である。即日入院の患者の「混乱した状況」についても、理解していたつもりであったが、自分のこととなると予想以上に混乱した中で、非日常の生活が始まったのである。

 文献(『患者の入院生活に看護が及ぼす影響』早川ゆかり他)では、患者が【安心してここに居られる】ことが患者の「入院患者という名の仕事」を行いやすくさせるキーであると述べている。疾患や治療や行うべき業務への関心だけでなく、患者が抱えている関心をみようとし語りかけることが大事であると。
 幸い私は、元同僚のスタッフのいる病院での入院であったため、すぐに【安心してここに居られる】状況になり、患者に専念することができた。
入院中、状況の理解できない患者や入院したばかりの患者に、やさしく、わかりやすく語りかけている看護師の声を何度も耳にした。「何か気になりますか」「喉は渇いていませんか」「ここに居て大丈夫ですよ」「夜は辛かったですね」「今日は良い顔していますね」等、関心を寄せた看護師の語りが、どれだけ患者に安心感をもたらしているか実感していた。

 もちろん看護師だけではなく、朝夕と回診に来られる医師やリハビリスタッフの励まし。
非日常の営みの中で、患者に寄り添うことの大切さについて考えた日々であった。

                          2020年9月1日
                          看護・介護部長 森河琴美

看護師の暗黙知と学生の経験知


 札幌の夏の風物詩である大通公園のビアガーデンが、1丁の区画で縮小し開催される。徹底した新北海道スタイル(感染防止対策)を遵守した形式のようである。全国的に拡大する感染の第2波からすると複雑な思いである。

 さて、先日看護師の基礎教育に関わる大学教員の方や4年生の学生さんと話す機会があり、来年入職する新人看護師の継続教育のあり方について考えた。「患者との対話や観察から、患者を想像すること、推論の機会が失われている」という。それを補うため、動画等の教材を駆使し、学生同士が推論したことをリモートでディスカッションする形式を導入しているということだ。教員の方のご苦労と刷新のバイタリティーに感心する一方で、迎い入れる継続教育の刷新も求められていることを実感した。

 学生が実習という経験を通して得る“経験の知”が十分に得られないという状況で、経験知を含め、形式知や暗黙知をどのような学習の機会を通して学ぶのか。知識なのか技術なのかコツなのか、教育内容の具体的な整理が必要である。

 一方で、指導する側の問題もある。ベテラン看護師の事例研究のディスカッションの場で、「分かっているけどうまく説明できない」「何て言ったらいいだろう」という、看護実践を表現できないもどかしさを口にしていた。
患者の背景や状態や反応から、今この時の最善の方法で提供される看護実践のコツやキモ。この実践の知が、経験の少ない新人に、患者をイキイキと思い描けられるよう伝えることのできるベテラン看護師を育てるしかけも必要である。
人に関わる仕事に欠かせない「相手を思いやる」というケアリングの基本。思いやりという想像力(創造力)を持ち、やさしさを言葉や行動に表わすことのできるスタッフを育てる責任があると感じた。

 CNNニュースで、アメリカのある州の裁判所で「マスクを着けない権利」について市民が語っているのを見た。「自然な呼吸を妨げるものを強制する権利はない」と。

他者理解の想像力、アメリカが置かれている多様性の難しさを感じた。

                          2020年8月1日
                          看護・介護部長 森河琴美

マスクを越えて


 今年は蝦夷梅雨が長引き、ここしばらく太陽の日差しや青空を見ていない。寒さと日照不足は農作物にも影響し、プランターのゴーヤの成長も今ひとつのように感じている。
街中には活気が少しずつ戻り始め、公共交通機関や百貨店利用の際にも「With コロナ」対策が定着した生活に慣れてきている。
一方で、マスクによる弊害が聞こえてくる。

 先日のTVでは、保育園での乳幼児達への影響が放送されていた。
ご飯を食べるとき「あ~ん」と聞いて口を開けるが、保育士さんの表情がわからないため「モグモグ」が上手く出来ないのである。普段は、保育士さんの口がモグモグする様子を真似て、子ども達は咀嚼し、「ゴックン」という言葉と表情で嚥下を学習していく。
また、ままごと遊びで子どもが「どうぞ」と差し出した物を「ありがとう」と受け取っても、嬉しい表情が伝わらずに怪訝そうな戸惑いの表情を見せるという。言葉的なコミュニケーションが未熟な者にとって、表情という非言語的なコミュニケーションツールが遮断されてしまうと、発育や発達にも影響を与えてしまうようだ。保育士さん達の試行錯誤の様子が伺えた。

 面会禁止が長く続いている現在は、入院患者さんも親しい家族や友人との対面での会話が絶たれてしまっている。心苦しい状況である。
このような時だからこそ、私たちの見つめるまなざしと優しい語りかけで、先入観で相手の語りが覆われて見失うことがないよう、患者の語りに耳と心を傾ける大事さを感じるのである。
ユマニチュードの提唱者であるイヴ・ジネストさんが、「マスクをしていても、相手の瞳をとらえた優しいまなざしは、心に届きます」と、語っていたことを思い出す。  

 仮面やマスクに覆われた奧にある本当の笑顔や人生とは・・・
女帝と言われている都知事の、美しいマスク姿に隠れた人生にも思いを馳せる日々です。

                          2020年7月1日
                          看護・介護部長 森河琴美

コロナ禍に生きる


 新型コロナウイルス感染症流行の第2波が来た北海道も緊急事態宣言が解除された。しかし、もろ手を上げ“バンザーイ”と喜ぶというよりも、閉じていた心の窓を少しだけ開き、さわやかなライラックの香りの風を通す程度である。マスクの着用や手指消毒、人との距離間や換気は日常化し、新北海道スタイルの生活様式は人々の衛生習慣の中に取り込まれている。
コロナ禍にどう生きるか、今までの仕事の仕方、生活の仕方、健康管理とは異なる発想とスタイルが求められていることを感じる。

 立川昭二著「病気の社会史」(岩波書店)は、病気の流行がもたらす人々と社会の変化や、文明の発達によって引き起こされる病気について詳しく書かれている。
未知なる感染症が広まり、親子兄弟姉妹同士でさえ、聖人や役人であっても例外なく病む者を排除しようとする。病気の本当の恐ろしさは、道徳観や倫理観を崩壊させ、コミュニティーや社会を崩壊させていくことだとも言っている。
これは、日本赤十字社が言う、新型コロナウイルス感染の3つの顔「病気」と「不安」と「差別」と同じ構造である。感染症の病気そのものの怖さが不安と恐れを助長し、気づく力、聴く力、自分を支える力を弱める。また、不安や恐れは人間の生き延びようとする本能を刺激し、ウイルス感染にかかわる人や対象を遠ざけ、人と人の信頼関係や社会のつながりを壊していくという負のスパイラルになると警鐘をならす。偏見や差別が本当の敵を見えなくさせて、更なる病気の蔓延につながるのである。

 いつもの自分だったら気づくことのできる変化を見逃していたり、笑って済ませられるようなことがカチッと心に残ったりということも、その現れだろうか。会って直接話しをする機会も少なくなり、コミュニケーションを生業とする医療職としては寂しく思う反面、リモート技術の活用や進化にも驚いている。

 先の本では、「ひとつの悪疫が消えると必ずまた別の悪疫が創られるという絶え間ないくり返しを、歴史は嫌というほど見せつけている」と述べている。アマビエが、現在に何を語っているのか、次に備え歴史と経験から学ぶことは少なくない。

                          2020年6月1日
                          看護・介護部長 森河琴美

自分らしさ


 春から初夏にかけてのこの時期は、太陽の光は温かく、花が咲き始め、小鳥が鳴き、爽やかな風が吹き抜け、時折降る雨さえ心地よく、生命の息吹に溢れている。
しかし、人々が感染症に伏し、命が奪われ、緊張感をもって暮らさなくてはいけない毎日では、この季節を思う存分に楽しむというわけにはいかない。元気で健康であった心も硬くなってしまい、力の抜けない生活のために肩こりにも悩まされている。
 靴の中に入った石のように、いつも違和感と痛みや辛さと我慢を強いられる日常になってしまった。仏教では「四苦八苦」という言葉があり、人が生を受けてから八つの苦しみに苛まれると言われている。苦しみを抱えて生きることも人間の生であり、苦しみに支配され、自分らしさが奪われてはならぬとも。

 病院の日常も大きく変わった。大きな笑い声やおしゃべりをしている様子が少なくなり、お互いを励まし合いながら行っていた集団体操やレクリエーションの形式も変わってしまった。賑わっていたラウンジの風景もひっそりしている。「家に戻ったら、外にも出なくなるねぇ」と、退院後の生活の不安を口にする患者さんや家族も少なくない。
そんな時は、「生活リズムを保つ」という指導を行うという。「お家にいる」という新しい生活習慣の中で、自分らしさをプラスしながら1日や1週間のスケジュールを整え、毎日を過ごしていく。新たなことにチャレンジしなくても、変わることに振り回されることなくリズムを変えずに積み重ねていく。そうして、心の安定をえることで落ち着きを取り戻したりしていくのだという。

 日常がほぼ「新型コロナウイルス感染症」に支配されている私も、大好きな落語家の動画サイトでの熱演やBS放送の空港ピアノ、コルトレーンのBGMと本に助けられ、心身のリズムを整え明日の英気を養っている。
皆さんも、自分らしいリズムで毎日を過ごせますように。

 新型コロナウイルス感染症患者に最前線で対応している医療スタッフの皆さんと共に、今できることを今日も積み重ねていきます。

                          2020年5月1日
                          看護・介護部長 森河琴美

耐える力


 まったく、こんな新年度を迎えることになるとは誰が想像し得ただろう。
自覚症状もなく蔓延し、隔離され、家族の見守りもない中で命が奪われていく。感染医療に関わる医療者の緊張や疲弊感も、「緊急事態」であるというメッセージを伝えている。
ウイルスと私たちの持久戦の様相である。

 昨年の、ポジティブ・マネジメント研修の際、『ネガティブ・ケイパビリティ』という言葉を教えられた。何事も前向きに向き合い解決していくというポジティブな思考だけではなく、解決できないことや答えの出ないことに耐える力(能力)も大事であると。

 この概念は、障がいをもつ入院患者さんの対象理解やケアを考えることや、新人看護師の支援においても重要なことであると感じていた。日々の中で直面する状況は、必ずしも簡単に乗り越えられるものばかりではない。わかり合えないことや受け入れ難いこと、背を向けたくなること、途方に暮れ悲嘆に飲まれてしまうことも少なくない。
そんな状況の中でも、日々を過ごすこと、淡淡と毎日を重ねること、結論を先延ばしにしながらちょっとずつ状況に慣れていくこと、その状況に耐えていく力も人間には備わっている。

 状況に左右されることなく、自分自身に負けないで耐えていく力を、今こそ発揮したいと感じている。

                          2020年4月1日
                          看護・介護部長 森河琴美

大きなできごと


 3月13日~14日に当院が大会運営を任されていた
第35回 回復期リハビリテーション病棟協会研究大会が中止となった。新型コロナウイルスの感染拡大によるもので、中止決定の判断を下す1週間は何とも表現にできない複雑な思いで過ごした。正に苦渋であった。発表を予定していたスタッフが「気が抜けてやる気が落ちました」と。
準備にご協力いただいた方々や発表や参加予定だった方々は皆同じ気持ちでいるのだろう。喪失感を癒す春の陽光を楽しむことができない緊張感の中で、病院での日々を過ごしている。

 この感染拡大が大きくなる前の2月、今年度力を入れて取り組んでいた「臨床倫理を学ぶ」最終の研修として、外部講師をお呼びして『倫理カンファレンス』研修を開催した。価値観の合意を見える化して共有しながら進めていく。倫理原則に沿って「問題ない〇」「それほど問題はない△」「問題がある×」「情報不足で判断できない」とカンファレンス参加者の合意をとり、次に何をしていくのかを考えていく。至ってシンプルではあるが、『なるほど』と思えることが多く、今まで受けた倫理研修の中で一番納得感のあるものであった。
仕事を組織やチームで行っている者にとって、この『合意するプロセス』は必要不可欠であり、他者の話を傾聴し受け入れるというコミュニケーションの連続であることを実感したのであった。

 合意形成のメリットは、納得感や実行度が高まり、関係者の当事者意識や互いの関係性も深まる。最終的には意思決定の質が上がるとされる。様々な話し合いや会議の場、日常のおしゃべりの中でも、自分の価値観や琴線に「違う」「変だ」と触れてしまうできごとや人物は少なくない。関係性の浅い人間関係であればなおさらで、そのような中でも合意し先に進めていかなくてはいけないことはある。キーになるのは、やはり話をし、他者を理解し「変だ」「違う」と思った自分も理解してもらう関係性を積んで行くしかない。互いに合意し物事を進めていける成熟した関係とスキルを身につけたいものである。

 新型コロナウイルスに関連する様々な状況に、共に乗り越えていきましょう!

                          2020年3月
                          看護・介護部長 森河琴美

人間看護師


 暖冬の異常気象は、季節のお祭りを楽しみにしている人々にとって困った問題です。札幌で開催する雪祭り準備に関わっている人達の労力が報われるように、今しばらく寒さが続くことを願っている。

 さて、先日、新人看護師のナラティブ研修にファシリテーターとして参加した。新人看護師がどのような体験をしているのか、看護実践をどのような言葉で語るのか、楽しみな研修である。
落胆している患者にどのような言葉をかけたらいいのか、認知症を持つ患者に対する緩和的なケアやコミュニケーションの難しさ、高次脳機能障害を患う患者に対する尊厳ある対応とケアとは。奮闘している看護師とチームと患者の様子がイキイキと語られる。
患者に良くなってほしい、元気になってほしい、その為にできることを増やしたい、成長したい、できない挫折を乗り越えたいと思っていることが真摯に伝わり、胸を打たれる。同時に、先輩看護師の臨床推論の高さに憧れを抱きながら尊敬の念をもっていることも感じられ、新人看護師ならではの成長の伸びしろと可能性を感じさせるのである。

 その中で、「患者にとって入院生活の日常って何だろう。この環境やこの状態は人としてよいことをしているのだろうか」と、チームで考えケアを検討した事例があった。
活動に制止や制限を加えられ混乱をきたす認知症の患者さん、ベッドからの転落防止と称して床にベットマットを敷いて対応した患者さん。いずれも病院の非日常の環境や業務的な対応に一石を投じ、普通の人から見た視点で立ち返り検討をしていた。

 井部俊子さんも、医学界新聞「看護のアジェンダ『息子の手術と父親の経験』」の中で、病院で起こっている医療者中心のルーチンが患者さんやご家族からどう見えているか考えてほしいと語っています。そして、『人間看護師』に救われるとも。

 ユニフォームを着た瞬間に、専門職の看護師としてのスイッチが入るように感じていたが、ユニフォームを着ようが着まいが、看護師であり同時にひとりの人間である自分を意識した。”人間くさい看護”を新人看護師の体験から気づくことになった。

                          2020年2月
                          看護・介護部長 森河琴美

喜びの探求


 2020年がスタートした。札幌は比較的穏やかな天候の年末年始であった。
オリンピックの競技会場のひとつに札幌が急きょ選ばれたことで、今年1年が特別な1年になるようなワクワクとした楽しみを感じている。大寒もまだであるが、すでに夏が待ち遠しい・・・。

 さて年末年始は、恩師から紹介されたポール・P・ザック著の「トラスト・ファクター」を読み堪能した。この本は、最強の組織をつくるために必要な『信頼』の構造について書かれている。
「現在の組織は、上司と部下、指示や命令で動かす時代ではなく、ひとりひとりが組織を動かすひとつのチームであることが必要である」とドラッカーは述べている。そのため、ひとりひとりのスタッフがどのような心持ちで働いているか、仕事に喜びを感じ自分の仕事に満足していることが重要であると。また、仕事の喜びとは、「信頼と目標」によりもたらされるとも述べている。
信頼するチームメンバーがいるだけで幸せホルモンのオキシトシンが分泌され、目標に突き進もうとすることでやる気ホルモンのドーパミンが分泌し、仕事の喜びを得ると言うことである。
体感的に経験的に合点がいく内容ではあったが、そこにホルモンが関わっていることに驚いた。

 ストレスに感じる課題の克服も、上司や同僚からの声援や「お疲れさま」「良くやったね」「頑張ったね」の承認と笑顔が、次の困難な課題に向かわせる原動力となること。それこそが、仕事の喜び、個々の成長、組織の成長をもたすということなのである。
私には、信頼する上司も同僚もスタッフも沢山いて、登るべき山(課題)も明確であるという幸せな環境にいることに改めて気づかされた。その喜びを、ひとりひとりのスタッフにも感じてもらえるよう、私が行わなくてはならないことも明確である。
さあ、この思考を胸に後悔のない1年としたいと年頭に際し感じた。

 マザーテレサの言葉も胸に。

   思考に気をつけなさい それはいつか言葉になるから
   言葉に気をつけなさい それはいつか行動になるから
   行動に気をつけなさい それはいつか習慣になるから
   習慣に気をつけなさい それはいつか性格になるから
   性格に気を付けなさい それはいつか運命になるから

                          2020年1月
                          看護・介護部長 森河琴美

温暖化について


 毎年のことであるが、今年もあっという間に師走の月となった。
 札幌もこのまま根雪となるのだろうか。気象予報士がニュースの中で「根雪が早くなった年は、積雪量が少ないというデータがあります」と言っていた。そうなることを期待したい。

 さて、先日当院の患者さんが「これから外出訓練です。吹雪で延期になっていたので楽しみです」と、もこもこのダウンジャケットを着ながら話されていました。
北国では、地域にかえり・地域でくらすために、雪道の克服は欠かせない。圧雪の歩道は歩きやすいが、斜めになった道や横断歩道は、一瞬足がすくむような思いになることも少なくない。そのため、運動機能やバランス感覚が低下した方には、セラピストとの外出訓練は重要である。時に介助者となる家族などの方も同伴しながら行っている様子も目にしている。
計画通りに外出での訓練を行えるか否かは、空模様に左右されることもしばしばである。特に、今年は、「10年に1回の大荒れ」「50年に1回の寒波」など、温暖化による気象変動を日常でも実感しているのではないだろうか。

 時を同じくスペインでは、国連気候変動枠組み条約締約匤会議(COP25)が開催されている。温室効果ガス削減対策の「パリ協定」実行に向けた、具体的目標の設定を話し合うためである。
国際的な問題とは言え、災害の発生原因となる気象への影響を考えると、ひとりの地球で暮らす人間として無視することはできないように思う。
明かりやパソコン、TVをつけっぱなしにしない、暖房温度の設定を1℃下げる、レジ袋を使わないなど、言い古されているような省エネ対策ではあるが、意識して「あたりまえ」として継続することが大事だと改めて感じている。

 今年の流行語大賞は「ONE TEAM」。真面目な国民性をもつ日本人として、他国の乱暴者に左右されることなく大事なことを貫いてほしいと願っている。

                          2019年12月1日
                          看護・介護部長 森河琴美

Nursing Now Movement


 晩秋の札幌
今年の秋は、ゆっくり深まっていますが週末は雪予報。いよいよ覚悟のシーズンが始まります。

 最近、学会や研修会の度によく耳にしている「Nursing Now」について皆さまはご存じだろうか。このキャンペーンは、看護職への関心を高め、地位を向上することを目指すものでイギリスから始まった。その後、WHO(世界保健機関)とICN(国際看護師協会)の賛同を受け2020年末まで世界各地で展開する活動である。日本看護協会でも、参加30団体と13団体の後援を受け、今年の5月に実行委員会が発足しキャンペーン活動が始まった。
 国連の掲げる「持続可能は開発目標(SDGs)」の17の目標のうち、『すべての人に健康と福祉を』『ジェンダー平等を実現しよう』『働きがいも経済成長も』の3つの目標にも関わる活動であると言われている。

 では、ひとりひとりの看護師はどのようにこの活動を理解し、自覚する必要があるのだろうか。私は次の2つのことを大事にすることのように思う。

 1つは、社会や時代が変化しているということを、専門職である看護師の視点でみることであろうと思う。一昔前とは、人口構造も健康問題も情報も人々の生きる意味(価値)も大きく変化している。外国人の方々が同僚として病院に勤務する時代である。「こうしていた」「こうあるべきだ」という凝り固まった価値では変化には対応できない。柔軟な思考と人を受け入れるやさしさ、変化を楽しむユーモアさを持ってみてはどうだろう。

 2つ目は、ケアを受ける人の見方で自分のケアを見直してみると言うこと。看護師は日々、対象者に良かれと思うことを精一杯行っている。しかし、毎日の業務に没入すると、私たちのケアさえ慣行的なルーチンになってしまう。私たちの挨拶は、相手に心地よく届いているか。私たちのケアは相手を幸せな気持ちにしているか。ケアを受ける人の見方で、自分達のケアを評価し、改善する努力を惜しまず行うということのように思う。

One Smile One Happy
看護師は、「相手を幸せにする」ことができる幸福な仕事であることを誇りに思い、このキャンペーン活動に望みたい。

                          2019年11月1日
                          看護・介護部長 森河琴美

書き出すこと


 例年より早い秋を迎え、札幌藻岩山の紅葉がどんどん進み始めている。この時期の寒暖の差は身に堪え、咳をするスタッフもちらほら見受けられ、心身の季節変わりの準備が追いついていないように感じている。

 半期を迎えるにあたり、「あれもしたい」「これも気になる」等、行わなければいけないと思っている沢山の課題や問題が頭に浮かんできている。日常的な問題整理に活用しているものは『To Do List』だが、もやもやしているものが整理されるのと同時に、何から手をつけるか、どのようにとり組むかの道筋も整理される。慣れてくるとキーワーズだけで思考が整理されてくる。

「書き出す」ということ。看護管理者は苦手にしている人が多いと、先日の看護管理者の研修で聞いた。「書き取る」ことは容易にできるが、「書き出す」という思考は、その時点で既に抽象度を上げて本質的な問題を整理する行為になっているという。
確かに、「書き出す」時には、「〇〇さんが、△△で、××だ」という文章にはならない。しかし、抽象度を上げすぎて『整理』とか「連絡する」とだけ書いても、何のことだったろう・・・となってしまう。
バッチリ本質を言い得て、さらに解決する順番やスト-リーが見える、そんなListができれば、それだけで解決したようなスッキリした気持ちになる。

 今月、2年目の看護師は、受け持ち患者の入院期間に行った看護を整理するという、「書き出す」という事例検討を行っている。事例を物語のようにまとめるのではなく、看護場面や看護過程に焦点を当て評価しつつ、得られた教訓を整理する。経験学習の一歩である。事例をまとめることは、私自身の経験からも、考えながら整理し書き出すことを学ぶ重要な一歩のように感じる。誠実に患者に向き合い精一杯行ったケアの発表を今からとても楽しみにしている。

 人はもの事を深く考える場合、右上や左上を見上げながら考えるという。晴れた高い秋空を見上げながら、この半期を考える日々である。

                          2019年10月1日
                          看護・介護部長 森河琴美

訪問看護ステーション開業1年


 カレンダーをめくると紅葉の山々の写真。ここ数日の湿度のない爽やかな空気感で秋が近づいていることを実感する。昨日は、昨年地震で中止になった『病院祭』が、楽しみにしていた患者さんや準備のスタッフの2年越しの思いと共に開催された。
秋とまつり、豊穣を願う皆の気持ちに参加した者も豊かな気持ちとなった時間だった。

 先日、北海道看護協会主催の看護管理者懇談会に出席し、2019年度「看護の動向」の説明を会長から受けた。その中で、看護職員の就業数のH18年とH28年の比較で、40歳未満の就労者がH18年では約53%、H28年では約39%で若い看護職員は減少していることと、反対に60歳以上の就労者が3.4倍に増加していることに驚いた。就労人口の減少からくる定年年齢の引き上げは、近々の課題であることを実感した。
 それと共に、訪問看護で勤務する看護師が3.6%(H27年3.1%)と中々増加に転じない状況であることも確認した。病院と在宅ケアを担う訪問看護や訪問診療と、連携するしくみや顔の見える関係づくりの活動は進み始めているが、肝心の在宅ケアを担う人材不足は、大きな課題であると実感している。

 当院の『訪問看護ステーションそうえん』は2年目を迎えた。
「家に帰ると、瞳に光が宿ったようにいきいきと自信を取り戻してく様子に関われる喜びは、病院の中では味わえない」と、御船所長は語っていた。
7月には学生実習を受け入れ、在宅看護学を一緒に考え学ぶ機会を得られた。また9月は病院の看護師が研修に出向き、在宅看護のノウハウを学ぶ機会を得ることになる。更には、利用していただきやすい訪問看護ステーションを目指すために、土日祝日も通常の訪問看護が提供できる体制を整えようとしている。

 在宅ケアを担う人を増やし育てることは容易いことではない。経験したことのない者にとって想像のできない未知数なことも多い。在宅で行うケアは何が魅力なのか、語りを聞くことや体感してもらうことで、包括的に考えケアを実践できる看護師の活動を広げていきたいと考えている。病院理念である『ずーっと地域とそこでくらす人を支える』ことを実現する一歩を、悩みながら歩んでいる。

                          2019年9月2日
                          看護・介護部長 森河琴美

倫理を学ぶ


 7月の低温と曇りの日々が空け、札幌にも厳しい暑さがやってきた。先日、丸ごとスイカを購入し、切って食し”夏のスイカは格別だな~”と、しみじみと実感し、一時の清涼感と小さな夏を楽しんだ。

 さて、当院には組織・職種横断的に教育を行う教育研修室があり、新入職員の研修や回復期リハビリに関係する職員教育を行っている。
今年度のテーマは「倫理を学ぶ」である。

 開院から3年目を迎え、スタッフ皆で医療やリハビリ、ケアに取り組み、一定の合格点を頂けるようになってきた。開院当初に沢山のお叱りの意見も頂戴していたが、それらも少しずつ減ってきて、患者や家族と意思疎通をはかりながら行ってきていることにホッとし始めていた。しかし、ひとつひとつの対応、1事例1事例を「医療の質」の視点で評価してみるとまだまだ改善する課題は多いと感じ、改善への取り組みが必要と感じ始めていた。

 そこで、6月には「ホスピタリティあふれる接遇」研修を行い、教育研修室では倫理に関する研修がスタートした。先日は、石垣靖子先生にお越しいただき、「なぜ医療者が臨床倫理を学ぶのか」という視点で、沢山の経験と大切な基本を教えていただいた。その話を聞いていて、学生のカンファレンスでの事例を思い出した。「患者さんは、呼んでほしいのに呼んでくれずにトイレに行く。何度説明しても、静止を聞かず行ってしまう」安全と自律尊厳の中で悩んでいた事例であった。臨床指導者は、「患者さんが、自らトイレに行きたいと動くという主体性と尊厳を守り、静止することではなく、トイレ歩行のための安全なケアを考えてみよう」と、話したそうだ。尿意をもちトイレに行きたいとする基本的欲求を叶えるあたり前のケアを行う看護師の存在に、感銘を受けた出来事だった。

 今後の倫理の研修は、「患者の意志を尊重した退院支援」「身体拘束を解除に向けた関わり」など、多職種で事例と実践を共有しながら、考えていくことになる。看護師の身体ケアがいかに患者を活気づけ尊厳を守るかということにスタッフが気づいていく機会となることが楽しみである。

                          盛夏
                          看護・介護部長 森河琴美

ホスピタリティの基本『接遇』


 札幌に、紫陽花の花が咲く季節がやってきましたが、「咲いていいのかな?」と戸惑ってしまうような天候が続いています。当院の、オレンジ色のツツジが今頃満開に咲いていますので、敏感な庭木は正直です。皆さんは体調崩されていませんか?

 さて、先日、リーダーや責任者を対象とした「接遇力向上研修」を開催しました。
3年目を迎え、患者さんやご家族からいただく接遇に関するご指摘に、しっかり、結果として応えていこうという思いと、まずは、「自分はできている」と、勘違いしている責任者(私も含め)や、見本となるリーダーの方々の認識と行動を変える必要があると感じ企画しました。

 病院に入職したほとんどの職員は、接遇研修を受講します。
私も、新人の時に「3段階のおじぎの仕方や電話の受け方、敬語の使い方」など半日程度使って、社会人として必要な基礎力を学びました。当院では、医療サービスを提供するものとしてのマインドや姿勢に重点を置き、教育を行っています。
医療スタッフであれば一度は聞いたことがあることが、何故守れないのか?徹底できないのか? コアサービス(満足のいく医療)さえ提供していればいい、文句はないだろうといった奢った気持ちになってしまうのではないだろうか。
医療サービスにおいては、結果が全てではなく、どのように提供されたのかというプロセスも重要であり、接遇は無くてはならないものです。仕事では、忙しい・余裕がない時もありますが、「相手の立場」から考えるとそれは理由にならないことなのです。

 研修は「ホスピタリティあふれる病院の実現」と題し、私たちの使命(ミッション)をもう一度考え直し、私たちが選ばれるためには何が大事か、私たちが考えるホスピタリティとは何かを考えるものでした。
『100-1=0』になる。一人の残念な対応のために全て無になる。
意識が習慣になり風土や文化(価値)に昇華できるよう、まずは一人から、まずは自分から改善する大切さを改めて感じた機会でした。

                          2019年7月1日
                          看護・介護部長 森河琴美

スケールを評価すること


 先月より、初夏を越して「盛夏」の様相を呈している札幌ですが、屋上から見える手稲山も新緑が迫ってきているため山頂の残雪が焦っているように感じます。
よさこい祭りや北海道神宮祭など、北海道の一番いい季節が始まりました。

 さて、今月から3年目の病院づくりが始まりました。気持ちの上では、濃度の濃い2年間だったように思います。私を初め多くのスタッフは「回復期リハビリ病棟」での経験がないため、それぞれのスタッフがどのような役割を担い活動しなくてはならないのか、日々考えながら過ごしていました。相談や協議が前向きに行えるチームづくりの難しさは今も続き、理想とするチームアプローチは、もう少し先のようです。

 今月は、チームアプローチの基盤になる、使用している専門用語(言葉)を理解することについて。
専門用語は、専門職のための用語なので他職種には中々理解しがたいものです。
セラピストが語る用語も、「餅は餅屋」ということわざのように、看護職が理解しなくてもセラピストに任せればいいと思っていました。ところが、共有するスケール評価の理解に不都合が生じました。

 医療では、患者さんの身体状態や症状を理解するために、認知症スケール、褥瘡発生リスク評価、転倒転落アセスメント評価など、沢山の評価スケールを使用します。それらのスケールが、評価するためのスケールに終わらせずに、患者さんの状態改善に活かされるためには、皆が理解しなくてはなりません。
 私は、当院に来て初めて『FIM(Functional Independence Measure)』を知りました。入職時の研修やテストでも悲惨な結果に終わりました。しかし、これを理解し評価できると、確かにカンファレンスや目標を設定する際にチームが共通理解できることを実感しました。
「1ヶ月後に4点から6点にするために、具体的に何をする?」というように、全職種が改善された患者像をイメージし、具体的に何をするか検討できるのです。
まずは、皆が正しく『FIM』を評価するために、新しく入職したスタッフや、看護や介護職スタッフへのOJTが新たに始まっています。

「福徳の3年目」になるように、新たなチャレンジを始動します。

                          2019年6月3日
                          看護・介護部長 森河琴美

処遇改善に思う

令和という新しい年号,皐月という初々しい青葉の時期。
ワクワクと躍動するような季節になりました。

 さて、新年度になってから「働き方改革」の実践として、スタッフの労働時間やお休み、有休休暇や時間外労働時間を把握するシステムが稼働しています。まだまだシステムを有効活用しているとまではいきませんが、「ONとOFF」を意識的に作って、明日も元気に働こうという精神は大いに感じるところです。その為か、この大型連休も以前より休みやすくなっているような雰囲気を感じています。
 看護職は、24時間365日のシフト制の勤務のためか、休み下手と言われていた職種です。先輩が取らなければ後輩はもっと休めないという悪循環も経験していました。その時代から比べると、若いスタッフもベテランも「ONとOFF」を上手く付けられるようになっているように感じています。

 労働に関する課題として、介護福祉士の処遇改善についても検討しています。
介護福祉士は、介護保険法制定の時にできた専門職で、主に介護福祉施設で勤務していますが、当院のような回復期機能の病院にとっても重要な役割を担っています。生活の場に帰る患者さんやご家族を、生活の視点で整え、サポートし、リハビリケアを行うために、介護福祉士の能力は欠かせないものです。しかし、一般的な社会人給与からすると処遇が低いとされているため、彼らが専門職として成長していくことを支援し、安定した生活が送れる処遇を検討することは、私にとっても大きな責任と感じています。

 今まで、何となく敬遠していた労働に関する問題は、スタッフを大切にする基本であると遅ればせながら感じています。

                            2019年5月
                          看護・介護部長 森河琴美

『心がけ』について

 平成最後の新年度の4月が始まりました。平成生まれの多くのスタッフは、「年号が変わるとスゴく年をとった気がする」と言っていました。私も3つの年号を経験することになり、それを実感しています。

「令和」はどんな年になるのでしょう・・・

 さて、先日コミュニティーラジオの「医学ひとくち講座」に出演する機会を頂き、「患者の心がけ」についてお話いたしました。

突然の病気や治療、治らない状態になってしまった時に、自分が主役として自分がどう生き切るかを早めに考える、向き合うということについてです。当院でリハビリを開始し退院の支援をはじめた時、なかなか自分の事(自分の家族の事)として考えられずに「お任せ」の医療になってしまう患者さんや家族は少なくありません。
先日も友人から、「遠方の母が脳疾患で倒れて、障害は軽いけれど一人で暮らしていた人だから、どうしたらいいだろう」と相談がありましたが、入院してからもう4ヶ月が過ぎてのことでした。お母さんの障害の程度と今後の生活への希望を確認し、地域の医療や施設、コミュニティーの状況を聞き、お母さんと友人の最善を一緒に考え、整理する手伝いをしました。友人からは「早く相談すればよかった」と、もんもんと過ごした数ヶ月を悔やんでいました。抱えている不安や疑問は声に出すと助けが得られる。一緒に整理して考える事も、健康問題について理解している看護師の大事な役割だと実感した事でした。

 誰もが予想しなかった出来事に遭遇すると、向き合って考えるには時間を要します。だからこそ、健康や仕事や生活の問題など、ある程度の未来を想定し「心がけ」と「心がまえ」を持ち、自分を見失わずに自分が決めて整理していくことが大事だと思いました。
そして、「心がけ」の助けがいつもできるように、今の医療や福祉サービスについて情報を更新していくことも、私達専門職の責務と感じました。

 そう思うと、天皇陛下の生前退位への意思決定も、「どう生き切るか」を考えた「心がけ」のようにも思われました。

                          2019年4月
                          看護・介護部長 森河琴美

スタート!

 3月のカレンダーの写真は「桜」です。
札幌も、今年の桜は早いのでないかと思わせるほど暖かな陽気が続いていますが、インフルエンザにはまだまだ油断がならないようです。

 先日、回復期リハビリテーション病棟協会第33回研究大会が千葉の舞浜で開催され、当院から15名のスタッフが参加しました。【宣言。科学と情熱。】をテーマに、4,000人近くの参加者があったそうです。「東京ディズニーランド」周辺のホテルや総合体育館を会場に開催され、夢の国の誘惑に負けず、現在のトレンドを学んできました。
 特に、日常の看護や業務に研究視点を持つことの重要性を再認識しました。例えば、患者さんの余暇時間(リハビリ訓練をしていない時間)の科学的な分析は、「なるほど!」と思わせる新たな気づきでした。職種として自律してこその専門職連携であると改めて実感しました。
この研究大会の次回大会長は当院の橋本副院長で、2020年3月13・14日に札幌コンベンションセンターで開催されます。当院での大会準備は昨年から始まり、舞浜大会が終わったことでいよいよ準備や運営が本格化してきています。ワクワクとドキドキとソワソワが押し寄せてきました。

 3月1日は、スタッフ人事異動や病棟管理体制の変更を行っています。新たなチームづくりの始まりがスタートし、病院全体が何やら動いている感じがしています。

新年度を前に、いろいろなことがスタートし始めました。
乗り遅れないように、足元とその先をみて進んで参ります。

                                                                     2019年3月
                          看護・介護部長 森河琴美

看護の価値

 積雪が少ないと油断していた札幌ですが、帳尻合わせのようにどっしりと降り始め連年並みとなりました。2月は、雪祭りや節分がやって来ると同時に、もうじき春がやって来る嬉しい気持ちも覚えます。
 それにしても、今年のインフルエンザの猛威はまだまだ油断大敵ですね。

 さて、当院は今年度から看護学生さんの臨地実習を受け入れています。成人看護学や老年看護学の領域で、ケアにおけるリハビリテーションの視点やチームアプローチを共有し学ぶ機会となればと考えています。
 先日、実習を終了した部署の臨床指導者から、学生さんのパワーで「患者さんの生きる力が引き出された」という報告を受けました。よさこいを踊る学生さんの動きに合わせて”なる子”を鳴らし、腕や身体を動かし、注視することや参加することができるようになっていった患者さんの様子が目に浮かぶように語られました。まだまだ私達にも出来る看護があると刺激を受け嬉しそうに話していました。
 私達は、学生さんや教員の方々との関係の中で、自分達の「看護の価値」を意識し、新たな「看護の価値」に気づいていくという刺激をいただいていることを心から実感した出来事でした。

 1月末に開催された「新人看護師のナラティブ研修」で、4月に入職した看護師が看護実践とケアの葛藤を話す様子を見て、また嬉しくなりました。患者と向き合い、考え、工夫し、看護実践にチャレンジする語りは、正しく「看護の価値」を問うものでした。

 学生さんの実践や新人看護師の語りは、私たちの看護実践が患者さんや家族の笑顔や回復や幸せにつながっているか、考え続けることの大切さに気づかされた出来事でした。

 2月は様々の専門職の国家試験があります。皆さまの健闘を心から祈っています。

                          2019年2月
                          看護・介護部長 森河琴美

置かれた場所で咲く

 新年が明けました。
「平成最後の・・・」と言うフレーズがいろいろな場面で発せられるのを聞いて、約200年ぶりの「天皇の生前退位」を同じ時代で体感できる今年が、どれくらい特別な年であるかを実感しています。少しワクワクしています。                         

 さて、年末年始にかけて『置かれた場所で咲きなさい』渡部和子著を読み返しました。私は、転勤や異動になった友人知人に「環境が変わっても、あなたらしくいてほしい」と願い、好んでこの本を贈っていました。周りや環境のせいにするのではなく、置かれたその場所で自分は何をするのか。何をする存在となるのか、俯瞰して自分自身のことを考え行動するという解釈でいました。しかし、この度読み返してみると、置かれる場所を選んだ(同意した)という意思決定に対する自己責任についても考えさせられます。
 自分の役割や立場は、自分ではどうすることもできないことも少なくありません。運命のいたずらなのか、自分の意思とは関係なく決められてしまう。
 病気になったり、障害を持ったり、災害や事故に遭遇したり・・・ 自分の意思とは関係なく。それでも、一歩を歩むという覚悟、歩んで行こうと決めた自分。置かれた場所に甘んじることなく自分らしく生き、置かれる場所をも選ぼうとする前向きさ。人間の本質的な強さを感じとりました。
 果たして、自分はどうであろうか。
今春から「働き方改革」に関して具体的な活動が始まります。
自分はどう働き、どう生きるのか。自分の責任として考えてみようと思います。

インフルエンザが大流行です。どうぞ皆さまお気をつけ下さい。

                         2019年1月
                         看護・介護部長 森河 琴美

12月コラム


 本日の最高気温は10℃を越えるという、異常気象の冬です。灯油価格が高騰しているので嬉しくはありますが、スキー場経営の方々は大変だろうと一長一短の気持ちで師走がスタートしました。

 7月のコラムに書いた「ヘルシー・ワーク・プレイス(健康で安全な職場)」の続報です。国が検討している「働き方改革」の一項に、副業・兼業についての内容があります。個人のキャリアや能力を向上させる機会を組織も応援するしくみを検討するもので、当院でも本業に支障がない範囲で応援していくという指針を立てています。実際に、基礎教育の大学や施設から講師や臨床の実践を語るプレゼンターの依頼も来ており、ボランティアの延長で諸処の活動をしているスタッフも少なくありません。病院での経験だけでは得られない機会や学習は、スタッフ自身の能力の向上や見方の幅を広げることにもつながり、人生をより豊にしていくことを実感しています。

 一方で、夜勤を含めた交代シフト制をしている看護職や介護職にとって「本業に支障がない範囲で」副業を行うことが可能なのか検討する日々が続いていました。
勤務間インターバルを保つことや週1回以上の休日を確保するなど、承認する要件を整えることはできますが、そもそも、希望する休日を取得しやすいのか、ストレスチェックは活かされているのか、暴力やハラスメントに対応するしくみは機能しているのか、職場環境改善への課題はつきません。
また、組織として要件や職場環境を整備しても、スタッフ個々人の健康管理への自覚が欠けていては元も個もないため、スタッフ教育も課題です。

 個人がイキイキとしている職場は、いいサービスを提供しているといいます。職場の環境は組織幹部が作っているのではなく、構成しているスタッフひとり一人が作っています。皆にとって、働きやすい職場であるよう整えていくことは終わりなく続きます。

                         2018年12月
                         看護・介護部長 森河 琴美

ケアの実力


 手稲山に初冠雪の季節がやってきた。例年より半月も遅いそうだが、長雨続きで紅葉を楽しむ間もなかったため、“遅い”という実感はなく初冬を迎えている感じである。
 震災で住宅を失った方々が、雪になる前に仮設住宅に引っ越せることを切に願っています。

 先日、看護主任職の研修で、看護サービスについて考えるグループワークを行った。それぞれ所属している部署の、「いいケア」とは何かを考えるものであったが、事前課題で持ち寄った内容は、「いいケア」とは少し離れているような感覚を憶えた。主任さんは、病院や看護部が期待することと、現状を照らし合わせて、課題となることを真剣に考えているのだが、ケアの受け手から見た「いいケア」を考えられていないように感じたのだ。顧客視点の「いいケア」とは何か、顧客の視点に立ち返り考えることは、看護管理者の原点であるのだが、それに気づいてもらう教育も難しいと感じた研修であった。

 週間医学界新聞に連載されている「看護のアジェンダ」『第144回 本当の看護を求めて』で、井部さんは『臨床ナースの腕が落ちている。手遅れになる前に再考してほしい』と、訴えている。『効率性と安全性の過度な追求で、患者一人ひとりにきちんと向き合っていないのではないか』看護管理者の真の役割は、『看護サービスの質に注目し、患者の尊厳や安楽が脅かされていないかを腐心すること』であると、力強く述べている。

 先日、当院の2年目看護師によるケーススタディーの発表があった。その内容は、どの看護師も患者に真摯に向き合い自分のケア実践力を評価しているものであった。「患者にとって、自分はいいケアをしたのかどうか」という視点である。顧客視点からケアを評価することを、看護師が成長すると共に忘れてしまうのではなく、より強化できるように、私の役割も重いものであると知らされたように感じた。
回復期リハビリ病棟では、チームアプローチ方式で医療サービスが提供されるため、「ケアの実力」よりもチームの成果と評価されることが多い。その中で、日々患者や家族に向き合い、真の尊厳とは安楽とは何かを話し合い、試行錯誤でケア実践しているスタッフを頼もしく思い、支えていくことを大事にしていきたいと感じた。

                          2018年11月コラム  
                          看護・介護部長 森河琴美

震災への備え


 10月に入り、残暑を感じぬまま紅葉が始まりました。
9月の震災から1ヶ月が過ぎようとしていますが、余震も続き、台風が日本列島を縦断するなど、何とも落ち着かない日々を過ごしています。

 当院では、幸い地震の被害はほとんどありませんでしたが、予想もしなかった大規模停電と物流の停滞に対応を迫られる事態が生じ、外来や入院患者さん、地域の皆さまにご迷惑と心配をおかけすることになりました。病院の社会的な役割を考えると心苦しい限りでしたが、スタッフの頑張りと協力体制で病棟業務の継続体制を維持することができたことは幸いなことでした。

 このような被害が自分達の身に起こることは、私も想定していませんでした。東日本や熊本の大地震や津波、広島の豪雨災害など様々な自然災害が発生していても、どこか他人事のように感じている。
 それらの地域の病院が自分達の経験を語る研修会や雑誌の記事を読んでも、経験のない状況は想像も出来ないでいたのだと思います。改めて、先達の経験から学び備えることはとても重要なことであると認識するようになりました。
 11月には、済生会熊本病院の看護部長をお呼びし、「BCP(事業継続計画)について」学びます。私達が経験したことを整理し、次の災害に備える準備をする責任を噛みしめた1ヶ月でした。

強風で熟す前のぎんなんが歩道に散乱しています。
滑って転ばぬよう予断を許さない日々は続きます。

                          2018年10月
                          看護・介護部長 森河琴美

サポートすること 


 温暖化の影響か、台風がよく上陸しています。その度に風雨の被害や雷など、恐ろしい災害にならないかと心配です。先日は、札幌でも大きな雷により病院施設が一時的に停電になるという災害が起きました。人事ではなく恐々としながら防災の9月を迎えました。

 さて、医療法人渓仁会グループの看護部では、看護管理者をどのように育成していくかしくみを整えようとしています。渓仁会グループの看護管理者のあるべき姿を具現化し、看護管理者自身がそれぞれに自己成長を遂げるために活用できるような「看護管理者ラダー」を整備し、それを支える各種研修の内容を洗い出し準備し、少しずつ動き始めました。
看護管理者の教育は、日本看護協会でも「認定看護管理者研修」として、ファーストからサードまでの3段階の研修プログラムを持っています。しかし、受講定員の問題もあり、全ての看護管理者が受講できるわけではありません。また、受講したからといって、翌日から見違えるような望ましい管理行動がとれるものでもありません。
分かっていても実行する、やり遂げる難しさは常に伴っていくものです。
そんな時に、上司や同僚の役割がとても重要です。

 同僚との語りの中で、それぞれの経験したあるいはとった行動に、ヒントとなることを(他人の経験を自分に活かす)見出し自分に活用する。上司からの承認と様々な支援、大切にされているという感覚etc… やはり、看護管理も実践の中から不偏性を学んでいるのだと痛感します。そして、日々の承認。頑張っていない管理者はいないのです。それぞれに「どうしたらいいだろう」と悩みながら過ごしているように思います。1on1ミーティングの中で私も学びながら、成長を遂げようとするスタッフの前向きさに元気をもらっています。
サポートとは、「協力」「援助」「支援」「応援」すること。私が代わりになることではなく、自立(自律)した人に対し、つかず離れず伴走していくということ。
まさに、リハビリテーション看護に通じることだと感じます。教育もケアリングのひとつの形であることを実感するこの頃です。

秋祭りが目白押し。お天気に杞憂する日々が続きます・・・

                          2018年9月
                          看護・介護部長 森河琴美

ICFに思う「進化」


 連日、昼も夜も、暑い日が続きバテ気味ですね。
北海道はお盆を過ぎると急に季節は変わりますので、短い夏を元気に楽しみたいものですね。

 さて、今年度、スタッフの教育研修に、『ICFを学ぶ』をテーマにシリーズ研修を設けています。「ICFの概念を理解する」「ICFの実践例 -多職種との活用-」「ICFを活用したカンファレンス」など、教育研修室が企画・運営し、全メディカススタッフが参加しています。期せずして、回復期リハビリテーション病棟協会の研修会でも、今年度は「ICF」をキーワードに研修が練られています。

 皆さんは「ICF」をご存知でしょうか? 恥ずかしながら私は、回復期リハに関わるまでこの用語も概念も知らずにいました。
 疾病構造や社会の変化から、障害分類ではなく生活機能分類として、病因に起因する要素(医学モデル)と、「参加」や「生活」を重視する考え方(社会モデル)を統合するもので、国際分類として2001年から運用されたものです。新しい概念です。

 難しいコード分類など運用面においてはいくつか課題はありますが、「概念モデル図」は対象の現状理解、目標の設定、支援の方向を端的にわかりやすく想像できるものです。何より、多職種で情報や目標を共有できるという点では、チームアプローチでは運用しやすいものではないかと思っています。
 看護過程において看護診断を運用している現状では、「ICF」を活用するという二重構造になってしまうような複雑さを感じることも事実ですが、これも「進化の過程」と捉えて思案していきたいと思っています。

開院1年が過ぎ、ようやく訪問看護ステーションを開設することができました。
描く姿の実現に向けたひとまず一歩前進の「進歩」です。

                          2018年8月
                          看護・介護部長 森河琴美

ヘルシーワークプレイス(健康で安全な職場)


7月に入りましたが、今年はすっきりしないお天気が続き、蝦夷梅雨を通り越し、『完全な梅雨』を体感しています。北海道らしいさわやかな初夏が待ち遠しい・・・

 今年は「働き方改革」や「労働安全衛生」などが社会的に注目を浴びています。
日本看護協会でも『労働安全衛生ガイドライン』が整備され、医療従事者全てが健康で安全に働き続けられる職場づくり(ヘルシーワークプレイスを目指して)を、組織的にとり組んでいくようキャンペーン活動が予定されているようです。
期せずして、私もスタッフの働き方について考えさせられた出来事について今回は記します。

「職員の健康問題」。健康問題は、スタッフ当人の健康問題もあれば、スタッフの家族の健康問題もあります。
 看護師の永遠の課題の「腰痛」は、患者さんのトランスをサポートする機会が多い当院のような病院では、慢性的に持っているスタッフも多く、湿布を貼付したり、予防的にコルセットを着用し仕事をしているスタッフもいます。何かのきっかけで悪化し、長期の休みが必要になってしまうスタッフも少なくありません。
 また、定例の職員健診で、慢性疾患が発覚し、精密検査や長く治療を伴う状況になるスタッフもいます。
 更に、「スタッフの家族の健康問題」は、スタッフにとっても心理的にも社会的にも大きな問題となり得ることがあり、勤務上の配慮や働き方の工夫を要する状況も発生します。
 また、医師の長時間就労(当直)も早急に対応しなくてはならない問題と捉え、さまざまな工夫にとり組み始めています。

 健康に働くことは当たり前のことと、全く意識していなかった若い頃とは異なり、年齢を重ねて、身体は励まし労りながら大事に使っていかなくては「生涯を通じて働く」ことは叶わないと実感しています。職員衛生委員会等の活動を通じて、ヘルシーワークプレイスづくりに努力していきたいと感じました。

まずは、1日30分以上の運動を継続する手段を考える必要に迫れています。

                          2018年7月
                          看護・介護部長 森河琴美

2年目になります


 風薫る6月がスタートしました。
横串院長が今朝の新入職員辞令交付式で、「今日は、私たちにとってとても感慨深い日です。」と、1年前を思い起こし話されていました。
「あぁそうだ、今日から2年目だ」とハッとし、後ろを振り返ることなく前だけ向いて歩いてきた日々が一瞬思い出されました。ゼロからスタートし、沢山のスタッフがそれぞれに尽力し、結果(成果)が伴ってきたこの頃の様子に、成長を実感しています。

 スポーツ選手には、〝2年目のジンクス“というものがあるそうです。
1年目に活躍した選手が、2年目になって油断し精進しなかったり、ライバルに手の内を見破られたりするためのようで、その後、再起奮闘するまでに倍以上の時間を要してしまう事態に陥ってしまうと言われています。
なるほど・・・ 教訓が込められているように感じます。

 また、最近のニュースを賑わせている官庁や大学組織の問題。
誰かの権威や保身のために、組織の正義や倫理観が崩壊していく。小さな修正や改善では追いつかず「組織を一掃」しなくてはならない事態に発展してしまう。そこで働く職員さえも仕事のやりがいやプライドを持つこともできなくなってしまう。
なるほど・・・ この出来事にも教訓が一杯です。

 当院の理念「親切 信頼 進取」に立ち返り、自分たちがどういうチームを作り、どういう医療を提供していくのか。チームの一員として自分は誠意をもって取り組んでいるのか。やはり自分を顧みる謙虚な姿勢を持ち続けることが大事だと感じました。

「僕の前に道はない。僕の後ろに道はできる」高村光太郎の『道程』を、横串院長は新入職員に語ります。より謙虚な気持ちを持って、急ぐことなく確実な道をつくっていきたいと思います。
2年目もよろしくお願いします

                          2018年6月 
                          看護・介護部長 森河琴美

社会人教育(アダルトラーニング)に思う


 最近の季節の移ろいは「急ぎ足」が多く、桜以外にも一気に花が咲き始め、追い立てられるような一層の気ぜわしさを感じています。先日の「昭和の日」に、50年間文通を続けている友人同士の話がTVで出ていて、時代の進化が気ぜわしさを助長している今をあらためて実感しました。せめて、季節の変化だけでもゆっくりと堪能したいものです。

 新年度になり「社会人教育」について考える機会が多くあります。大きく世代の違う新卒のスタッフ、今年度運営する数々の院内研修、地域の方々に向けた研修など、どのような内容(目標)をどのような方法で伝えていくのかということです。

 学校教育は、「いつか役に立つだろうことを学ぶこと」が目的で、職場教育は、「今やっている仕事に役立つことをタイムリーに学ぶ」ことが求められます。
 従って、真に意味のある社会人教育は、①相手の経験を活かしている ②学ぶ必要性があるという実利的なもの ③実践的な話し合いの過程を踏んでいる
が、重要であると言われている。
 研修をすることが大事なのではなく、役に立つ研修(教育機会)が設定され、学習方略が練られていることが大事なのです。これを『インストラクショナルデザイン』と言うそうです。研修受講生と所属組織のニーズを満たすためにシステム的なアプローチに関する方法論で、研修の効果と効率と魅力を高めることです。

 研修講義を終えた後、この研修はスタッフの何に役立ったのか?実際どのような行動がとれるようになったのか?業績貢献にいたったのか? 知識、スキル、パフォーマンス、マインドアップにつながったのか?
 教育効果は、すぐに行動変化に現れることもあれば、時間が経って出るものもあります。少なくとも、「学ぶって大事だ! 考えることが楽しい!」と思えるような、受講生の興味やニーズに合った教育戦略を立てることが求められていると改めて考えさせられます。
 研修デザインを描くために、このゴールデンウィークは費やされそうです。

                          2018年5月
                          看護・介護部長 森河琴美

2018年度 スタート!


 急ぎ足で冬が去り、春がやってきました。
3月に東京出張があり満開の桜を見たせいか、気持ちだけは春を先取った気ぜわしさを感じていましたが、一気に雪解けが進んだ景色にはビックリしました。

 さて、2018年度がスタートしました。
 当院では、57名の新入職員(新卒者27名・既卒者30名)が入職し、3日間のオリエンテーションが始まりました。院長講話から始まり、リハビリテーション病院に勤務するスタッフとして必要なスキルを理解するために必要な研修が厳選されて行われます。

 その中で、私が担当したのは『病院理念を実現するために、私たちがすること』と題した、グループワーキングによるチーム形成の擬体験です。この研修は、昨年のオープニングスタッフにも行った研修で、「病院理念」を解釈し自分の言葉で平易に説明することと、知らない者同士がチームを形成するために大事なことは何かを学ぶ研修でした。最終的に成果物を発表し合った時には、札幌の一番、北海道の一番、日本の一番を目指す頼もしい集団になったことを今でも鮮明に覚えています。

 今年の新入職員は少々異なり、1番を目指すことも大事だが、まずは「目の前の患者さんをハッピーにする」そして、「地域にとって大事な病院として必要とされる」。
 そのために「自分を磨く」ことが大事だと多くのグループが発表していました。地に足のついた堅実なスタッフが集まったのでしょうか。

彼らがチームの一員となって、イキイキとする姿が待ち焦がれました。

                          2018年4月 
                          看護・介護部長 森河琴美

さよなら3月 すぐ来る4月


 日の長さに春を感じていましたが、なごり雪とは程遠い荒れ模様で3月がスタートしました。先週までのピョンチャンオリンピックの熱気がすでに懐かしく感じるほど、気ぜわしい年度末を過ごしています。話題の
『そだね-』、意識すると日常的に使っていますね。

 さて、今回は「見える化」について。
この時期は、運営会議等で病院の評価や目標を整理する機会も多く、【KGI 重要目標達成指標】や【KPI 重要業務評価指標】を考えています。
何を目標として何を成果とするのか、私たちの医療の見える化が求められます。

 リハ部ではセラピストスタッフの方々が、2月から症例検討報告会を開始しています。担当した患者の評価(成果)とリハの評価を先行研究や文献を使用し客観的に行い、知識と経験を共有しています。

 では、ケアの評価はどうかと言えば少し立ち遅れているように感じています。
ケアの質を3つの視点で考える。
ケアを提供する際の「構造」は整備されているか? ケアを提供する「過程(プロセス)」は整備されているか? 何をケアの「結果」として考えるか? 
まだまだ整備していない現状に詰まる思いです。
日本看護協会のDiNQL事業では、「構造」「過程」「結果」を整えるための指標を示しベンチマークし、現状の位置や整い具合を評価することができます。まずは、その指標を参考にしながら、ケア提供体制「ケアの見える化」の整備を進めようと決意しました。

                          2018年3月 
                          看護・介護部長 森河琴美

リハビリテーションと栄養


 2月に入りましたが、全国的に記録的な大寒波で、氷点下10度を下回る日が続いています。『「節分」を過ぎると春がやってくる』と言いますが、まだまだ、ほど遠く感じています。

 1月22日発行の「週間医療界新聞」のトップ記事は、『リハビリテーションと栄養』というテーマで、医原性サルコペニアを起こさないために看護師はどうとり組むか?という内容です。
「とりあえず安静」「とりあえず禁食」よかれと思って行った医療行為がサルコペニアを意図せず引き起こし、結果的に患者の低栄養や低活動を生み、ADLやQOLを低下させているといいます。
 記事では、回復期リハ病院でも生じると警鐘を鳴らしています。
 実際、不顕性誤嚥による発熱がおこった場合、禁食指示と高カロリー輸液を行い数日経過観察することは少なくありません。発熱が落ち着き、摂食嚥下機能評価のVF(嚥下造影検査)やVE(嚥下内視鏡検査)を行い、治療方針やスケジュールをチームで共有するまで数日を要します。その間、患者の低活動状況は進行し、元々フレイルの状態の患者であれば、椅子に座っていることも出来ないほど体力が落ちてしまい、自宅への退院が遠のいてしまいます。「〇〇したい」という意欲さえ無くなってしまいます。
  低栄養→活動量の低下→筋肉量・活動性の低下→基礎体力・基礎代謝の低下→ADLの低下→意欲・気力の低下→「食べよう」「頑張ろう」に向き合えない→低栄養の悪化
 この負のスパイラルのどこに手を入れると改善されるかというと、「低栄養」の改善が最善の近道のようです。

 「低栄養の改善」にチームとして、看護師としてどう認識し、具体的に何を行うか。
 栄養士や言語聴覚士任せではなく、3食の摂取量や咀嚼や嚥下の状況、副食の状況、カロリー換算、体重、下腿周囲長、元気、活動量など、観察すべきこと総合的に判断すべきことは沢山あります。その上で、患者の良くなりたい・改善したいという意欲につながるような食事内容や種類、形態、身体環境を整えていくことを意識してとり組む。まさにチーム皆が「低栄養撲滅!」の意識としくみで関わっていくことが重要だということです。

 栄養アセスメントから始まる「攻めのリハ」新たな視点の課題に気づかされた記事でした。

                 2018年2月   
                        看護・介護部長 森河琴美

平成30年 あけましておめでとうございます


 本年もよろしくお願いいたします。
当院では、年末年始も変わらずリハビリを行っている方々のいつもの風景が繰り広げられていました。
そんな中、退院した方々はどのように過ごされているだろうと思いを巡らせました。冬の外出という難題を乗りこえ、自主トレーニングを行っているだろうか。自分らしく過ごしているだろうかと・・・。冬半ばにして春が待ち遠しく感じられます。

 お正月休みに、「君たちはどう生きるか」という昨年の話題の本を読みました。『戦後に書かれた本が、何故今、人々の心を打つのか!』という宣伝文句で、興味は惹かれていたのですが、重い題名に少々敬遠していました。主人公のコペル君の日常の出来事と様々な葛藤が、叔父さんとのやりとりで意味づけされていきます。その中に、「僕たちは、自分で自分を決定する力を持っている」良くも悪くも自分の意思なのだという言葉があり、心を動かされました。周りの環境や誰かのせいで今があるのではなく、「自分の意志と責任」で今があるということなのです。
 次年度の教育計画や研修計画を検討している中で、「教えすぎて、自分で考えられなくなっている」とアドバイザーの方から意見をいただきました。理解してもらおう、成長してもらおう、わかってもらおうとするあまり、過剰な支援になっていないだろうかと思い知らされていました。
 経験と気づきの中から学ぶという機会やタイミングは重要ですが、与えるものが過剰である必要はない。私たちは自立した人間で、成長するかしないかは「自分の意志と責任」であるということを、この本からも気づかされました。

 では、どの程度与えることが最適なのか。
正解はないことでしょうが、与える相手に合わせて個々の状況を見極めて機会を作っていくことが大事なのだろうと思います。何を考えているのか。この場にどのような気持ちでいるのか。何を望んでいるのか。話しをしながら双方が理解し合うことで最適をとらえていくことが大事なように思います。

コペル君も葛藤の中で、いい頃合いで叔父さんというメンターから支援を受けています。患者さんにとって私たちが時にメンターとなり、患者さん自身が歩んでいくことを支える。スタッフにとって、私も時にメンターとなり成長の歩みを支える。
そんなことを思った新年です。

2018年1月 
看護・介護部長 森河琴美

ハイテクとローテク

雪の少ない札幌の12月がスタートしました。
師走と言うだけあって、一気に気ぜわしさが増すように感じますが、クリスマスを祝う飾りが病棟に施されると、華やいだウキウキした感じになるのもこの時期ならではですね。

先日、北海道回復期リハビリテーション病院協会の研修会が行われました。全道から200名を超える参加者が集まり、これからの病棟機能のあり方やそれぞれの病院や地域の取り組みが発表されました。

その中で、『医療用ロボットをどう使いこなすか』のテーマで、どのように活用しているのか・その成果について発表がありました。当院でも、磁気刺激を脳に与え脳が働きやすくするもの、電気刺激を筋肉に伝え活動しやすくするもの、動かそうとする動きを検知し屈曲や伸展をサポートするもの等、さまざまなハイテク機器が使用されています。モーションピクチャーの動作解析によって姿勢や関節可動の状況が一目瞭然で評価ができる。すごい技術だと感心させられます。
研修会の発表でもありましたが、医療用ロボットはセラピストの施術や訓練を超えるものではない。併用し活用することで成果が高まるということでした。医療ロボットにより動きやすくするという地ならしを行い、そこに有効なセラピストの技術が加わることで強化されるということです。有能はセラピストの技術に勝るものはないということのようです。

 果たして看護はどうでしょう。看護のハイテク技術とは何でしょうか。
看護の進化は、対象理解の深さと確かな安心感を与える細やかな技術の進化であると思います。「何故この患者はリハに向き合えないのか」「この患者の家族は、何故患者の意思決定を否定するのか」。
さまざまな状況にある患者や家族に向き合い、話を聴き、理論を用いながらアセスメントし最善のケアを考えていく。そして、温かな手を使って確かな技術(ケア)を行っていく。決して派手ではなりませんが重要な技術です。

退院支援研修の事例に真剣にとり組んでいる看護師達の姿と、動作解析を行っているセラピスト。手段は違っても患者に良くなってほしい、幸せになってほしいという情熱は同じです。
人との相互関係の中で生まれる医療サービスは、ローテクを基盤にしているものですが、ハイテクも仲間に加え、更なる質の高いサービスに進化させていくことが求められていると感じました。
                          2017年12月
                          看護・介護部長 森河琴美

患者・家族の痒いところ


 紅葉の最後を飾る“イチョウ”の葉が落ち始め、いよいよ冬の準備が始まります。気温や天気の変動が激しいせいか、咳や鼻水のスタッフが増えはじめ、いろいろ気になる季節に入ったことを実感しています。

 先日、スタッフが「退院支援がうまく進まない」と話しているのを聞き、そのような患者・家族が少なくない状況にあることを知りました。
似たようなことを看護師の友人も話していました。その友人の義父が入院し、介護や見守りが必要な状況になり得そうだと友人は思っていたのですが、「退院に際しての私の気がかりが中々わかってもらえなかった」と話していました。「患者側に立って初めて、看護師が『患者が知りたいだろう』と思っていることと『患者が知りたいこと』に、こんなに差があることに気づいた」と。
医療者側の思いと患者側の思いの違いは、あって当たり前。その溝を埋める、あるいは溝に橋を架けるために努力をしていますが、それでも理解し合えない状況は双方にとって達成感や到達感が持てない残念な状況だと感じます。

「退院支援について」の第一人者 宇都宮宏子さんは、「退院支援は意思決定支援です。患者・家族が『どうなりたいか・どうしたいか』という意志を持てるように、関わる必要がある」と述べています。スタッフは、それを頭では理解していますが、実践の場で”関わる”ことができていないという状況なのでしょう。
意思決定のために、丁寧に説明や情報提供をするだけではなく、相手の生活や価値観も理解した上で、提案していく。“関わる”ことが、患者や家族の痒いところに手が届いていないために、相互理解の上で進んでいかないということなのです。

当院のスタッフは、患者の家屋調査によく出かけていきます。
患者の戻るところ、生活をするところを見ることで初めて、患者の痒いところや患者も気づかなかった痒いところに気づくことができる大事な機会です。

患者・家族の気持ちに近づく。患者・家族もチームの一員として自分のことを言葉にしていく。言葉で表現できるように関わることが一歩だと感じています。

                          2017年11月  
                          看護・介護部長 森河琴美

リーダー奮闘


今年は、夏も早かったのですが、秋はさらに早そうですね。
山の方では、すでに初雪の便りも聞かれ、紅葉も急ぎ足です。

全病棟が稼動し初めて1ヶ月が経ち、入院退院に追われる毎日が加速しています。
そんな中、今日はリーダーの奮闘について記します。

私たちスタッフは、いろいろな病院や施設から集まった集団で、ほとんどのスタッフが初めて、志を同じくして働いています。そんな中、私を含め役割としてリーダーを担う者は、知らない者同士の人間関係から、組織としての方向性を示し、活動へ導くという役割を担います。これが、なかなか大変です。

一般にマネージャーの役割モデルは、「対人的役割」「情緒的役割」「意思決定の役割」があると言われ、スキルとして「対人スキル」「ビジネススキル」「認知的スキル」「戦略スキル」が必要と言われています。
スタッフが「困っている」ことを「困っている事態」と認識し、どのように解決していくかという「戦略を」練り「意思決定」を行い、集団を「情緒的にサポート」していく。そのようなことがサラッとできるリーダーがいるでしょうか?
どのリーダーも、サラッとなんて出来るわけもなく、毎日奮闘しているのです。

医療はさまざまな患者・家族とスタッフとの相互関係で繰り広げられています。
1日として同じ日はありません。
毎日の変動の中で、役割と責任と果たしていきます。
サラッとは出来ないけれど、経験の中で学習し、毎日の教訓を積むことはできます。
今日の経験から学んだ教訓は、明日繰り返さない。明日は繰り返すかもしれないけれど、その次の日は繰り返さない。そんな積み重ねでリーダーは成長していくものと感じています。前線でケアを行っているスタッフの奮闘に応えるためにも成長を誓いたいものです。

「大半の人が喜んでついていく」信頼のおけるリーダーへの修行は、今日も続きます。
                        2017年10月    
                        看護・介護部部長 森河琴美

レジリエンス

9月に入り、一気に空気感が変わりました。街路樹も競り合うように葉を落とし始め、早くも秋を実感し淋しい気持ちになります。一方で実り豊かな収穫の秋を楽しみに感じるという移り気な気持ちが生じるのも秋ならではですね。
病院では、3ヶ月間でおよそ80名近くの患者さんが、一様に嬉しさをにじませて在宅へ戻って行かれています。そんな方々の毎日を見ていてレジリエンスという言葉が浮かびます。

 レジリエンスとは『立ち直る力』と言われています。障害や疾病とつきあいつつ自分のリカバリーをめざす人には、絶えずこの回復力が必要になります。回復力が強い人や弱い人はいても、『立ち直る力』を持たない人はいないと言われています。
自分の可能性を再び信じられるように支援していくことが、リハビリテーションそのものです。タイミングを推しはかり、関わり方を工夫しながら相手の『立ち直る力』を引き出すために、私たちの存在があると言えます。
「庭の手入れは私の大事な役割」「お弁当をつくるのは私しかいない」「皆が仕事に行った後、留守を守るのが私の仕事」「おばあちゃんがいるだけで賑やかになる」生活の中での具体的な役割を引き出すことが立ち直る希望につながり、そのために今日一日をどう過ごすのか、患者自身が自分の課題としてリハ・ケアに取り組んでいくことが大事だと言えます。

そう考えると、私たちがじっくり考えて立案している看護問題は、患者の「立ち直る力」に着目した患者自身の課題になっているだろうか?
転倒・転落による合併症の発症を予防するため「転倒・転落のリスク状態」という看護計画が立つことがあります。これは、はたして患者自身の課題であろうか考えさせられます。「転びそうでおっかなかった」「ベッドから落ちてしまうのは2度と嫌だ」と患者自身が自覚していることだろうか。患者参画と言われている中で、「こうなりたい」「こうならないようにしたい」を患者と医療スタッフ双方が理解し合い、自分の課題として今日を過ごすことの大切さに改めて気づかされます。

5階病棟がオープンします。新たなチャレンジがまた始まります。

2017年9月
看護・介護部長 森河琴美

盛夏

 開院して丸2ヶ月。
もう2ヶ月? まだ2ヶ月?
日々その時の状況と心持ちによって変わるものです。
心の持ち方で見方が変わるということは、まだまだ未熟(修行の身)であることを実感します。

 さて、新人スタッフについて。
当院には新人看護師9名と新人のセラピスト13名、合計22名の新人スタッフが入職しました。
4月からそれぞれの専門分野での基礎的な技術教育を受け、6月からチームスタッフのひとりとして、病棟に配属され患者を担当し始めています。この頃は、”The 新人”のオーラは消え、一生懸命に自分のできる限りで対応しようと必死になっている様子が覗えます。
患者を全人的にどう捉えるのか 入院生活すべてがリハになるようにするケアとはどのようにするのか そもそも技術的に上手く対応できるようになれるのか(なりたい!)等々、すべてが新しくスタートした病院・組織の中で、頑張っている新人と支えようとしている教育担当者それぞれの頑張りが、日々垣間見えます。

専門職の新人は、社会に出て3ヶ月頃に自分のアイデンティティーに自問自答し悩む時期が来るといいます。当院では8月がその月にあたるでしょうか。
かつて私も新人時代に、先輩看護師(当時はものすごく怖かった)に指摘され怒られないようにするために観察や記録をしていました。真に「患者のため」ではなかったのです。その時「自分は何をする者か」「誰のために」を自問し、「患者のため」の観察や記録やケアをしようと気づきました。丁度入職して3か月を過ぎたころでしょうか。
成功も失敗も次の糧にして、「自分は何者なのか」という答えを自分で見つけ出し、自分で立てるように(自立と自律)見守り、支えていくことが先輩の役割だと実感しています。

 5階病棟の9月オープンに向けた準備が始まりました。気ぜわしい毎日は今しばらく続きそうです。

                         2017年8月
                         看護・介護部長 森河 琴美

日常


蝦夷梅雨が長引き、青空が望めないどんよりとした日が続きながら7月を迎えました。今年の夏は暑いらしいですが、まずは夏らしい太陽と青空が待ち遠しく感じます。

病院のオープンから1ヶ月が過ぎ、外来も病棟も患者さんやご家族の出入りが始まり、病院らしい日常が展開されています。始まってみて気付くことも多く、分からないことや右往左往しながらの毎日は続いています。
「朝のミーティングの使い方はこうした方がいい」「総合評価の際はどんなふうに立ち会ったらいいのか」「初めて失敗なくあの浴槽を使えて嬉しい」「ケアカンファレンスの準備と終了までのイメージは…」まずは、自信をもって患者ケアを行えるように相談し協議し決めていく、そして習熟していく過程を積んでいる毎日です。患者の課題に向き合うために、スタッフひとりひとりが自分の課題を克服し、習熟していく日々を過ごしています。

『マネジメントの探求』(井部俊子)の中で、「先が見えないような霧の中で前に進むときは、あまり遠くを見ずに足元を見て歩くこと、つまり今、自分の前にある日常を引き受けていくことが大切であり、自然に霧は晴れていくものである」という一節があります。
この中で、『日常を引き受けていく』という言葉に心が揺さぶられます。
誰かの何かの責任ではなく、自分の責任として日常の毎日を紡いでいく。そんなふうに自分自身が引き受けて努力していくことを考えさせられます。

退院の時に、「うちへ帰ってもリハビリ頑張るよ!」と、うれし涙で帰って行った患者さんから元気をもらいながら、また、今日も日常を紡いでいきます。

                          2017年7月
                          看護・介護部長 森河琴美

発進

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6月です。雨上がりに藤の花のいい匂いがしています。
新病院は昨日開院いたしました。
これまでの様々な準備を思うと感慨深いものがありますが、午前中から転院患者さんやご家族の方が到着し、今までの院内の雰囲気と一変しました。
朝礼の場で、横串院長は今までの準備の苦労をねぎらうと共に「この建物に血を通わせていきましょう」と語りました。初日はまさに「血が通い始めた」と実感した1日でした。

5月の研修期間中、沢山の関連する病院の方々にご講演をしていただきました。
『急性期病院の脳梗塞治療最前線』『リハ・ケアの有機的なチームアプローチ』『これからのリハビリテーション医療・リハ・ケアに期待されるもの』など、実践と実績を重ねた方々の重い言葉は大いに励みとなりました。スタッフそれぞれが、それぞれの経験に重ね合わせ”するべきこと”を見いだすきっかけになったのではないかと思っています。

私たちのチームが一丸となっていく過程は容易いものではありません。真に機能するチームになるために、1+1=2ではなく1+1=∞であるように、それぞれのスタッフが自覚しなくてはなりません。「誰かではなく、自分が」新しいチームや新しい価値の面白さに柔軟になり、新しい自分に生まれ変わる面白さに向き合っていくことの大切さを実感しています。
 『ジョハリの窓』人と人との関係の中で、声をかけてもらえる自分・理解してもらえる自分になるため、わがままの主張ではなく相互理解をベースにした自己開示の大切さ。新しい病院の発進は、スタッフが新しい自分に生まれ変わる痛みを伴う過程に感じる初日でした。

沢山の方々の応援を力に変えていきます。応援よろしくお願いします。

6月1日 
看護・介護部長 森河琴美

アイドリング ―新しい組織づくり②―

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ライラックのいい香りがします。今年の札幌はすでに初夏の陽気で、高揚した気持ちになります。
新病院は始動し、出発に向けたアイドリングの時期を過ごしています。
5月13日に開催した病院内覧会は、地域の方々やお世話になっている沢山の方々にお越しいただきました。病院施設・設備が私たちの行おうとしている医療・リハ・ケアが”形”になっているとお褒めの言葉もいただき、嬉しいと同時に期待に応えていくことの責任も実感した機会でした。

さて、学習や研修を積んでいる私たちスタッフ。
知識の確認のため「テスト」も行いますが、先日行った「機能的自立度評価法」のおさらいテストでは、自分自身のあまりにひどい出来映えに先が暗くなりました。研修会場のざわめきからも、そう思ったのは私だけではなく安心しましたが、これからの不安も感じた機会でした。初めて評価法を学んだスタッフや、何度も行っていたが改めてペーパーペイシェント事例で考えると認識が違っていた等、スタッフのレディネスの違いはあることを前提に専門職として精度をあげることの重要性を考えさせられました。
新たな文化をつくるための「学習」の過程と、新たな方法を組織に根付かせていく「再凍結」の過程。残り2週間足らずでどこまでできるだろうと不安に思う反面、まだ2週間も時間があるとポジティブに思う自分と。揺れ動く毎日です。

先ほどのテストを行った場で、ぼやいている私に近くにいた新人のリハスタッフが「私も一緒です。成長の伸びしろがあるってことですね(ニコッ)」と言ってくれました。
私の『こころの中の幸せのバケツ』が満たされた瞬間でした。
これからも、素晴らしいスタッフと共に発進に向けて準備を進めていきます。

                         5月18日
                         看護・介護部長 森河琴美

始動 ―新しい組織づくり①―

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季節の移ろいは、本当に早いものです。
特に北海道の春は、桜をはじめ木々や草花が一斉に咲き始めるため、背中をグイグイと押される感じがしています。 

5月になりました。
今月からオープニングスタッフ163名との新たな組織づくりが始まります。
オープンまでの1か月をどのように過ごすのか、各種研修や演習や講演会、業務シミュレーションなど様々なことを想定し、準備をしてきました。が、充分ということは決してありません。これからは、準備室スタッフ+新たなスタッフと共に準備を積み重ねていきます。

まずは安全。
新しい機器・器具・機械を作動させ、安全に取り扱い、手技を習熟していく。
それぞれのスタッフが今まで使用し慣れていたものとは、少しずつ違うものが沢山あります。スタッフコールモニターでさえ、私が全盛期のスタッフとして動いていた時のそれとは全く異なります。デジタルの体重計でさえ、(?)と操作に戸惑ってしまいます。
それら全てのものを使い、安全に作動・操作することができるまで、慣れていかなくてはいけません。
 また、安全の大切な要素に『コミュニケーション』があります。
「これどうやって使うの?」「これ変な音がしていない?」「ちょっと聞いていい?」「困っているんだけど相談に乗って」「大丈夫?」etc…
 互いに心に思ったこと、浮かんだことが、遠慮なく声に出せて聞き合える、言い合える、意見し合える、褒め合える、励まし合える、心配し合える、勇気づけ合える、頑張り合える。
そんな、仲間づくりが「新しい組織づくり」の第1歩であるように思います。

                          2017年5月
                          看護・介護部長 森河琴美

バトンタッチ!

baton
4月です。いよいよ4月になりました。
別れの3月と出会いの4月。今月は『バトンタッチ』についてのお話です。

先日、医療法人渓仁会グループの統括看護部長をされていた樋口春美さんがご退任されました。樋口さんは、新病院プロジェクトのスタートから携わった方で、「これから必要とされる機能が濃縮された、楽しみなプロジェクトだね」と、ずっと応援して頂いていました。その樋口さんからバトンを受け取り、まさに全速力で走行中です。

また、3月の末、病院受け渡し前の点検検査に立ち会いました。
床や壁、棚やコンセント・スイッチの作動を確認し、修繕を依頼します。全体像が見え、図面では感じられなかった良さや素晴らしさもあれば、一方でイメージとは異なっていたことも明らかになりました。間もなく建物引き渡しのバトンを受け取ることになります。

この時期、看護大学や専門学校の会議等があり、教員の方々と話す機会が増える時期です。新病院が基礎教育で協力できることや、これからの在宅・療養支援のモデルになれるようになるための展望に話の花が咲きます。
新病院でも新人看護師が入職し今月から教育研修が始まります。基礎から継続教育へのバトンを引き受けることになります。

4月に入り、沢山の病院備品や機器がぞくぞく搬入されてきます。広いと感じたスペースもあっという間に狭さを感じるようになるのでしょう。
1Fの吹き抜けラウンジの解放感。そこに置かれるソファーや椅子やテーブル。
2Fの素晴らしいリハ・フロアー。そこに設置される最新のリハ機器達。
メーカーから私達へバトンが渡されます。

さて、沢山のバトンを渡されることになる私達は、次に誰にバトンを渡すことになるのか。そのままゴールを遂げることになるのか。

過去から今へ、これから未来へ
心躍る春がやってきます。
                                 2017年4月
                                  森河琴美

サブ・サービスと価値

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3月です。近頃の日差しの暖かさは、真冬に感じるそれとは異なる体感ですね。今月で2016年度が終わると思うと、年末に感じる気ぜわしさと同じソワソワ感を感じています。

先日、1F吹き抜けラウンジや待合のテーブルや椅子やソファーを選びました。外来に来られた方、付き添われてきた方、地域の方などが、どのような思いで病院に来られて椅子に座るのか。座り心地が良すぎても悪すぎてもダメ、多様な色の好みの中で何色を選択したらよいのか。悩みは尽きませんでした。そして、沢山の方の助言と応援とご意見を頂きながら、何度も何度も迷いを言葉にし、選ぶことができました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

別なお話ですが、今、4月と5月の研修スケジュールを検討しています。その時に準備室スタッフの中で、「患者対応について、接遇というか話し方とか、何を大事にするかという話をする機会があっても良いのではないか」と意見が出ました。その通りだと感じました。新病院のスタッフは、患者さんや家族、地域住民、職員同士、どのような関係性を築き、どのように対応する集団なのか。「おじいちゃん」「おばあちゃん」ではなく、「○○さん」と声をかける。スタッフのひとりの価値に左右されない対応と接遇はどうあるべきか。

この2つの出来事から、サブ・サービスの価値について考えさせられました。
私達のコア・サービスは、『安心・安全の医療サービス ―質の高い医師の診療と治療とリハビリテーション―』です。
このコア・サービスを助けるのが、『サブ・サービス』です。病院での看護・介護のケア、ラウンジの椅子やソファー、職員スタッフの接遇もサブ・サービスにあたります。
利用者や患者さんに心地よさを与え、元気を与え、癒しを与え、希望や目標を持つ勇気を与える。そして、そのことに私達自身も喜びを感じる。
サブ・サービスひとつの価値を大事に思える集団。ひとりひとりの喜びを大事に「人を信じて頼る」集団となるよう、皆さまに伝えて一緒に考えていきたいと思いました。

いよいよ開院までのカウントダウンが始まります。
                                 2017年3月
                                  森河琴美

再び「チームアプローチ」への道

mame

札幌のこの冬は、異常気象を実感するほど、本当に寒くて雪も深く、準備室の窓から見える景色は春がまだ遠~いと実感します。しかし、新病院の開院までのカウントダウンがいよいよ片手でできるようになり、寒いなどと呑気に言っていられません!

 近頃は、細かな業務フローを検討する場が増え、リハビリスタッフ+医師+看護とか、看護+事務とか、MSW+事務+看護など、大小様々な話し合いの場が増えています。それぞれの業務をしくみが繋いでいく、どのようにすると効率的で効果的なのか。今までの経験で難儀していたところをどのように改善し、新病院らしく機動性を高めるのか・・・話し合いの視点も議題も尽きません。

 そこで、今回も再びチームアプローチの話です。
井部俊子さんが「看護のアジェンダ」の『先生がひしめく病院社会』の中でこのようなことを書いています。「本当のチーム医療とは、『専門的な知識や技術を有する複数の医療従事者同志が、対等な立場にあるという認識を持った上で実現される協働的な行為』である」と。この項の主旨は「先生」と呼び合うことで対等性を失わせているのは看護師ではないかと投げかけています。
 準備室が稼働した当初から、「新病院では『先生』と呼び合わないようにしたい」と、医師から申し出があり、チーム医療における職種間の対等性を大事にしたいと言われています。「○○先生」という呼び方が、まるで氏と名のようにワンパッケージで反射的に呼んでいた私にとって、未だに○○さんと呼ぶことに抵抗があり呼べていません。

 その私が、「対等な立場にある認識の上」で、話し合いを進めているか自分に問うてみると、役職(役割)としての自分の立場や、進行をスムーズに進める上での強引なまとめ方など反省することしきりです。
 私も、○○副部長と呼ばれながら仕事をしています。呼名を変えることで対等性が増すものなのか? ”人間と人間” という存在の対等性と、仕事上の対等性には違いがあって当然ではないか?
 新しいものを創造していく立場にあって、未だ、頭の固い自分を自覚しているこの頃です。

                                 2017年2月
                                 森河 琴美

新年もよろしく

kagamimochi
あわただしい師走が過ぎ、新年を迎えました。
皆さんは、穏やかなお正月を過ごされましたか?
私は、毎年の神社参拝で新病院の無事を祈念しました。おみくじには「新事は精進により叶う」とありました。精を尽くすことは何においても大事な事のようです。

さて、新病院準備は年が明けて加速度的に進むことでしょうが、先日2つの大きなことを決定しました。
1つ目は『NANDA-1看護診断』を看護過程に使用するということです。
チームアプローチを展開する際に、「看護師が使用している看護問題解決の表現や過程がよくわからない」という事を他職種からよく耳にします。看護師はどこまで看護実践の独自性を大事にするべきなのか、とても悩みました。
結論から言うと、看護師の独自性は、統合的で全人的なケア実践であるため、そのプロセスは、他職種に理解してもらうためのものではなく、看護師にわかりやすいものではならないと考えました。そのため、電子カルテ導入後一般的に活用されているNANDA-1看護診断を活用することがよいと考えました。対象理解の理論には、ヘンダーソンやオレムの看護理論を活用し、看護実践にはNANDA-1看護診断を使用することになります。

2つ目は『ユニフォーム』の決定です。
ユニフォームは、全職種が皆同じ種類のものを着用します。従ってワンピースはありません。(ワンピース ファンの方は、諦めて下さいね)
スタッフ全員がケア提供者となって、利用者や患者さんの要望に耳を傾け、心に寄り添う病院にするために、プロジェクトチームが何度も集まって考えたものです。
なかなかいいですよ。
4月入職の新人看護師さんから着用していくことになります。楽しみですね。

気のせいか、日が長くなってきているように感じます。
楽しみな春が迎えられるように、粛々と準備をしてまいります。
皆さまもお元気でいて下さい。

                              2017年1月4日
                                森河 琴美

師走に思う

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今年は、本当に冬が早かったですね。
凍えるような日もあり、大通のホワイトイルミネーションもすっかり風景に溶け込み、様になっていますね。

先日、新病院建設現場に伺い、先行モデルルームを拝見してきました。
フロアの一角に病室を創り、壁紙・窓・照明・ベッド・床頭台・トイレ・洗面台・コンソール機能etcの、高さや幅、使い勝手を検証してきました。
全てカスタマイズで整えていきます。「あと3cm下で、右寄り」とか「こっちは右開けではなく、左開けで」とか、細かな修正をかけていきます。その場に参加された担当業者の方は総勢26名です。皆、使う人の気持ちや患者さんの気持ちになって、真剣に取り組んでおられました。その日の札幌の最高気温は2℃。打ちっぱなしのコンクリートから寒さが足元から上がってくる感じで、1時間程度の検証ですっかりカチンコチンになっていました。その中で毎日作業している方に、本当に頭が下がる思いでした。

現場の皆さんも仕事です。私も仕事です。
ただ、仕事としてやっていけるだけでは決して報われない労力をかけていただいています。志をもち、ハートがつながることで、素敵なモノができあがっているように感じました。今年2月18日の地鎮祭の時、建設業者の方から「俺らは、いいものを創る。使いやすくて、患者さんや皆が喜んでくれるものを創る。その後は任せるからな!よろしくな!」とおっしゃっていました。

自信を持って任されるように、後悔のない準備と師走を送ろうと思います。

2016年12月1日
森河 琴美

チームアプローチの神髄

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 11月です。今年の秋から冬への季節変化は本当に急ぎ足でしたね。
新病院の看護・介護部は、看護備品類の選択や電子カルテの内容など、より具体的な検討内容の協議に入ってきました。また今月中には、病室を想定したモデルルームが造られ、実際の広さや狭さを体感できるようです。準備室の仕事も急ぎ足で進んでいます。

 さて、今月は『チームアプローチ』についてお話します。
茨城のつくば市で10月27日から開催された「リハケア合同研究大会」でも、このテーマの演題をいくつも拝見しました。
病院や施設ではたくさんの職種(専門職)の方がいて、皆が協力し知恵と力を出し合いながら成果を出すことを求められます。そう言った意味では新しい概念ではありません。
では、何故未だに「チームアプローチ」が課題で有り続けるのか?何が本質的な問題なのか?
私は、「人の力を大切に思えるか」ということに課題がひとつあるように思います。
これは、エンパワメントの概念です。人は(自分も含めて)誰もがすばらしい力を持っていて、それを発揮することができる。自分エンパワメントと仲間エンパワメント、さらに組織・地域エンパワメントの相乗モデルです。

 私たちの病院ミッションに「信頼」という言葉があります。「相手を、自分を、信じて頼り合う」ことです。1+1=3になるように。
まさに、準備室の今の仕事は誰が欠けてもいいものができません。本当にたくさんの方々に支えられて進んでいます。この思いを皆が持てるよう言葉や型で伝えていくのが私の役割と思っています。

では、皆さま体調など崩されませんように。

2016年11月
森河琴美

ベッド用マットレスのスタンダードとは!?

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10月に入ると一気に秋めいてきますね。
季節の変わり目、皆さまは体調など崩されていませんか?
新病院開設準備室では、今度細部を決めていくにあたり中心的な役割を担っていく看護師・介護福祉士が集まってきました。今までひとりでいましたので頼もしい限りです。(^^)

さて、今日は『ベッド用マットレス』の話題です。
ベッド用マットレスは、睡眠の質に大きな影響があることは周知の事実です。病院の場合、睡眠の質と共に、褥瘡の発生や障害の悪化、さらに自立動作の妨げになるという影響があります。ベッドの上での安静治療が必要な患者、るい痩が強い患者、リハビリで動き始めたばかりの患者やバリバリ動いている患者、もちろん体格の違いもあります。
では、何をスタンダードとするか?
症状や障害、病態にあったマットレスの選択肢があることは大事ですが、選択肢が有りすぎるのも結局使用しない物がでてきて無駄になることがある。悩ましいところです。

最新のマットレス研究は、体圧分布センサーをセルに内蔵させて個別内圧調整ができるように開発を進めているようです。使う人の力量に左右されないメカニックの世界です。すごい時代ですね。

では、いろいろ悩んだ結果何を選択したか?
楽しみにしていて下さい。(^^)

2016年10月
森河琴美

ユニフォームについて

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9月(長月)になりました。
今年の北海道は、台風や長雨で災害が発生し大きな被害が
出てしまいました。皆さまの友人・知人の方々は大丈夫でしたでしょうか。冬がやってくる前に少しでも回復の兆しがあることを心から願ってやみません。

さて、準備室会議では「ユニフォーム」について検討を始めました。
ユニフォームは奥が深いです。 

ユニフォームの役割は、
① 企業イメージをビジュアルに投影するもの。顧客に安心感と信頼感をもって
  もらうために「ひと」を演出するもの
② 職場環境の一体感を高めるもの(雰囲気づくり)
③ 仕事・作業効率をアップさせるもの(機能性と経済性)
と、言われています。 

私達の新病院は、顧客にどのようにイメージしてもらうことを願っているのか?
まずは、ここから具現化しなくてはなりません。 

デザインや色や生地など、選ぶ楽しみもありつつ、みんなの願いをまとめながら
決めていかなくてはいけない深~く大きな問題です。

2016年9月
森河琴美

『人を支え、地域を支える』とは・・・

皆さん、お久しぶりです。

開院まで1年を切りました。始めは図面上の会議が多かったのですが、最近は、どのように運営していくのかというソフト面の打ち合わせが多くなってきています。

6月から病院スタッフの新規採用への対応を行っています。おかげさまで高い志と、やる気と希望を持ったステキな方々にお集まりいただき、面接の度に私まで元気をもらっています。『働いてみたい!』とご興味を持たれた方、是非お問い合わせ下さい。

さて、今回は『人を支え、地域を支える』について少し話をします。
この言葉は、医学界新聞(第3184号)に日本看護協会会長 坂本すがさんが寄せた記事の見出しです。
記事には『病院完結型の医療から地域包括ケアへの移行の時代になり、患者さんは医療機関と地域を行ったり来たりします。そのため看護職には生活の場をベースにしたケアが求められているのです。』とあります。(一部改編)
『人を支え、地域を支えることができるよりよい看護』に向けて、自らブラッシュアップする自律性が求められています。言うは易く行うは難しですね。でも、楽しいと思いません? 患者さんが自分の生活や人生を歩めるように見守り・支えていく伴走車になるということ。そんなケアを行う病院でありたいと願っています。

ご意見・ご質問・「いいね」お待ちしています。

2016年8月
森河琴美

 

新たなチームアプローチへのチャレンジ!

皆さん、新病院ホームページにようこそ。

今はまだ実態のない私達の病院に、興味を持っていただきありがとうございます。

私たちが提供する医療・リハ・ケアは、地域とそこでくらす人々を支えるためにあります。入院が始まり・退院が終わりではなく、「ずーっと」支えること・支えるまちを作っていく拠点として機能させようとしています。

従来の看護や介護の専門性や発想の枠を超え、生活者としての本人の自立やQOL向上を見守り、支え、つなぐことが必要になっていきます。そのためには、関わる全てのスタッフの強力なチームアプローチが欠かせないと思っています。それぞれのスタッフが持つ専門力が何倍にも増幅され、最良の医療サービスが提供できるよう採用・教育・環境基盤づくりに情熱をそそいでいます。

準備の進捗は、ホームページ上に更新していきますので是非アクセスしてください。

ご意見・ご質問・「いいね」お待ちしています。

新病院開設準備室 看護部 森河琴美