2020-12

ナースプラクティショナーがいる生活 Part.2

はじめまして、手稲渓仁会病院初期研修医2年目の金谷和哉です。
みなさんはナースプラクティショナー(NP)という言葉を耳にしたことはありますか?もしはじめて聞いたという方は、普段このブログを読みこんでいませんね?(笑)。読んでいない方は、今年7月21日の池田先生のブログ記事で触れられているので、そちらもぜひご参照ください。

当院総合内科ではNPを活用しており、全国的に見ても非常に先進的な研修病院です。本格的にNPが医師チームに加わり、患者診療にあたるようになったのは今年の7月から。今後、ますます磨きがかかっていくことでしょう。今回、NPがチームにいるメリットを具体例を交えながら、研修医目線でさらにお伝えします!

先日、重度認知症を背景とし、慢性的な便秘から尿閉に至った80代女性患者さんを受け持ちました。医学的には外来でもフォロー可能な状態でしたが、ご家族は介護疲れで疲弊していたことから入院を選びました。下剤の使用で排便が得られ、自尿も認められるようになり尿閉も解除したため、入院後1週以内にはいつでも退院できる状態まで改善しました。しかし、そのあとに退院先を自宅にするのか長期療養型病院にするのか、長期療養としてはどの病院が最適かなど、社会的な調整に時間を要し、最終的には1カ月間の入院が必要でした。その間、医学的な介入はほぼ不要な状態であっても、さまざまな調整で時間を取られてしまうことがあります。そういった慢性期の管理・調整を引き受けてくださるのがNPです。実際今回のケースも、入院期間の2/3程度はNPに担当いただくことができたおかげで、私は手の空いた時間を使って他の迅速な対応を求められる患者さんの診療に専念することができました。

他にも、誤嚥性肺炎治療後で転院待ちとなった患者さんや、菌血症に至った尿路感染症で全身状態が安定し規定の日数の抗生剤加療を続ける患者さんなど、急性期の管理が落ち着いた患者様をたくさん引き受けていただくことによって、われわれ研修医は新規の入院患者さんを担当することができ、より効率的にたくさんの症例を経験することができるようになりました。病態によっては、NPへ担当を引き継いだ患者さんが急変し、再び医療的な介入が求められた際に、元の主治医が再度担当することもあります。NPへ引き継いだ後に困ることがないように、普段からしっかり管理しておくことも主治医の腕の見せどころですね。

上述のケースはほんの一例であり、実臨床で働いた経験のない医学生のみなさんには少しイメージの付きにくい話だったかもしれません。NPのおかげで、研修がより充実したものとなる環境が整いつつあるのを実感しております。これから見学に来られる医学生は、ぜひNPにも着目してみてください。

ドクターヘリのOJT

はじめまして。2年目の江原と申します。今回はドクターヘリOJTについてご紹介したいと思います。
 
 OJTとはOn the Job Trainingの略であり、つまりドクターヘリ実地研修のことです。当院は道央ドクターヘリ基地病院であり、道内最初にドクターヘリ正式運航を開始した老舗でもあります。救急科ローテーション中には希望すればOJTを行うことが可能であり、今回はその様子をお伝えできればと思います。 
 
 朝フライトスーツに着替え、8時15分からブリーフィング を行います。ブリーフィング では、医師、看護師、機長、整備士、コントロールセンターと医療機材、無線、天候などをチェックし、情報を共有します。天候や日照時間は、運航範囲にも影響します。また、出動した後の機材トラブルは致命的になるため、入念にチェックを行います。

 朝のブリーフィングが終わると、出動要請がかかるまで待機します。ERの混み具合にもよりますが、基本的にフライトに当たる医師はERや病棟業務には従事せず、要請があればすぐ出動できるよう待機します。要請がかかると医師、看護師はヘリポートへ全力疾走し、数分以内に離陸します。そのため患者情報、現地の救急隊の活動状況などは上空ではじめてわかることになり、限られた情報だけを頼りに着陸後に行う処置、搬送などの流れを考えながら機内で準備を進めなければなりません。

 現場に着陸すると救急隊と合流し、迅速に患者さんの状態把握と必要な処置を行い、搬送先を決定します。ドクターヘリの機内は狭く、必要な処置は離陸前に現場で済ませておく必要があります。搬送中はエンジンやプロペラの騒音で患者さんの声が一切聞こえないため、患者さんとモニターから目を離すことができません。また、院内と違って限られた機材しかなく、日照時間との兼ね合いなどから現場での活動時間も限られている場合が多いため、診察や処置より搬送が優先される場面も少なくありません。搬送先は、患者さんの重症度や搬送時間、ベッドの空きなどから総合的に判断します。搬送先に到着次第直ちに申し送りを行い、終了後すぐに帰院して次の要請を待ちます。1日多くて4、5回出動することもあります。運航時間は日没に合わせ夏季は18時、冬季は16時に終了となります。運航が終了するとその日の活動について振り返りを行い、改善点を共有します。

 OJTは、bystanderではなくチームの一員として活動しなければならないため、非常に緊張感があります。また、医学的観点だけでなく、搬送も含めた総合的な状況判断能力がフライトドクターには必要であると感じ、非常に勉強になりました。当院では初期研修期間中にプレホスピタルの最前線を学ぶことができますので、特に救急医療に興味のある方は、見学の受け入れが再開となった際にぜひ一度当院にいらしてください。