リハビリテーション部入院リハビリ

運動器領域

整形外科部門

手術後、痛みや腫れなどにより関節の可動域制限が生じるため、早期から関節運動を行うことで拘縮(関節可動範囲が制限されること)の予防や改善が図れます。また、手術後にベッド上での生活が長くなると、筋力や体力の低下が起こってしまいます。そのため、多くの場合手術翌日から車椅子への乗車や、可能であれば歩行を行っていくことで筋力や体力の低下を予防していきます。運動を行う際には医師の安静度指示(関節を動かす時期や荷重をかける時期など)に応じて、手術部位へ過度な負担がかからないようにリハビリを進めていきます。

整形外科部門 施術の様子

治療内容としては、一般的な関節可動域練習や筋力トレーニング、動作練習、自主トレーニング指導などにより、歩行や生活動作の改善を図っていきます。また、ホットパック・超音波・アイシングや電気刺激といった物理療法を併用することで、疼痛軽減や筋力増強を図ります。さらに、スプリント・足底板やテーピングも用いて、姿勢の改善を図りつつ運動を実施する事で、より効果的なリハビリを提供出来るようにしています。 加えてPrimusやハンドヘルドダイナモメーターといった機器を用いた筋力測定を行い、回復の程度を評価していきます。

整形外科部門 施術の様子

中枢神経領域

脳卒中部門

当院では、脳血管疾患(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)をはじめ、脳腫瘍、頭部外傷などの患者さんに対して、当日もしくは翌日よりリスク管理に留意しリハビリテーションを開始します。早期から病床にセラピストが訪問しリハビリを行うことで、安静・臥床により生じるとされる、廃用症候群などの二次的合併症を予防します。

当班では、1人の患者さんに対しPT・OT・STの3職種のセラピストが各々の役割を分担し、協業しながら治療にあたっています。

PTは基本動作(寝る・起きる・立ち上がる・歩くなど)を行う上で必要となる身体機能の再獲得や維持・向上を、その患者さんの状態に合わせて最適な運動プログラムを立案し改善させていきます。

脳神経外科部門PT 施術の様子

OTは日常生活動作(食事やトイレ動作・更衣など、1日の生活を通して必要となる各動作)を中心に、実際にその動作を練習として取り入れることで、動作の再獲得やより動きやすい動作の確認・調整を行います。

STは言語・高次脳機能などの評価や訓練、摂食機能に対するアプローチを行っています。

脳神経外科部門OT 施術の様子

SCU(脳卒中ケアユニット)部門

SCUは脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)急性期の初期治療を行う病棟です。脳卒中治療ガイドラインにおいても、十分なリスク管理のもと、SCUなどの組織化された場でできるだけ発症後早期から積極的・集中的なリハビリテーションを行うことが強く勧められています。当院においても多職種からなる専門チームが協働して診療に当たり、リハビリテーションは発症当日または翌日から開始しています。

SCU(脳卒中ケアユニット)部門PT 施術の様子

超急性期からのアプローチにより、廃用症候群などの二次的合併症を予防しつつ、筋収縮が発揮できるように外部からの刺激入力で麻痺の回復を促進しています。
高次脳機能障害や摂食嚥下障害に対しても詳細な評価に基づいたリハビリテーションを行い、病棟と協働してADL拡大に努めています。
初期治療終了後は一般病棟に転棟されるか、早々に退院や転院となる場合もあります。退院の際には、自宅生活や社会復帰に向けたリハビリテーション指導や環境調整を実施し、転院・転棟の際には移動先への情報提供を行うことで、シームレスなリハビリテーションの提供ができるように関わっています。

SCU(脳卒中ケアユニット)部門OT 施術の様子

呼吸・周術期領域

呼吸・内科部門

対象は重症急性感染症・呼吸器疾患・めまいや糖尿病など種々の内科的疾患におよび、各科医師の指示の下、リハビリテーションを施行しています。

内科部門 施術の様子

内科部門 施術の様子

総合内科では、安静に伴う廃用症候群などの二次的合併症を予防し、入院前の生活に戻ることを目的としています。患者さんの状態に合わせて呼吸理学療法・関節可動域練習・バランス練習・ADL練習・運動療法など、必要なプログラムを選択して施行しています。
呼吸器内科においても、まずは二次的合併症予防を目標とし、排痰支援や呼吸コントロール、呼吸筋トレーニングなどの呼吸練習・ベッド上でのコンディショニングを始めとして、状態に合わせてADL練習や運動療法を展開し、最終的には、身体活動性の向上などにも取り組んでいきます。
耳鼻咽喉科・頭頸部外科では主に末梢性めまいに対して、めまいのリハビリテーションを施行しています。内容としては、眼球運動・頭頸部の運動・バランス練習などを施行しています。

呼吸・周術期部門

対象は食道がん、膵臓がん、肝臓がんなどの種々の消化器疾患におよび、外科医師の指示の下、周術期リハビリテーションを施行しています。

呼吸・周術期部門 施術の様子

呼吸・周術期部門 施術の様子

周術期チームでは、医師や看護師、栄養士などをはじめとする職種と連携し、手術に伴う周術期合併症の予防を図り、退院後に質の高い生活が送れることを目的としています。
手術前のリハビリテーションでは、身体機能や呼吸機能の向上を目的とした筋力トレーニング、全身持久力トレーニング、呼吸リハビリテーションを行います。
手術翌日から行うリハビリテーションでは、患者さんの状態や病態に合わせてリスク管理を行いながら、手術翌日からの歩行など、必要なプログラムを選択して施行していきます。
周術期におけるリハビリテーションは身体機能の維持や合併症発生率の減少、QOL(Quality of life:生活の質)の維持など多くの効果が示されています。

ジェネラリスト領域

救急・集中治療部門

対象とする疾患は多岐にわたり、救急および集中治療を要する重症患者さん全てにリハビリテーションを提供しています。そのため年齢層も幅広く、乳児から高齢までの全年齢の患者さんに対し、呼吸や循環といった全身状態を適切に把握し、必要に応じたリハビリを施行しています。

救急・集中治療部門 施術の様子

当院の救急・集中治療分野におけるリハビリテーションは、医師や看護師といった多職種との連携を密にすることで、個々の病態や状況に応じた早期リハビリテーションを積極的に導入しています。早期リハビリテーションでは、関節可動域の維持や廃用予防を目的とした他動運動だけではなく、離床やADL(日常生活動作)拡大に向けた動作練習・歩行練習など積極的な運動を中心とした介入を行っています。救急・集中治療室で運動が出来るのかと皆さん疑問に思われるかもしれませんが、ICUにおける早期リハビリテーションによる有害事象の発生頻度は低いとされており、退院時のADL再獲得に効果的であることや、人工呼吸器からの離脱を促進する可能性など、多くの効果が示されています。

救急・集中治療部門 施術の様子

小児部門

対象疾患は、主に急性呼吸不全(肺炎、気管支炎、喘息)、外傷(頭部外傷、骨折、臓器損傷)、急性脳症・脳炎(ウイルス感染、細菌感染などに伴った脳症、種々の原因による低酸素脳症など)、代謝性疾患、急性心不全、慢性心不全、遺伝子疾患、運動発達遅滞などが対象となっています。

小児部門 施術の様子

入院中はケースに応じて、機械的排痰・筋緊張調整を含めた呼吸ケア、ポジショニング、発達評価、発達促通、柔軟性維持・改善、起居動作練習、立位・歩行練習、患者さん本人・ご家族への指導を行っています。入院中から他職種とカンファレンスを実施し、在宅生活に向けた退院支援を行い、必要な方には主治医に相談の上で福祉機器・日常生活用具、補装具の作成も行います。

小児部門 施術の様子

がん・リンパ浮腫・緩和ケア領域

当院では多様ながん疾患に対し専門性が発揮できるよう、2チームに分かれて治療を行っています。
がんのリハビリテーションは病期により大きく4つの段階に分けられ、治療開始前から「予防的リハビリ」を開始します。たとえば、呼吸に影響する手術の前には呼吸リハビリを開始し、手術後の肺炎や無気肺などの合併症の予防と術後の離床をサポートしています。
治療開始後は「回復的リハビリ」を行い、運動療法を行うことで、全身の身体機能改善をはかり、後遺症を最小限にしてスムーズに治療前の生活に戻れるように支援を行います。
がんが進行していたり、再発して骨に転移したりした場合は、がんの治療とともに生活の質を落とさないようにする「維持的・緩和的リハビリ」を行います。終末期にともなう腫れや痛み、日常生活での活動制限といったさまざまな症状に対し、できることを患者さんと共に検討していきます。

消化器内科・腫瘍内科部門

「消化器内科部門では、上部下部消化管の疾患(がん、胃十二指腸潰瘍、大腸ポリープ、食道静脈瘤など)や、肝臓(肝炎、肝細胞がん)・胆嚢(胆石症、胆嚢がん)・膵臓(膵炎、膵臓がん)・胆管(胆管炎、胆管がん)の疾患をお持ちの患者さんに対するリハビリテーションを実施しています。疾患や症状によって絶食を余儀なくされたり、十分な食事摂取が困難となることで、体力・筋力が低下し日常生活に支障を来してしまうことも少なくありません。リハビリテーションでは、入院前と同じような生活を再び送ることができるよう、患者さんの病状に合わせて運動や活動を支援しています。
 腫瘍内科部門では、がんの治療として化学療法・放射線療法を行う患者さんのリハビリテーションを実施しています。副作用が出る場合も多く、治療を継続しながら生活するには、体力・筋力を温存しておくことが大切です。リハビリテーションでは、症状とうまく付き合いながら患者さん一人ひとりが望む生活を続けることができるよう、運動や活動のみならず、日常生活での工夫点などもアドバイスしながら、患者さんやご家族を支援しています。」

がん部門リハ班 施術の様子

婦人科・血液内科・緩和ケア部門

婦人科・血液内科では、肺がん・乳がん(胸部外科)や、頭頸部がん・喉頭がん(耳鼻咽喉科・頭頸部外科)、前立腺がん(泌尿器科)、子宮頸がん・子宮体がん(婦人科)などを担当しています。
治療としては、頸部・腋窩リンパ節郭清術後には手術による神経障害などによって肩が上がりにくくなる場合があるため、手術前後で肩の運動を行います。
前立腺摘出術後の尿失禁が、生活の質を低下させる合併症であることはよく知られています。この尿失禁に対して骨盤底筋体操が有効であることが報告されており、当院では手術前と退院前に個別評価を実施した上で、体操の方法をお伝えしています。
乳がんと婦人科がんの手術後には、手足が腫れるリンパ浮腫という合併症があります。この浮腫の原因になり得る動作やリスクをお伝えすることで発症の予防に努め、浮腫のチェック方法をお伝えすることで浮腫の早期発見や早期からの治療開始につなげ、重症化を防ぐ取り組みを行っています。退院前にはリンパ浮腫について基礎的なお話と、必要に応じて用手的リンパドレナージの行い方をお伝えしています。婦人科がんに対して手術前後にリハビリテーションを実施している施設は全国的にもめずらしいため、リハビリテーション介入による治療効果検証のためデータ収集並びに解析を進めています。

婦人科・血液内科部門 施術の様子

婦人科・血液内科部門 施術の様子

心大血管領域

心臓血管部門

心臓リハビリテーションの対象疾患は、心筋梗塞や狭心症、心臓弁膜症、大血管疾患(大動脈解離、大動脈瘤)、心不全、末梢動脈疾患など多岐にわたります。これらの疾患の主な原因である動脈硬化の進行や再発を防ぐためには、運動療法・食事療法・禁煙などにより生活習慣を改善することが大切です。患者さんに対して運動負荷試験を行い、最も適した運動の強さや時間を決め、医療スタッフの監視のもとで、心電図を確認しながら安全に運動トレーニングを行うのが心臓リハビリテーションです。また個人面談(カウンセリング)も実施し、退院後の生活や社会復帰の注意点、運動療法の方法、不安やうつ状態などについての相談およびアドバイスを個別に行います。

心臓血管部門 施術の様子

心臓病の患者さんは、心臓の機能低下や安静生活の影響で運動能力や身体調節機能が低下しています。早期の退院と社会復帰のためには、低下した体力を回復させ、精神面でも自信をつける必要があります。患者さんの病状や体力に合わせて運動の強さを調節し、血圧や心電図に異常が現れないか監視する必要があります。

心臓リハビリテーションの効果
  1. 運動能力の増加
  2. 日常生活の同一労作における症状軽減、生活の質(QOL)の改善
  3. 動脈硬化のもとになる冠危険因子(高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満)の改善
  4. 不安やうつ状態の改善
  5. 血管内皮機能(血管が広がる能力)や自律神経の働きが改善
  6. 長期的に心臓病の再発、突然死、再入院率が減少、生命予後が改善

心臓血管部門 施術の様子

腎・泌尿器部門

腎臓・泌尿器疾患リハビリテーションは、腎不全、糖尿病性腎症、血液浄化療法(急性・末期腎不全)、腎細胞癌、膀胱癌、前立腺癌等、様々な疾患の方々が対象となります。かつて、このような疾患の方々は安静が治療の一つと言われていましたが、現在は早期離床・適切な負荷量での運動療法や生活訓練が体力や日常生活能力の向上に効果的と言われており、積極的なリハビリテーション介入を実施しています。また、前立腺癌の手術後は尿失禁が高頻度で起こるため生活の質が低下します。尿失禁に対しては骨盤底筋体操が有効であり、専門知識を有した理学療法士・作業療法士が手術前から体操を実践し習得を目指します。

内科部門 施術の様子

現在、高齢化に伴い腎・泌尿器疾患患者は増加しており、特に慢性腎臓病は認知症発症のリスクを高めるとも言われています。よって、腎臓病予防と認知症対策も喫緊の課題となっており、多職種での包括的なアプローチが求められる分野となっています。

言語療法(ST)

脳神経外科・救急科を除いた全ての診療科が対象となります。具体的には、術後や廃用症候群・老化に伴う摂食嚥下障害、脳卒中後の失語症及び高次脳機能障害、構音障害や音声障害、喉頭摘出後の代替音声、乳幼児・小児の言語や嚥下機能の発達促通など多岐にわたり、乳幼児から高齢者まで幅広く対応しています。

言語療法(ST)班 施術の様子

摂食(食べる)嚥下(飲み込む)障害がある患者さんに対しては、姿勢や呼吸、口腔器官の筋力や巧緻運動など安全に食べるための基礎的な練習から、看護師や管理栄養士とも連携を取り安全な食事形態を検討し、提供しています。必要に応じて嚥下内視鏡検査等を施行することで、より正確な評価・治療を行うこともあります。
コミュニケーションに対する治療としては、舌・唇などの機能訓練を行います。また、言葉で伝えることが難しい患者さんには代償コミュニケーション手段の検討も行います。

言語療法(ST)班 施術の様子

病棟専従

ADL維持向上等体制加算と病棟専従配置

ADL(日常生活機能)維持向上等体制加算の目的は、急性期医療における入院患者さんの日常生活動作維持・向上等を図るため、病棟における評価やADLの維持・向上等を目的とした指導やご家族への情報提供などであり、当院では2017年2月よりA西6病棟、2017年11月よりA東6病棟に専従の理学療法士を1名ずつ配置しています。 専従の理学療法士を配置することにより、病棟の医師・看護師との密なコミュニケーションや、入院患者さんの早期家庭復帰や早期社会復帰を実現しています。

ADL維持向上等体制加算と病棟専属配置 活動の様子

具体的には、該当病棟に入院している全ての患者さんに対し、入院時・退院時に日常生活の状況や身体機能などを評価した上で、生活指導や運動指導を行うほか、必要と思われる場合は早期のリハビリ処方について主治医に相談します。また、リハビリ処方の対象外の場合でも、集団体操や個別体操というかたちで運動の機会を設けています。

ADL維持向上等体制加算と病棟専属配置 活動の様子

地域連携の取り組み

リハビリテーション部では手稲区民のために体操や健康状態の確認を行っています。詳細はリハビリテーションとは ~当院の特徴~>地域連携の取り組みをご覧ください。