口腔機能と健康
口腔機能は「咀嚼(かみ砕く)、嚥下(飲み込む)、発音、唾液の分泌など」に関わり、その役割を大別すれば「1.食べる、2.話す」となります。要するに人が社会のなかで健康な生活を営むための原点ともいうべき機能です。
高齢になれば病気や障害を伴うことが多くなり、生理的老化によっても様々な問題が生じます。したがって、いくつかの病気や障害を抱えながらも日常生活にはできるだけ支障のない状態が理想となります。
つまり高齢者の健康は「病気や障害がない」ことよりもむしろ「いきいきと生活する=活動性が高い」ことが重要となります。
高齢者の活動性が低下する要因は2つあります。1つは「身体機能の衰え」です。口腔機能が低下すると食物の種類が制限される(飲み込みやすい物や軟らか い物など)ので、栄養の偏りやエネルギー不足になりがちです。その結果、筋力や免疫力の低下が起こります。筋力がおちると運動機能が低下し活動も不活発に なります。また、免疫力が低下するとさまざまな病気にかかりやすくなります。高齢者ではその病気がもとになって寝たきりになる場合もあります。
2つめの要因は「人との交流の機会を失うこと」です。不活発な生活が長く続くと体力とともに脳も衰え、認知機能の低下にもつながります。活動の場は人と の交流が生まれますが、そのためには人と楽しく食事をし、コミュニケーションするための口腔機能を維持することが不可欠です。社会とのつながりが徐々に薄 れる高齢者にとって、誰かと話したり活動したり、食事を共にすることが人間関係を豊かにする場を提供する重要な機会でもあります。
このように高齢者が身体的、精神的、さらには社会的にも健康な生活をおくるためには、口腔機能を維持することが欠かせないのです。