リハビリ・センターブログ 目次
2019/06/02~ 直立二足歩行 (1)~(3)
2019/06/08~ 誤嚥の仕組みと予防 (1)~(5)
2019/07/01~ リハビリ・センターについて (1)~(2)
2019/07/03~ 宇宙飛行士の廃用性筋萎縮 (1)~(3)
2019/07/16~ 怪文書
2019/07/18~ 小林多喜二の脚長差

センター長  2020/12/31(Thu) 00:00:00
小林多喜二の脚長差
三浦綾子さんは北海道旭川市出身の作家です。晩年、自身のパーキンソン病闘病生活を描いた「難病日記」という本を出しています。この稿はこれとは別の本の話です。「母」という本がありますが、これは小林多喜二の母親、セキさんを描いた作品です。「あとがき」の中には、「小林多喜二の母を書いて欲しいと三浦(夫)から頼まれたのは、かれこれ十年以上も前のことになろうか」と書かれています。この「母」を書いたのは1992年2月とありますから、依頼されたのは1982年(昭和57年)より数年前頃という事になります。セキさんは1961年(昭和36年)、ツギさんは1972年(昭和47年)、チマさんは1975年(昭和50年)に他界してます。当然ですが、セキさんへの取材はありません。ツギさんやチマさんにも会ってないでしょう。あとがきには「三吾氏始め、ごきょうだい」とありますが、その頃に健在だったのは弟の小林三吾さんの他には妹の高木幸(ユキ)さんしかいません。ですから、この「母」は、三吾さんと幸さんの2人、そして多喜二の知人からの情報、その他は種々の文献から作家なりの視点で描いたものと思われます。

この「母」には多喜二の外見に関する記述が出てきます。私が読んだのは文庫版ですが、まず167ページに三吾さんの言葉として「あの、あんちゃんの肩上がり、目立つなあ。何とかならんもんかなあ」とあります。2度目は174ページ、多喜二が他界した日の朝についてセキさんの回想として、「あの朝に限って、多喜二の右肩上がりのうしろ姿が、遠ざかって行くのが目に浮かぶ」とあります。これらは多喜二の姿勢が右肩上がりだったということを示しています。その身体的特徴から、遠くからでも特高警察に見つけられてしまうのではないかと家族が心配しているのです。

倉田稔氏の「小林多喜二伝」によると、多喜二は庁立小樽商業学校の3年生の器械体操の授業で、鉄棒から落ちて右下肢を骨折しました。チマさんは1年生だと記憶しているようです。庁立小樽商業学校は2年間の予科と3年間の本科からなっていました。ですから、チマさんの記憶が「本科1年生」とすると、これは庁立小樽商業学校として3年生にあたりますから、矛盾はありません。この骨折は、大腿か下腿か分かりません。大腿骨なら大ごとでしょうから、もっと大きな話題になってそうに思えます。骨折は下腿だったのではないでしょうか。多喜二がこの頃に書いた「病院の窓」という作品で、右下肢にギプスを巻いて松葉杖で歩いている人物が出てきます。自分自身がモデルです。入院した病院は前出の「小林多喜二伝」によると「鎌倉病院」だそうです。小樽の古地図には色内駅の近くに鎌倉病院があります。同じ名前の病院は近くには無いでしょうから、入院していたのはこの病院だと考えられます。骨折以外も含め多喜二が手術を受けたとの記録はないようですし、ギプスを巻いて保存的に治療したのだろうと思われます。化骨の途中で荷重をかけると偽関節が生じたりして問題がありますが、骨折自体は固定しておけば自然に治ります。その際、不完全な整復で曲がったままギプスを巻いてしまうと、曲がったまま骨が繋がってしまいます。従って、左右の下肢の長さに差が生じるのです。これが脚長差です。下肢の長さは大腿骨の大転子から外果(外くるぶし)までとして定義されます。正確に言うと「転子果長」と言って、足部を含みません。多喜二の骨折は右下肢ですから、右下肢が少し短かかったとすると、そのままでは上半身が右に傾きます。従って、バランスをとるために上体を左に傾ける必要があります。すなわち代償性の側弯となり、相対的に右肩が上がった状態になる可能性があるのです。多喜二を良く知る風間六三氏は「小林が商業三年の頃、機械(原文のママ)体操で右脚を怪我してから歩き方が変わったときいている。肩で風を切るような歩き方はそのせいだと思っている」と言っています。これは「脚長差による跛行」と、それによる「上体の揺れ」だと考えられます。

私が3歳の頃、セキさんに会ったことがあります。3歳ですから覚えていませんが、祖父の葬儀に来てくれた時のことです。多喜二は祖父の従弟でした。祖父の父親(私からすると曽祖父)は小樽でパン工場を創業して多喜二の学業援助をした人でした。このパン工場は苫小牧市の「株式会社三星」につながっています。そんな関係もあり、私の手元には世に出ていない資料があります。この話を含め、このブログとは別のホームページで展開しています。かなりマニアックではありますが、興味のある方は以下のURLでどうぞ。

「知られざる小林多喜二の周辺」

http://www.ne.jp/asahi/tar/cat/


センター長  2019/07/18(Thu) 20:31:09
怪文書
6月にブログを開始して、なるべく分かり易く書いたつもりですが、それでも難しいという声がありました。これまで直立二足歩行がひとつのテーマでした。今回は毛色の違うものを書きます。先日、机周りを整理していた時、ある文書が出てきました。10年以上も前のものですから公表しても問題はないでしょう。当時、皆で大笑いしました。今、読んでも笑えます。要するに医者を対象とした「振り込め詐欺」です。笑いどころは幾つかあります。まずこの文書を作った人は、「医者は脛に傷持つ者ばかり」と思ったようです。もうひとつ、この文書は対象者の名前だけ変更して同じ病院の何人にも来ました。他の部分は同じ内容ですから比べれば即座に分かります。それに句点と読点の使い方が変です。日本の初等教育を受けた人なら、こんな文章は書かないでしょう。いくつかを伏字にして再現しました。

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●●●病院
●●科医師
●●●●様

拝啓 梅雨の候、ご貴殿にはますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。

唐突ではございますが、個人調査の依頼が舞込み難問の処理について●●様にお伺いのお手紙を差上げた次第です。実は、特別依頼人より当事務所へご貴殿の身辺調査依頼があり現在調査を実施致しております。本件は、間接的に個人から出版関係へそして当調査事務所へと依頼の経緯があった模様ですが、個人調査の開始を指示された意図は、遺恨が原因ではと当方は解釈致しておりますが如何なものでしょうか、ついては下記をお伺致したくご連絡を致しました。

一、難問の処理についてと申しましたのは、依頼者より当方に対し大変な要望がありました。『院内各所にスキャンダル暴露記事を顔写真付きで数十枚を掲示』院内各所に告知を求められております。この様な要望・要求は初めてで我々も驚きを隠せません、万一履行した場合は当然職員、患者、病院等は大騒ぎになるのは必定。しかし、依頼人は正気です。

一、●●様の多情な女性遍歴による腐れ縁、セクシャルハラスメント等も掌握しており、「性」について特異な性癖をお持ちと聞き込みによる貴重な証言もあり現在進行中も含め、その他についても確認、解明を急がしております。

経緯は、上記進行中の調査で●●様の「スキャンダル」は現地事務所の報告により明白です。本件を放置すれば取り返しの付かない事態に至りますので、当方は個人の裁量により提議が必要と判断しご通知致しました、依って対処は間違の無い方法を選択され十分に気を付けて行う事が寛容かと存じます。昨今、日常的に紙面を賑わすセクシャルハラスメントによる女性蔑視、差別は深く考えさせられ、被害者の人格や心情を一顧だにせず、欲望を満たす為のケースが最近の兆候です、当事者は憤懣やるせない精神的苦痛を解消する為に暴露に及び、真相解明・問題解決へ訴訟に対する追跡調査の依頼件数も増加傾向です。

本件の重要性は当事者が一番ご承知の事で●●様の生命線を断ち切るに値する重大な問題です。●●様が過去に培って来られた、社会的信用と実績は一挙に崩壊致します。汚点を消し去るには早期に対処せねば成りません。良く熟考され保身は内々に対処すべきが重要かと進言致します。

本件の調査は、最終段階に入っており●●様身辺に関する勤務先及び自宅での聞き込み、素行調査等を手分し聞き取り調査を数名で当る準備が整っておりますが、勤務先、家族、ご近所に概況を察知されかねません。要らぬ風評により今後に及ぼす影響は計り知れないものと思われます、現在の立場を考えれば、深刻な事態に至らぬまでに素早い対応が必要かと推察いたします。

●●様の要望があれば協力は惜しみませんのでご連絡下さい。現時点ならば如何様にも対処方法、解決策はございます。但し、当方に協力要請希望の場合のみ ●●@yahoo.co.jp ご連絡下さい。その他、内容に対する相談等はご遠慮願います。

猶予期間も余り御座いませんので、連絡は平成●年7月14日迄の期日内に連絡がない場合は身辺調査を再開し事前の業務通り遂行し是非とも正確な資料を提出したいと思っておりますので速やかに連絡をお願いします。

本件についての進言は以前先生に大変お世話になった経緯があり注進に及んだ次第です、本人が直接処理ともなれば感情が入り良い進展は望めませんが、当方ならではの確実な処理の秘策がございます。当方は、個人信用調査会社に属する立場の者ですが、●●様の件に関し個人で対応しておりご貴殿に脅威を与える者では御座いませんのでご安心下さい。又、守秘義務厳守で行いますので安心してご連絡下さい。必要ならば解決後に資料を送付も致します。

●●様の社会的立場、今後の医師評価の減点を避け大過なく激務に励まれんことを希望しております。尚、この度は、ご貴殿の立場を考慮して、封筒・文面の差出人・住所すべて匿名にし書面で行ったのは配慮致したつもりです。

敬具

平成●年7月9日
東京都千代田区●●●●●●
●●●●オフィス
札幌統括 ●村●陽
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その後、医師会から注意を呼び掛ける文書が来ました。一部、黒塗りしてPDFファイルとして添付します。

./image/1563278794_768.pdfPDFファイル


センター長  2019/07/16(Tue) 21:05:46
宇宙飛行士の廃用性筋萎縮(3)
ここまで無重力の話をしました。しかしながら、これは「静止状態」ではありません。頭の中が混乱するかもしれませんが、物理学的な用語で言うと「等速運動」は「静止」と等価です。JAXAのホームページによると、国際宇宙ステーション(ISS)は地上から約400 kmの上空を周回しています。約90分で地球を1周するのだそうです。これはスペースシャトルの場合と同じです。時速にすると約27,700 km/h、秒速では約7.7 km/secと書いてあります。ここで計算してみます。地球の直径は約12,742kmです。地上約400kmということなので、直径が約13,542kmの円周上を回ることになります。その円周は13,542×3.14≒42,522 kmです。この距離を1.5時間で飛ぶのですから、計算では約28,348 km/hとなり、JAXAのホームページの記載と大体同じとなります。このように、とてつもない速さで飛んでいるのです。

ちなみに音の速度(音速)は約330 m/secです。音速の体感として雷の例が有名です。通常の生活空間では光の速度は無視できますから、雷がピカッと光ってから3秒後にゴロゴロ・・・と鳴ったとすると、330 m/sec ⅹ 3sec =990m です。約1キロメートル先で雷が発生したことになります。国際宇宙ステーション(ISS)と単位を合わせると0.33 km/sec、1,188 km/hです。国際宇宙ステーション(ISS)は、音速の約23倍の速さで飛んでいることになります。中にいる人も同じ速度で同じ軌道を動いてます。だから、その人にとっては相対的に静止そして無重力なのです。あくまで「相対的に」です。外から見ると、どちらも凄いスピードで円運動をしてます。進行方向に等速運動。垂直方向では、地球の引力と周回による遠心力が相殺されます。

テレビ・ニュースで、地球上から打ち上げた物資を国際宇宙ステーションがアームで捕捉する場面を目にします。静止しているものをつかむのだったら簡単に思えますが、これは、秒速7.7キロメートルの超スピードで動いているステーションから、秒速7.7キロメートルの超スピードで動いている物体を捕捉するという難しいものです。大分前の映画ですが伊丹監督の「お葬式」でしたか、走る自動車の窓から並走する自動車に弁当か何かを渡す場面があったと思います。あの場合、路面からは振動があり、自動車のスピードに応じて周りの景色は後方に流れていきますし、風圧もあります。スピード感が実感できますし、どんなに危険なことかは分かります。でも、宇宙空間には何もありません。空気がないので風の抵抗もありません。遠くに星が見えたとしても、近くには比べるものがないので自分がどれだけのスピードで動いているかは分かりません。等速運動しているのか静止しているのか、すぐに分かる基準がないのです。

ここまで等速運動の話でした。さらに混乱するかもしれませんが、加速運動の場合でも、「相対的な無重力状態」は有り得ます。話を単純化するために、条件を「落下」にしぼります。「引力」と「重力」とは厳密な定義があって同じものではないのですが、かまわずに書いてます。地球の引力に引っ張られて、地球の中心に向かう加速運動が「落下」です。現在のエレベーターは様々な安全装置が付いていて落ちる心配はないはずですが、単純化のために人が乗ったエレベーターが自由落下する場面を考えます。支えを失ったエレベーターは自由落下という加速運動をします。その中の人も、同じく自由落下という加速運動をします。ですから、中にいる人にとっては「疑似的な無重力状態」なのです。でも、そのうち悲劇的な事がおこります。誰かが止めない限り必ず地面に激突します。疑似的無重力体験は、その瞬間に終わります。

この理屈を応用します。以前、飛行機で無重力を体験しようというバラエティー番組がありました。エレベーターの自由落下と同じ原理です。空に高く上がった飛行機は、必ずしも宇宙空間に出る必要はありません。自由落下に近い速度で急降下すれば疑似的な無重力状態を作ることが出来ます。私が見た番組ではクイズが出題されてました。「無重力状態になるとラーメンはどうなるか?」というものです。テーマ自体はバカバカしく思えますが意外な結果でした。普通に考えると、ドンブリから汁や麺が空中にふわふわ浮いて、タレントの顔が汁やラーメンまみれになる・・・という笑いのオチかと思いきやです。あくまで疑似的な無重力状態ですが、この無重力状態になったとたんに、ドンブリの中の汁が一瞬にして消えたのです。驚きでした。

重力がなくなると、すなわち地球の引力の影響がなくなると、「表面張力」という力だけが存在することになるようです。その結果、汁は全て麺の表面にマトワリついてしまう・・・というような解説だったと思います。日常の世界では「引力」という圧倒的に強い力のため、「表面張力」は微々たるものであり、麺と汁は、あたかも引力の法則だけしかないように見えていた・・・ということのようです。

地球上では、当たり前のように重力がありますから、そこで生まれた生物は、地球という環境に特化した形をとっているはずです。もし宇宙人がいたとして、地球と異なる引力の惑星で誕生しているとしたら、地球上で見かける形と同じとは限らない訳です。また、もし無重力状態で生命が誕生したとすると、平面ならヒトデのような形、3次元的なら金平糖の凸部が伸びたウニのような形になるのではないでしょうか。そして均等に養分を送るために、心臓はその中心にあるでしょう。

センター長  2019/07/05(Fri) 21:24:13
宇宙飛行士の廃用性筋萎縮(2)
話を宇宙飛行士に戻します。アポロ計画の次に米国で行われた宇宙事業にスペースシャトル計画があります。スペースシャトルでの生活風景を撮影した動画をレーザーディスクで見た事があります。ここでは、それなりの空間が確保されています。ひところ流行った「ルームランナー」を思い浮かべると良いと思いますが、「トレッドミル」という医療機器があります。スペースシャトル内は無重力ですから、トレッドミルは通常の使い方ができません。宇宙飛行士は、腰のベルトにゴムをくくりつけ、それをトレッドミルに接続して疑似的な重力を作って運動していました。こうやって下肢の筋力低下を予防していたのです。では、上肢はどうしたでしょうか? ダンベル運動は、無重力状態なのでダンベルに重さがないため無意味です。多分これも、ゴムなどを利用していたのだと思われます。「巨人の星」の星飛雄馬が使っていた「大リーグボール養成ギブス」を知っているでしょうか。無重力状態では、理想的な廃用予防スーツになるような気がします。

このように、運動スペースが確保されているスペースシャトルの時代であっても、地球に帰還した宇宙飛行士は、すぐにはマスコミの前に出てこなかったと思います。おそらくNASAの指令で、禁止されていたのではないでしょうか。なにせ宇宙から帰還した英雄です。ところがです、国際宇宙ステーション(ISS)の時代になり、誰だか名前は忘れましたが日本人だったと思います。地球に帰還した直後に報道陣の前にスタスタと歩いてきてインタビューを受けた人がいました。記憶は定かではないのですが、前代未聞のことだったのではないでしょうか。そこでヨロヨロしたり転んだりしては大恥となります。おそらく、国際宇宙ステーションの中では相当な運動をして、絶対にヨロけないという自信があったのだと思います。

話は少しずれますが、無重力状態は苦しいはずです。訓練を受けた誇りある宇宙飛行士は弱音を吐くはずがないのですが、動画で見る宇宙飛行士の顔はむくんでいます。人間に限りませんが、地球上の生物は引力の影響に応じた体になっています。ここでは陸上動物に限定しておきます。水中の生物は浮力があるので、陸上動物ほどではないかもしれないからです。人間は直立二足歩行です。心臓から顔・頭に向かう血流は、重力に逆らって移動します。心臓より下にある部分よりも、強く押し出される必要があるはずです。ですから、無重力の場合は相対的に顔・頭に向かう血流の圧が強くなると思われます。それで顔がむくむのでしょう。地球上でそれを疑似体験する事ができます。あくまで私の推測ですが、無重力生活とは、ずっと逆立ちして生活するようなものではないかと思います。

センター長  2019/07/04(Thu) 22:57:36
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