通常安静時には60-100回/分の脈拍数の事が多いです。正常の心臓のリズムは洞調律といい次の様な様式で作られています。
心臓の細胞は定期的に電気的に興奮することが出来ますが、その中でも洞結節という右心房にある細胞の一群が最も早いペースで興奮するので、結局は脈拍数を決める事になります。例えば洞結節の細胞が80回/分で電気的に興奮したら、その興奮が心臓の中を伝播して1分に80回の心収縮が得られ、脈拍数80回/分になります。伝播は、刺激伝導系と呼ばれる興奮伝達速度が速い心筋群を介して心筋全体に伝わります。
なお、運動する時や、他にホルモンバランスやミネラルバランスで洞調律が頻脈もしくは徐脈となることがありますが、洞調律である限り、これらの治療は基本的に脈が早くなったり遅くなったりする原因(背景因子)の治療ですので、ここでは割愛します。また、徐脈に関しては、ペースメーカーの治療の項をご参照ください。
ここでは洞調律以外の主な頻脈性不整脈に関し、その名前と主な治療をご紹介します。主に次の様なものがあります。
典型的な物では、心房内で異常な電気回路が三尖弁(右心房と右心室を隔てる弁です)の周りに形成され、ここをグルグルと異常な電気刺激が回り続けるタイプの不整脈です。心房は250回/分程度の高頻に収縮します。心室にはある程度間引きされて伝われば問題ないですが、中には全て心室側にも間引きされずに伝導した場合には(1:1伝導)血圧の低下を来す事がありますし、2回に1回伝導したとしても120-130回/分と頻脈である為、動悸を訴えたり、頻脈により心不全を発症し呼吸苦やむくみを来す事があります。
治療は、心房-心室間の伝導を抑制する薬剤を使用する方法があります。根治にはカテーテルアブレーションも、回路の中で最も狭い部分(丁度、三尖弁輪と下大静脈は右心房に戻ってくる部分の間あたりに相当します)を焼灼し、粗動は9割以上の高率で根治可能です。失神や動悸症状にとどまらず、重症な場合には血圧を保ち得なくなりショック状態や心肺停止に至る、致死性の不整脈の1つです。ショック状態や心肺停止時は、電気的除細動による治療を要します。
虚血性心疾患や心筋症などの背景疾患にある場合には、心筋が不均一な部分が出来、心室内で異常な電気伝導路が知らぬ間に形成されてしまうことがあり、発症様式の1つとされています。先天性素因や薬剤を含めた後天性素因により起こる事もあります。心不全を背景に2次性に来す事もあります。抗不整脈薬を使用して発症抑制を図ったり、既にこうした不整脈が一度見られている患者さんや、心機能が悪い事から2次的にこうした不整脈を来す事が予想される患者さんには、予防的に体内埋め込み型除細動器(ICD)を埋込んだりします。
埋め込み型除細動器は、場合によって単純な抗不整脈薬のみでの治療に心機能や生命予後で勝るとする報告もあります。カテーテルアブレーションで不整脈素地の部分に熱を加え電気的に隔絶する方法もあります。不整脈素地は1カ所とは限らず、同定や再発防止が難しい場合も少なくありません。治療選択肢の詳細は医師にご相談ください。