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ペースメーカー 手稲渓仁会病院 循環器内科

ペースメーカーは、本来心臓が定期的に収縮する機能が失われた際に、これを定期的な電気刺激を加える事により徐脈を解除する機械です。世界的にはすでに1950年頃から臨床使用をされていますが、機械の性能も大きさ(小ささ、と言った方が良いでしょうか)も日進月歩の著しい分野です。

まずは、心臓の電気の仕組みから少しお話を。心臓の細胞は定期的に電気的に興奮することが出来ます。その中で洞結節という右心房にある細胞の一群が最も早いペースで興奮するので、結局は脈拍数を決める事になります。例えば洞結節の細胞が80回/分で電気的に興奮したら、その興奮が心臓の中を伝播して1分に80回の心収縮が得られ、脈拍数80回/分になります。伝播すると言っても、無秩序乱雑に伝わるわけでは無く、刺激伝導系と呼ばれる部分を介して全体に伝わります。刺激伝導系とは、興奮伝達速度が速い心筋群です。丁度道路(心筋全体)の中に高速道路(刺激伝導系)と一般道路(それ以外の心筋、作業心筋)があるようなものです。なお、高速道路にも料金所があるように、刺激伝導系にも料金所のようにスピードの遅くなる部分があり、房室結節とよばれる部分に相当します。他の刺激伝導系と比較すると10分の1から100分の1の速度差を生じます。丁度、心房と心室の間は刺激伝導系以外の部分では電気的に絶縁されていて、刺激伝導系が唯一の心房-心室間の伝達路になっています。

ところで、刺激伝導がうまくゆかずに脈が適切に作られなくなったら、ペースメーカー適応を考えなければならないのですが、その原因には 1.司令塔の洞結節細胞の異常か、2.伝達経路の刺激伝導系の異常、大きく分けて2つあります。1.が原因で起きる徐脈は洞不全症候群と総称されます。2.は程度にもよるのですが、唯一の心房-心室伝達路である房室結節での伝達異常が最も重要です。特に完全に伝達が途絶えてしまったり(完全房室ブロックと言います)、予期せぬところで途絶えたりする(モービッツ2型U度房室ブロックと言います)場合は、適応を考えなければなりません。

実際の診断には、12誘導心電図や携帯型心電図を24時間つけっぱなしのホルター心電図といった検査が必要です。その上で、徐脈に一致して症状(ふらつき、失神、めまい、たちくらみ等々)を認めたり、心不全症状が徐脈に起因すると考えられたりした場合、総じて症状のある徐脈(有症候性徐脈)の場合には、ペースメーカーの適応があると判断されます。ペースメーカー留置後は、電気器具使用時に注意を要し、医療分野ではMRI検査が施行できない等々、生活制限が少なからず生じますので、詳しくは医師にご相談ください。

ペースメーカーには2種類あり、救急で機械補助を要する場合の「体外式ペースメーカー」と、体内埋込型の「恒久式ペースメーカー」があります。体外式ペースメーカーは機械が体外にあって、そこから点滴のように静脈を介してリード線が心臓内膜に挟まって心臓を刺激します。恒久式は、電池も電気刺激を伝えるリード線も体内にあります。

基本的に電池は、皮下、胸筋の上、左側前胸部に埋めますが、埋込み場所は個人差があります。電池は、個人差もありますが概ね10年前後持ちます。電池が消耗したら、電池部分の取換えが必要です。電池の消耗の度合いは、埋め込んだペースメーカーの上に特殊な機械を置くだけで測る事ができます。

リード線は電池と心臓内膜までを静脈内を伝って繋がります。機材や原因の病気にもよりますが、概ね1から2本です。両心室ペーシングという特殊な機材・設定の場合には3本必要な場合もあります。断線する等の合併症が無ければ、電池が消耗し交換してもリード線はそのまま使用できます。リード線の心筋側先端から心筋を刺激し、かつ自己心拍の感知も行います。

ペースメーカーの働きに関しては、ペースメーカーコードというもので書かれています。詳細は割愛しますが、「AAI」「VVI」「DDD」と記された場合が多いです。3文字で書かれている意味合いについては、こちらをご参考までに。1.1つ目の文字は刺激する部位です。Aは心房(atrium)、Vは心室(ventricle)、Dはその両者を示します。2.は心臓のどの部分を感知しているかを示します。A、V、Dは1.と同じです。1本のリードで1箇所しか刺激出来ません。ですので、1文字目が「リード線がどこにあるか」を示しています。3.3つ目の記号は、反応様式(つまり、どのように働くか)です。Iは抑制(inhibitory)の頭文字で、設定した期間内に収縮を感知出来た場合には、機械による刺激を「お休みします」という意味です。もちろん収縮を感知出来ない場合には機械による刺激を行います。例えば「VVI60回/分」とは、「リードの先端があり刺激するのは心室で(1.)、拍動を感知するのは心室で(2.)、心室を1秒に少なくとも心室拍動を1回感知するとお休み、しなければ1秒に1回(即ち60回/分)刺激します」という働き具合をしめしています。「DDD60回/分」とは、「リードの先端があり刺激するのは心房心室の両方で(1.)、拍動を感知するのも心房心室の両者で(2.)、心房で刺激もしくは感知したあと、心室を1秒に少なくとも心室拍動を1回感知するとお休み、しなければ1秒に1回(即ち60回/分)刺激します」という働き具合をしめしています。少しややこしいですが・・・?

近年は自分の拍動がある時には出来るだけ機械の作動を減らして自分自身の心拍を生かす設定が心臓の機能に取って良さそうだと言われています。機械も2つ以上の働き方が出来るものもあります。こうした機器では例えば60回/分の設定でも、時折それ以下の心拍数に瞬時的にはなる場合があり、時折、機械の不具合では?と相談されることがあります。非常に専門性の高い話になってしまいますので、少しでもご不安がありましたら専門医にご相談ください。


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