エクセルで自在なグラフを描く・その2
マイクロソフト社のエクセル(表計算アプリ)は、日付(年月日)を連続した数値として管理しています。Windows版のエクセルは1900年1月1日を「1」として(デフォルト状態)、マック版のエクセルは1904年1月1日を「1」としています。本来なら存在しないはずの1900年2月29日の取り扱いの違いのためです。マイクロソフト版は設定の変更により1904年1月1日とすることも可能のようです。これらは別稿で示しました。日付は整数で管理されていますが、小数点以下にも意味があります。小数点以下は、整数部分が示す年月日の中の「時間」を示します。1日は86,400秒(=24×60×60)ありますから、エクセルでは1秒を[1/86,400]という値で管理します。小数点以下11桁で四捨五入すると、1秒は[0.0000115741]です。具体例として図を示します。

2020年7月1日に24、7月4日に19、7月5日に35と変化する数値があったとします。この変化を「直線付きの相関図」で描くと次図のようになります。実はセルの中に年月日だけを書き込むと、その日の「0時0分0秒」を示しています。通常は時間のことなど考えないので、書き入れる必要が無いだけです。ちなみに1900年1月1日に「1」から始まった場合の「2020年7月1日」のシリアル値は「44,013」です。これは1900年1月1日から数えて、2020年7月1日が「44,013日目」に相当するという事です。エクセルが扱える最大年月日は西暦9999年12月31日の「2,958,465」です。



このグラフに時間指定のデータを追加すると次図のようになります。
2020年7月1日12時43分45秒、15
2020年7月3日08時12分23秒、33
2020年7月5日15時52分43秒、25
例えば「2020年7月1日12時43分45秒」のシリアル値は、小数点以下10桁まで表示すると「44,013.5303819444」です。

長い経過(時間軸)のグラフを描くのに「時分秒」は不要ですが、もし1日の中での変化を描きたいような場合には役立つと思います。セルに表示させる際に桁を揃えるには、セルの表示形式をユーザー定義で変えておくのが良いでしょう。年月日の場合は「yy/mm/dd」、時間の場合は「hh:mm:ss」です。両方が必要な場合は「yy/mm/dd hh:mm:ss」です。



この図では2本の曲線を描きましたが、これは系列を2個使用したという事です。前稿で示したイラストは98個の系列を使用していました。この系列の中のデータ数は(x,y)形式の数値が2個の場合が最低で、この場合は1本の直線になります。データ数が少ない場合でも1系列が必要です。エクセルの仕様として系列数の上限は255個です。この上限まで使用したグラフを次に紹介します。

札幌西円山病院の回復期リハビリ病棟では、2015年8月1日から2020年5月30日までに合計1525人の患者さんが退棟しました。回復期リハビリ病棟に入棟する患者さんの身体運動能力はFIMと言われる評価法で定められます。このFIMは、各項目が1~7点の評価で求められます。このうち運動関連の13項目の合計点が、病棟の機能を示す実績指数の計算に使用されます。このFIM運動項目合計点を、各患者が入棟してから退棟するまでの変化として描いてみました。入棟時と退棟時のデータですから、患者1人あたり1系列を使用する必要があります。エクセルの仕様のため255系列が上限ですから、退院患者全員について示すことはできません。仮にできたとしてもグラフが直線だらけになってしまい、個々のデータは判別できなくなります。そこで、2016年1月から半年ごとの1ヶ月間に退院した患者に絞り込んでグラフを描いてみました。各月の退院患者数は以下のごとくです。
2016年1月、24人
2016年7月、27人
2017年1月、14人
2017年7月、33人
2018年1月、25人
2018年7月、34人
2019年1月、30人
2019年7月、29人
2020年1月、28人
以上、244人となりました。別稿で書いたごとく「縦の補助線」も「系列」として利用してますから、これが10本で10系列あります。図の右上がりの黒実線は実績指数ですが、これが1系列。合わせてちょうど255系列となります。実のところ、これは偶然でした。ここまでのデータでグラフを描き終えた後、もうひとつ系列を増やそうとしても不可能なことに気が付きました。何か不具合が生じたのか?と思って調べたところ、エクセルの仕様として系列の上限が255個だという事が分かった次第です。



この図に描かれている各直線は、一人の患者を示します。その患者の入棟時の運動FIM合計点と退棟時の運動FIM合計点を直線で結んだものです。右上がりの直線は、FIM合計点が上昇、すなわち身体能力が向上したことを意味します。右下がりの直線は、入棟後に身体能力が低下してしまった症例です。運動関連の項目は13個ありますから、全てが最低の1点だとするとFIM合計の最低点は13点です。13個の項目が全て最高の7点だとすると、FIM合計の最高点は91点です。FIM合計点や変化量(利得)は左の縦軸(Y軸)を見れば分かります。横軸(X軸)は時間の流れ(年月日)です。たとえば横に広いデータは、入棟期間が長いことを示します。このように各データ(直線)は、横軸(日数)と縦軸(FIM利得)という2つのパラメーターで示されます。なだらかな傾きの場合は、入棟期間が長く、かつFIM利得が小さいことを意味します。急峻な傾きの場合は、入棟期間が短く、かつFIM利得が大きいことを示します。

このグラフの左半分(2016年1月~2018年1月)と右半分(2018年7月~2020年1月)を比べると、違いが明らかです。色々な理由がありますが、直近の2年間に西円山病院の回復期リハビリ病棟に入棟した患者さんの身体運動能力の改善度が大幅に向上したことが分かります。各データを横切って右上に向かう黒実線は実績指数(右副軸)を示します。これは回復期リハビリ病棟の実力を示す指標です。これも大幅に向上しているのが分かります。

[補足]
1系列の中のデータについて、(x,y)形式のデータが最低2組が必要と書きましたが、これは直線を描く場合のことです。作図としては1組でも成立します。この場合は線ではなくて「点」が1個だけ描かれます。また、データが複数の場合でも「線で結ばない相関図」とした場合は、データの数だけの「点」が描かれます。同じ系列だと同じ色の点になりますが、系列を変えることで別の色の点として分けることが出来ます。


センター長 | No.42 札幌西円山病院リハビリテーションセンター   2020/07/06(Mon) 21:08:30
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