トンパ文字のこと
トンパ文字は現在も生き続けている唯一の象形文字です。過去の象形文字としては古代エジプトのヒエログリフや、漢字の祖先ともいえる甲骨文字があります。現在も使われていると言っても、トンパ文字が日常的に用いられているわけではありません。これはトンパ教(東巴教)という宗教の経典に書かれているものであり使いこなせる人は限られています。これを扱うナシ族(納西族)は中華人民共和国の雲南省に存在します。雲南省はミャンマー、ラオス、ベトナムと面してます。雲南省の省都である昆明から大理(ターリ)を通って麗江(リージャン)に行きます。大理とは大理石の産地として知られる都市です。大理から麗江まで約200km。この麗江県はナシ族の自治区です。ここは平地に乏しい海抜2,400メートル前後の山岳地帯です。ナシ族は32万人(2010年)いるそうです。1割程度は四川省やチベット自治区にいるようですが、ほとんどが麗江県がある雲南省に住んでいます。麗江県の首都は大研鎮(だいけんちん)。麗江県の旧市街は1997年に世界文化遺産として登録されています。



トンパ(東巴)とは「トンパ教の宗教的職能者」のことであり「知恵深き導師」を意味します。伝統文化の継承者でもあります。開祖は「トンパシロ」。トンパ教は7世紀頃には存在したとされるナシ族に伝わる原始宗教で、この経典(東巴経)に書かれている文字がトンパ文字です。ナシ族でも限られたトンパしか使いこなせません。トンパは厄除けや死に関わる宗教儀式だけでなく、占いや医学にも関係したようです。経典には宗教的なもの以外に、地理、動物、植物、神話、食文化、服飾、生活、農牧業など多くのことが書かれています。トンパ教は約2,300柱もの神々を祀る自然崇拝に基づく多神教です。トンパ文字は約1500文字からなるそうです。経典(東巴経)は文化大革命の時に大部分が焼かれてしまったようですが約5,000冊が現存します。経典に書かれたトンパ文字は彩色されています。その色によっても意味合いが異なるという他の言語・文字にはない特徴があります。2003年にはユネスコの世界記憶文化遺産に登録されました。

トンパ教の神話の中には次のようなものがあるそうです。「神は3人の子をもうけ、それぞれ1つずつの地域を統治させた。その3人のコミュニケーションのために、3つの言語と文字がつくられた」というものです。この3つの文字とはチベット文字、漢字、ナシ文字です。ナシ文字とはトンパ文字のことです。実際に漢字ほど古いかどうかは分かりませんが、トンパ教の成立が7世紀頃ですから、経典はその後に書かれたのは間違いありません。何といっても絵画性が特徴的ですが、抽象性や表音性も含まれているようです。詳しくは次の書籍に書かれています。

トンパ文字 生きているもう1つの象形文字 王超鷹 マール社(1996年4月20日)

この本にはトンパ文字総覧が付いています。複合文字が含まれているためかもしれませんが全部で2,160文字が収録されています。また前稿で示したパーソナルメディア社の「超漢字」は、BTRONベースで作動します。正確に書くとOS(オペレーティング・システム)は「B-right/V」ですが、現在これはパソコンの中に作った仮想コンピュータ(VM)のOSとして作動します。この「超漢字」ではトンパ文字を扱うことが出来ます。トロン・コードに収録されているトンパ文字は全部で1,362文字です。この中からいくつか紹介します。トロン・コードではトンパ文字は「天」から始まります。トロン10面(&T2A)2121です。トンパ文字はトロン10面の「4桁の16進数(0~F)」としてブロックごとに収められています。ブロックとブロックの間は空いているのでトロン・コードは連続数値ではありません。これとは別にトンパ番号があり、これは連続数値で示されます。



A01:トンパ0001番、TRON10面2121(&T2A2121):天
A02:トンパ0067番、TRON10面2163(&T2A2163):雨が降る、夏
 天から液体が落ちてくるイメージです。
 季節として夏に相当するのでしょう。
A03:トンパ0002番、TRON10面2122(&T2A2122):太陽、日
A04:トンパ0058番、TRON10面215A(&T2A215A):日蝕
 太陽の一部が欠けています。
A05:トンパ0041番、TRON10面2149(&T2A2149):光線、日光
 太陽から注がれる光を直感的に描いています。
A06:トンパ0003番、TRON10面2123(&T2A2123):月
 A10が「夜」ですから、夜に出てくるものを示すのでしょう。
A07:トンパ0059番、TRON10面215B(&T2A215B):月蝕
 月の一部が欠けています。
A08:トンパ0047番、TRON10面214F(&T2A214F):月光
 月から注がれる光です。
A09:トンパ0040番、TRON10面2148(&T2A2148):明るい
 太陽や月が輝くイメージです。
A10:トンパ0082番、TRON10面2172(&T2A2172):夜
 トンパ文字では黒色は「暗さ」や「悪さ」を示します。
 空が暗いイメージでしょうか。

B01:トンパ0494番、TRON10面2638(&T2A2638):人
B02:トンパ0591番、TRON10面273B(&T2A273B):私
 指が自分を指しています。
B03:トンパ0592番、TRON10面273C(&T2A273C):私たち
 自分を指す指先に点々・・・が集合しているので「私たち」です。
B04:トンパ0061番、TRON10面215D(&T2A215D):日暮れ、否定(~ではない)
 A10に似てますが、そのイメージかどうかは分かりません。
 夜に近いからでしょうか?
B05:トンパ1195番、TRON10面2D63(&T2A2D63):良い
 漢字の冠のように、他の文字の上に付くようです。
B06:トンパ0062番、TRON10面215E(&T2A215E):初め
B07:トンパ0063番、TRON10面215F(&T2A215F):終わり
 頭から尾までというイメージでしょう。B8に「尾」を示しました。
B08:トンパ0393番、TRON10面2531(&T2A2531):尾
B09:トンパ0780番、TRON10面293C(&T2A293C):骨
B10:トンパ0781番、TRON10面293D(&T2A293D):骨折
 骨が折れているイメージです。



C01:トンパ0498番、TRON10面263C(&T2A263C):男、男の子、夫
C02:トンパ0499番、TRON10面263D(&T2A263D):女、女の子、妻
C03:トンパ0507番、TRON10面2645(&T2A2645):父
C04:トンパ0508番、TRON10面2646(&T2A2646):母
 添えてある記号はC6のように「メス」を示します。
 特に出産に関係があるようです。
C05:トンパ0396番、TRON10面2534(&T2A2534):雄
C06:トンパ0397番、TRON10面2535(&T2A2535):雌、大きい
 ナシ族は伝統的に母系優位社会のようです。
 そのため雌の方が大きいイメージなのでしょう。
 特にナシ族の一部とも言われるモソ族(摩梭族)は、
 その傾向が強く男性に相続権がないそうです。
C07:トンパ0711番、TRON10面2855(&T2A2855):性交
C08:トンパ0714番、TRON10面2858(&T2A2858):妊娠
C09:トンパ0715番、TRON10面2859(&T2A2859):生育、出産
C10:トンパ0230番、TRON10面234A(&T2A234A):外、胎児、赤ん坊
 おそらく頭に産毛があるイメージでしょう。

D01:トンパ0597番、TRON10面2741(&T2A2741):立つ
D02:トンパ0598番、TRON10面2742(&T2A2742):座る
D03:トンパ0674番、TRON10面2830(&T2A2830):跳ぶ
D04:トンパ0227番、TRON10面2347(&T2A2347):左
D05:トンパ0228番、TRON10面2348(&T2A2348):右
D06:トンパ0637番、TRON10面2769(&T2A2769):怠ける
 疲れ果てて手足に力が入らないイメージでしょうか。
D07:トンパ0618番、TRON10面2756(&T2A2756):転ぶ、つまずく
 手足に力が無いわけではないのに倒れています。
D08:トンパ0609番、TRON10面274D(&T2A274D):長寿
 頭から出る1本の長い毛のようなものが長寿のイメージなのでしょう。
D09:トンパ0610番、TRON10面274E(&T2A274E):健康
 長い毛の他に頬が丸々としているイメージでしょうか。
D10:トンパ0622番、TRON10面275A(&T2A275A):遊ぶ
 頭上の円弧が両上肢から離れている場合は
 「かぶる」という意味になります。



E01:トンパ0694番、TRON10面2844(&T2A2844):空腹、飢える
 腹の中に何も入っていません。
E02:トンパ0959番、TRON10面2B33(&T2A2B33):米の飯、御飯
 容器に入った御飯です。
E03:トンパ0692番、TRON10面2842(&T2A2842):食べる
 ヒトの口が大きく開いています。御飯を食べることを示します。
E04:トンパ0693番、TRON10面2843(&T2A2843):満腹、飽きる
 腹の中に食べ物がいっぱいあります。
E05:トンパ0717番、TRON10面285B(&T2A285B):大便
 A2(雨)にもあった液体を示すものが出てます。
 点々・・・が付いており単なる液体ではありません。
E06:トンパ0716番、TRON10面285A(&T2A285A):小便
E07:トンパ0543番、TRON10面2669(&T2A2669):主人
 御飯をもてなす人を示すのでしょう。
E08:トンパ0542番、TRON10面2668(&T2A2668):客、賓客
 顔から出ている紐状のものは発話を意味するようです。
E09:トンパ1306番、TRON10面2E74(&T2A2E74):宗教的な呪術師、祭司、トンパ
 トンパ文字を操るトンパ自身のことです。
E10:トンパ0876番、TRON10面2A3E(&T2A2A3E):鏡
 人の姿が写っており、なおかつ輝くものです。

F01:トンパ0028番、TRON10面213C(&T2A213C):蒸気
 水分が蒸発して消えていくイメージでしょうか。
F02:トンパ0612番、TRON10面2750(&T2A2750):死ぬ
 おそらく人の体から蒸気すなわち生気が抜けていくイメージでしょう。
F03:トンパ1332番、TRON10面2F30(&T2A2F30):幽霊、妖怪、鬼
 生気が抜けて死んだはずのものが立っているので幽霊の類です。
F04:トンパ0189番、TRON10面2321(&T2A2321):土
F05:トンパ0614番、TRON10面2752(&T2A2752):埋葬
 土の下に人が横たわっています。頭には三本線がありません。
 書くまでもないか、あるいは生気が抜けきった後を示すかもしれません。
F06:トンパ0607番、TRON10面274B(&T2A274B):寝る、眠る
 ベッドの上に人が横たわってます。
 死んではいないので三本でなくて一本線かと思われます。
F07:トンパ1060番、TRON10面2C3A(&T2A2C3A):床、ベッド
F08:トンパ0031番、TRON10面213F(&T2A213F):光
 光が周囲に広がるイメージでしょうか。
F09:トンパ0033番、TRON10面2141(&T2A2141):暗闇
 黒丸は負のイメージを示すのでF8の逆です。
F10:トンパ0024番、TRON10面2138(&T2A2138):風
 横風のイメージでしょう。



G01:トンパ0905番、TRON10面2A5B(&T2A2A5B):穀倉
G02:トンパ0611番、TRON10面274F(&T2A274F):病気、痛み
 人が横たわっています。状態が思わしくないので
 穀倉(病院?)との組み合わせでしょう。
G03:トンパ0769番、TRON10面2931(&T2A2931):心、心臓
G04:トンパ0242番、TRON10面2356(&T2A2356):刺(とげ)
G05:トンパ0817番、TRON10面2961(&T2A2961):悲しむ
 心に刺(とげ)が刺さるような悲しみを示すと思われます。
G06:トンパ0815番、TRON10面295F(&T2A295F):ひどく悲しむ
 G2(病気)のように、悲しみが尋常でないことを示すと思われます。
G07:トンパ0791番、TRON10面2947(&T2A2947):見る
 「積極的に見る」ことを示します。
 目から真っすぐ下に伸びている場合は「見える」です。
G08:トンパ0795番、TRON10面294B(&T2A294B):泣く
 雨(A2)のように、目から液体が出ています。
G09:トンパ0788番、TRON10面2944(&T2A2944):乳房
 乳汁という液体が出ている乳房を示します。
G10:トンパ0967番、TRON10面2B3B(&T2A2B3B):乳
 出ている液体に点々・・・とは、体から出るからかも知れません。
 大便(E5)もそうでした。

H01:トンパ0166番、TRON10面2268(&T2A2268):水
 丸いのは泉を示すようです。そこから水が湧き出るイメージです。
H02:トンパ0167番、TRON10面2269(&T2A2269):泉、井戸
 泉にヒゲ状に加わった印は、人の手で掘ったものを示すかもしれません。
H03:トンパ1173番、TRON10面2D4D(&T2A2D4D):橋
 水が流れるのは川ですが、そこに板が掛かっています。
H04:トンパ0801番、TRON10面2951(&T2A2951):飲む
 左側は口を開けた人の顔を示します。水を飲んでいます。
H05:トンパ0684番、TRON10面283A(&T2A283A):歌う
 人の口の前に線があり、点々・・・が付いているので声が出ています。
H06:トンパ0797番、TRON10面294D(&T2A294D):呼ぶ
 線の先が丸まっており、何かを象徴するようです。
H07:トンパ1196番、TRON10面2D64(&T2A2D64):悪い
 黒い三角なので悪いものを象徴しています。
H08:トンパ0798番、TRON10面294E(&T2A294E):悪口
 発せられた声が悪いものなので悪口です。
H09:トンパ0176番、TRON10面2272(&T2A2272):氷
 水面の下にある黒丸は、ここでは冷たいものを象徴するかもしれません。
H10:トンパ0179番、TRON10面2275(&T2A2275):海、湖
 波のイメージでしょうか。



I01:トンパ1040番、TRON10面2C26(&T2A2C26):戸
I02:トンパ1041番、TRON10面2C27(&T2A2C27):開ける
I03:トンパ1042番、TRON10面2C28(&T2A2C28):閉じる
 戸がピシャっと閉まるイメージでしょうか。
I04:トンパ1162番、TRON10面2D42(&T2A2D42):錠
 戸が開かないようにしているイメージです。
I05:トンパ1204番、TRON10面2D6C(&T2A2D6C):まっすぐ
I06:トンパ1206番、TRON10面2D6E(&T2A2D6E):曲がる
I07:トンパ1082番、TRON10面2C50(&T2A2C50):紙
I08:トンパ1086番、TRON10面2C54(&T2A2C54):教典、本、書物
 紙に文字がぎっしり書かれているイメージでしょうか。
I09:トンパ1194番、TRON10面2D62(&T2A2D62):大きい
I10:トンパ0822番、TRON10面2966(&T2A2966):羊毛を刈るための鋏
 もともとはハサミの意味ですが、
 切り刻んだ後の小さい様子も意味するようです。

J01:トンパ0103番、TRON10面2229(&T2A2229):地
J02:トンパ0105番、TRON10面222B(&T2A222B):田畑
 地面に草が生えているイメージです。
J03:トンパ0112番、TRON10面2232(&T2A2232):地震
 地面が揺れているイメージです。
J04:トンパ0173番、TRON10面226F(&T2A226F):洪水
 地面の上に水(H1)が点々・・・と沢山あります。
J05:トンパ0207番、TRON10面2333(&T2A2333):火、赤、紅
J06:トンパ0209番、TRON10面2335(&T2A2335):煙
 燃えているものから上っている煙です。
J07:トンパ0198番、TRON10面232A(&T2A232A):金、黄色
 画数が多く貴重な感じがします。
J08:トンパ0196番、TRON10面2328(&T2A2328):銀
J09:トンパ0202番、TRON10面232E(&T2A232E):銅
 少し心臓(G3)に似てます。何か関係あるかもしれません。
J10:トンパ1241番、TRON10面2E33(&T2A2E33):幾千幾万、無数

パーソナルメディア社発行、トンパで遊ぼう会が編集した「トンパ !!」という本(2001年発行)があります。ここに日本の格言をトンパ文字で表現した例が書かれています。2編だけ紹介します。次の図は「超漢字」で描いたものです。

(1)良薬は口に苦し
人が寝ています。#は穀倉を意味しており合わせて「病気」です。壺に入った薬草の上に「良い」という記号が付いてます。黒色は良くない事・物を意味します。これを口に挟んでいるので「苦い」ことです。頬が膨れた健康な人になりました。



(2)腹が減っては戦は出来ぬ
腹に何も入っていません。戦いを意味する絵の上に「否定」の記号が付いています。



センター長  2020/08/07(Fri) 11:33:16
超漢字検索のこと
「超漢字検索」というアプリケーション・ソフトがあります。コンピュータを新機種に乗り換える時に私が真っ先にインストールするアプリです。これがなければ仕事にならないと言っても過言ではありません。もともとはTRONというOS(オペレーティング・システム)で作動する「超漢字」の中のもの(文字検索)ですが、Windowsベースに置き換えられたアプリケーションです。パーソナルメディア社が販売しており、以下のサイトよりダウンロードできます。10日間の限定ですが試用版として全ての機能を無料で使うことができます。ライセンス・キー(6,000円)を購入することで、そのまま使い続けることができます。Windows版とLinux版の他にiOS版とAndroid版もあるようです。「超漢字」については別稿で示しますが、日本発信のOSになるはずだったBTRON(ビジネスTRON)で動く一連のアプリケーション群です。その後のBTRONはWindows上に作った仮想マシン(VM)のOSとして動くようになったため、見た目はWindowsのアプリケーションのようになりましたが、現在も生き続けています。

http://www.chokanji.com/ckk/

この「超漢字検索」の検索方法はユニークです。他のアプリケーションで同じような検索システムが用いられているかどうか知りませんが、漢字を構成する部品を手掛かりとして、知りたい漢字を探し出すというものです。何かの作業中に知らない漢字に遭遇する時がありますが、通常の漢字変換で出てこなければお手上げです。キーボードから入力することができません。部首で検索する方法がありますが、それを知っている人は多くないでしょう。人名を扱う時が典型的なので、架空の名前として「戳太郎」という人がいたとします。「超漢字検索」では「部品による検索」が可能と書きました。例えばこの「戳」を構成する部品として「羽」があります。検索画面で「羽」と入れれば候補漢字が選び出されてきますが、これだけだと候補漢字数が多すぎます。次のような画面が15面も出てきます。ここから探し出すのは大変です。



ユニークな点として「引き算」ができるということがあります。例えば「曜-日」という引き算により「曜の右半分」が部品として利用できます。検索画面で「曜-日」と入力すると候補が絞られます。この条件で表示される漢字は全部で226個あります。





数は多いのですがWindowsで使うことができる漢字は最初の方に示されます。黒色はJIS第1および第2水準、水色はJIS第3水準、緑色はJIS第4水準の漢字です。この場合は黒色が10種類しかないので、ここからだと選ぶのは容易です。その10種類とは、「濯」、「擢」、「躍」、「曜」、「耀」、「戳」、「櫂」、「燿」、「糴」、「糶」です。この「戳」を左クリックすると、漢字の情報が表示されます。この漢字をコピーして、使いたいワープロ上でペースト(貼り付け)すると、自分のワープロ文書に取り込むことができます。「戳」の読みは「たく」です。人名の場合は必ずしもこの読み方でない場合がありますが、このように漢字を構成する部品を頼りにして、その漢字の情報に到達する事ができます。漢字コードには区点表示とかJIS、シフトJISとか色々ありますが、それぞれのコードの何番に相当するかという情報も出てきます。関連漢字として異体字も表示されます。中国漢字も表示されますから、それが簡体字であれば簡体字として表示されます。

ここで表示される異体字や簡体字は「超漢字検索」の中で見ることが出来ますが、黒色・水色・緑色で表示されている漢字以外はWindowsシステムで使えません。この3色は「日本基本」、また紺色は「日本補助」として使えるかもしれません。これらの異体字や簡体字はWindowsシステムでは通常の漢字として扱ってないため、どうしても使いたければ「外字」として表示するしかありません。最初に「超漢字」のことを書きました。「超漢字」の動作環境TRONでは「超漢字検索」で表示される漢字はすべて「トロン・コード」で管理されます。従ってシステムとして利用が可能です。システムとして可能というのは、「外字扱いではない」ということです。多少の重複を気にせず存在が確認される漢字を全て収録するというのがトロン・コードの設計思想です。従って「超漢字システム」の中であれば、ワープロでも表計算でも、図表の中でも使うことが出来ます。人の名前を管理しなければならない時には重宝します。トロン・コードには、現存する唯一の象形文字であるトンパ文字も収録されています。トンパ文字については後でも触れます。「超漢字」というのは、漢字を自在に扱えるという特徴をアピールするための名前と言えますが、ネットワーク式のファイル管理システムや、実身と仮身の使い方次第ではシステム自体がハイパーテキストをサポートしている事になり、他のOSとは全く異なっています。実用性が無ければ誰もしないと思いますが、スタートレックに登場する架空言語のクリンゴン文字を登録することも理論的には可能です。トロン・コードには新文字登録の余裕が十分にあります。

検索には論理演算が可能です。すなわち検索用の部品をスペース(空白)をはさんで並べると「AND検索」となります。検索の方法はパズルのようであり、思いつくままでかまいません。「戳」の例では条件を「羽 戦-単」とすると、37個に絞り込むことが出来ます。さらに「羽 戦-単 集-木」とか、「曜-日 戦-単」とした場合は「戳」しかありません。



検索には記号を使うこともできます。大概の場合は形が似ていればOKです。例えば「※」で検索すると「鬱」を含めて389個の漢字が出てきます。このうち1面(153個)だけ示します。



「※ 缶」と入力すると、「※」と「缶」が含まれた漢字が表示されます。この場合、「鬱」を含めた26個に絞られます。



「鬱」の中にはカタカナの「ヒ」のような部品が含まれます。「※ ヒ」と入力した場合は次のような80個の漢字が出てきます。



もうひとつ示します。「木」という部品が3個以上含まれる漢字を検索したい時は、検索画面に「木 木 木」と入れます。「木*3」でも構いません。「*」はコンピュータ上の演算(掛け算)の記号です。「木を3倍」するわけです。すると83個の漢字が出てきます。



「森」という漢字が重複して3個あります。形は同じですが、黒色の「森」は日本の標準的な漢字コードに含まれるもの、橙色の「森」は中国漢字のもの、紫色の「森」は韓国で用いられる漢字コードのものです。黒字の「森」をクリックすると、「日本漢字の森」の情報が表示されます。関連漢字として異体字が出てきますが、中でも面白いのはトンパ文字です。「森に関連したトンパ文字」が表示されます。



トンパ文字として3個出てます。それぞれを調べてみると、最初のものには「樹木の生い茂った深山」、2番目には「森」、3番目には「森を燃やす」という説明が書かれています。



この「超漢字検索」に慣れると各種の作業効率が上がるばかりでなく、文字に関して新しい発見があります。見たこともない漢字が検索結果に出てくることがあるからです。すでに書いたごとくTRONシステムの上なら、その文字をワープロや表計算シートの中で使うことが出来ますし印刷も可能です。これらをハイパーテキスト方式で繋げていくこともできます。

(附記)
(1)この稿で表現している「ハイパーテキスト方式」とは、例えばインターネットの表示にあるように、文中の特定の単語をクリックすると、別のページに次々と飛んでいく方式のことを言っています。
(2)検索は総画数でも可能です。「=64」と入れると64画の漢字が出てきます。見たこともない漢字が並びます。画数はアバウトでも構いません。「=34~37」と入れると、総画数が34以上かつ37以下の漢字が出てきます。
(3)Windowsで簡体字が使えるようです。UNICODEが対応しているからと思われます。
(4)文字検索の例を2つ追加します。




センター長  2020/07/22(Wed) 16:31:22
エクセルで自在なグラフを描く・その2
マイクロソフト社のエクセル(表計算アプリ)は、日付(年月日)を連続した数値として管理しています。Windows版のエクセルは1900年1月1日を「1」として(デフォルト状態)、マック版のエクセルは1904年1月1日を「1」としています。本来なら存在しないはずの1900年2月29日の取り扱いの違いのためです。マイクロソフト版は設定の変更により1904年1月1日とすることも可能のようです。これらは別稿で示しました。日付は整数で管理されていますが、小数点以下にも意味があります。小数点以下は、整数部分が示す年月日の中の「時間」を示します。1日は86,400秒(=24×60×60)ありますから、エクセルでは1秒を[1/86,400]という値で管理します。小数点以下11桁で四捨五入すると、1秒は[0.0000115741]です。具体例として図を示します。

2020年7月1日に24、7月4日に19、7月5日に35と変化する数値があったとします。この変化を「直線付きの相関図」で描くと次図のようになります。実はセルの中に年月日だけを書き込むと、その日の「0時0分0秒」を示しています。通常は時間のことなど考えないので、書き入れる必要が無いだけです。ちなみに1900年1月1日に「1」から始まった場合の「2020年7月1日」のシリアル値は「44,013」です。これは1900年1月1日から数えて、2020年7月1日が「44,013日目」に相当するという事です。エクセルが扱える最大年月日は西暦9999年12月31日の「2,958,465」です。



このグラフに時間指定のデータを追加すると次図のようになります。
2020年7月1日12時43分45秒、15
2020年7月3日08時12分23秒、33
2020年7月5日15時52分43秒、25
例えば「2020年7月1日12時43分45秒」のシリアル値は、小数点以下10桁まで表示すると「44,013.5303819444」です。

長い経過(時間軸)のグラフを描くのに「時分秒」は不要ですが、もし1日の中での変化を描きたいような場合には役立つと思います。セルに表示させる際に桁を揃えるには、セルの表示形式をユーザー定義で変えておくのが良いでしょう。年月日の場合は「yy/mm/dd」、時間の場合は「hh:mm:ss」です。両方が必要な場合は「yy/mm/dd hh:mm:ss」です。



この図では2本の曲線を描きましたが、これは系列を2個使用したという事です。前稿で示したイラストは98個の系列を使用していました。この系列の中のデータ数は(x,y)形式の数値が2個の場合が最低で、この場合は1本の直線になります。データ数が少ない場合でも1系列が必要です。エクセルの仕様として系列数の上限は255個です。この上限まで使用したグラフを次に紹介します。

札幌西円山病院の回復期リハビリ病棟では、2015年8月1日から2020年5月30日までに合計1525人の患者さんが退棟しました。回復期リハビリ病棟に入棟する患者さんの身体運動能力はFIMと言われる評価法で定められます。このFIMは、各項目が1~7点の評価で求められます。このうち運動関連の13項目の合計点が、病棟の機能を示す実績指数の計算に使用されます。このFIM運動項目合計点を、各患者が入棟してから退棟するまでの変化として描いてみました。入棟時と退棟時のデータですから、患者1人あたり1系列を使用する必要があります。エクセルの仕様のため255系列が上限ですから、退院患者全員について示すことはできません。仮にできたとしてもグラフが直線だらけになってしまい、個々のデータは判別できなくなります。そこで、2016年1月から半年ごとの1ヶ月間に退院した患者に絞り込んでグラフを描いてみました。各月の退院患者数は以下のごとくです。
2016年1月、24人
2016年7月、27人
2017年1月、14人
2017年7月、33人
2018年1月、25人
2018年7月、34人
2019年1月、30人
2019年7月、29人
2020年1月、28人
以上、244人となりました。別稿で書いたごとく「縦の補助線」も「系列」として利用してますから、これが10本で10系列あります。図の右上がりの黒実線は実績指数ですが、これが1系列。合わせてちょうど255系列となります。実のところ、これは偶然でした。ここまでのデータでグラフを描き終えた後、もうひとつ系列を増やそうとしても不可能なことに気が付きました。何か不具合が生じたのか?と思って調べたところ、エクセルの仕様として系列の上限が255個だという事が分かった次第です。



この図に描かれている各直線は、一人の患者を示します。その患者の入棟時の運動FIM合計点と退棟時の運動FIM合計点を直線で結んだものです。右上がりの直線は、FIM合計点が上昇、すなわち身体能力が向上したことを意味します。右下がりの直線は、入棟後に身体能力が低下してしまった症例です。運動関連の項目は13個ありますから、全てが最低の1点だとするとFIM合計の最低点は13点です。13個の項目が全て最高の7点だとすると、FIM合計の最高点は91点です。FIM合計点や変化量(利得)は左の縦軸(Y軸)を見れば分かります。横軸(X軸)は時間の流れ(年月日)です。たとえば横に広いデータは、入棟期間が長いことを示します。このように各データ(直線)は、横軸(日数)と縦軸(FIM利得)という2つのパラメーターで示されます。なだらかな傾きの場合は、入棟期間が長く、かつFIM利得が小さいことを意味します。急峻な傾きの場合は、入棟期間が短く、かつFIM利得が大きいことを示します。

このグラフの左半分(2016年1月~2018年1月)と右半分(2018年7月~2020年1月)を比べると、違いが明らかです。色々な理由がありますが、直近の2年間に西円山病院の回復期リハビリ病棟に入棟した患者さんの身体運動能力の改善度が大幅に向上したことが分かります。各データを横切って右上に向かう黒実線は実績指数(右副軸)を示します。これは回復期リハビリ病棟の実力を示す指標です。これも大幅に向上しているのが分かります。

[補足]
1系列の中のデータについて、(x,y)形式のデータが最低2組が必要と書きましたが、これは直線を描く場合のことです。作図としては1組でも成立します。この場合は線ではなくて「点」が1個だけ描かれます。また、データが複数の場合でも「線で結ばない相関図」とした場合は、データの数だけの「点」が描かれます。同じ系列だと同じ色の点になりますが、系列を変えることで別の色の点として分けることが出来ます。


センター長  2020/07/06(Mon) 21:08:30
エクセルで自在なグラフを描く裏技
エクセル(表計算アプリ)で自由度の高いグラフを描く裏技的方法を紹介します。少し面倒ですが、思った通りのグラフが描けます。エクセルでグラフを書く時、通常なら「棒グラフ」や「折れ線グラフ」や「円グラフ」が多用されるのではないかと思います。相関関係を示すなら「散布図」です。私が必要とするのは何かの変遷(例えば業績)を知りたい時なので、形式的には折れ線グラフです。しかしエクセルが提供する「折れ線グラフ」は使いません。使うのはもっぱら「散布図(直線)」です。この「散布図(直線)」はX座標とY座標で規定される平面上のデータ同士を線で結ぶものです。使うのはこれのみと言っても過言ではありません。

グラフの作り方に入る前にイラストを紹介します。「ドクタースランプ」に登場するスーパーロボット「則巻アラレ」です(図1)。このイラストは、ここまで出来るという事を示すために「散布図(直線)」で描いたものです。まずはこのデータの成り立ちを説明します。私はPC-8001からパソコンを使い始めました。ワンボード・マイコンの次に出てきた黎明期の代表的な機種(NEC)です。まだCP/MとかMS-DOSというOS(オペレーティング・システム)も無い時代です。N-BASICというコンピュータ入門用の言語がOSを兼ねていました。この機種ではキャラクター(文字)単位でしか表示できず、絵を描くにしても粗いものだけでした。その次に使ったのがPC-8801です。PC-9801が出る前です。ここでN88-BASICとなり、line関数で線画を描くことが出来るようになりました。このイラストは、その時にデータ作成のために方眼紙に描いたものです(図2)。エクセルで使えるようにY軸の座標を変換してデータを作り変えました。蛇足ながら、この頃は右手でテンキーの0~9、左手でa~fというブラインド・タッチで、雑誌に載っているインベーダー・ゲーム等のマシン語プログラムを入力していました。マシン語とは16進数の0~fからなる2桁表示の数字の羅列です。





元のイラストは30年以上も前のものです。これが手元に残っているのは「袋ファイル整理法」のおかげですが、これについては稿を改めて書きます。このイラストは「98本の折れ線」から出来ています。ここで言う折れ線とは「一筆書きで描ける線」のことであり、イラストは「一筆書き(折れ線)」の集合体ということです。(x,y)で指定される単純な座標データが98系列あります。例として左目と瞳のデータを示します。
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左目(x,y)
125,103
127,102
129,101
131,98
132,95
133,89
133,81
132,76
130,72
128,70
126,69
123,69
120,72
118,76
117,82
117,90
118,95
120,100
122,102
125,103
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左瞳(x,y)
126,93
127,92
128,88
128,83
127,80
126,78
124,78
123,80
122,84
122,88
123,91
124,93
126,93
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この稿は「散布図(直線)」を用いたグラフの描き方です。このグラフが威力を発揮するのは、何かの経時的な変化を追うときです。経時的な変化の典型例は「横軸(X軸)が日付」の時です。エクセルは西暦1900年1月1日をシリアル値の「1」として、連続した数値に置き換えます。横軸を日付にすると、1月や8月のような大の月は31日間、4月のような小の月は30日間、2月は28日(閏年なら29日)の間隔で示されます。縦軸(Y軸)のデータ量の変化が、時間の流れ(横軸)に応じて表示されるのです。Y軸の変化量が同じ場合であっても、その変化が短い期間で生じたものなのか、長い期間を要したものなのかが直観的に分かります。

例として、札幌西円山病院の回復期リハビリ病棟における実績指数の変化を取り上げます。x軸の座標は便宜的に各月の中央を指定しました。2月は14日。それ以外は15日です。2016年6月から2019年7月までのデータを示します。
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日付(x),実績指数(y)
2017/06/15 , 19.5
2017/07/15 , 17.5
2017/08/15 , 17.1
2017/09/15 , 15.5
2017/10/15 , 13.5
2017/11/15 , 11.9
2017/12/15 , 12.3
2018/01/15 , 13.0
2018/02/14 , 13.9
2018/03/15 , 14.7
2018/04/15 , 16.2
2018/05/15 , 18.8
2018/06/15 , 18.7
2018/07/15 , 21.1
2018/08/15 , 22.8
2018/09/15 , 25.0
2018/10/15 , 28.1
2018/11/15 , 28.5
2018/12/15 , 31.9
2019/01/15 , 33.4
2019/02/14 , 36.0
2019/03/15 , 36.2
2019/04/15 , 37.6
2019/05/15 , 39.9
2019/06/15 , 38.5
2019/07/15 , 39.0
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エクセル上では、この2列のデータをマウスでドラッグしてデータ範囲を指定し、「散布図(直線)」を指定します(図3)。この例では毎月の数値が存在しますが、仮に途中のデータが欠落している場合でも、横軸のスケールは変わりません。逆に、途中に複数のデータが有る場合でも、元の横軸のスケールが変わることはありません。横軸(x軸)は日付だからです。このデータは、最初に示したイラストで言うと「一筆書きで描ける線」の1本目であり「系列1」です。



これに日付が一定間隔でない架空のデータを加えます。
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日付(x),架空データ(y)
2017/06/25 , 30.0
2017/09/03 , 32.0
2017/10/05 , 19.0
2018/01/03 , 23.0
2018/10/20 , 22.0
2019/03/03 , 19.0
2019/03/31 , 24.0
2019/05/05 , 32.0
2019/06/07 , 29.0
2019/07/15 , 34.0
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最初に出来た折れ線にカーソルを当ててマウスを「右クリック」します。するとメニューが出てくるので「データの選択」を選びます(図4)。そうすると「データソースの選択」なるボックスが出てきます(図5)。そこで「系列の追加」をクリックすると、「系列の編集」ボックスが出ます(図6)。ここで新たなデータの範囲をx座標とy座標について指定します。これが「一筆書き」の2本目に相当します(系列2)。折れ線の色や太さは後で変更できます。







データが増えていった場合、追加されたデータをグラフに反映させる必要があります。同じように線(どれでも良い)にカーソルを当てて「右クリック」して「データソースの選択」なるボックスを出します(図7)。今度は、変更したい系列を指定して「編集」をクリックします。図8では例として「系列2」のデータを追加します。そこで選択した系列のx値(増えた日付の行番号)と、y値(増えた値の行番号)を変更します(図8)。あらかじめ、グラフのデザインについて線の太さ等を決めておくと、そのデザインのままで折れ線が伸びていきます。





この方法の見た目の欠点は、x軸のメモリ表示が「一定間隔の日付」になってしまうために「月の始まり」と合わない事です。これは邪魔ですが、どうしようもありません。表示を消える設定にするか、背景の色(デフォルトでは白)と同じ色の四角形を作って覆います(図9)。私はグラフエリアに自動的に描かれる横線や縦線も邪魔なので消します。そして、各月の1日を「系列」として追加で入れています。データと同じく「一筆書きの線」とする訳です。これは面倒な処理ですが、最初に1回やっておけば済みます。このグラフの場合、y軸の最大値は45ですから、例えば2017年6月1日に縦線を入れたい時には、(x,y)の形式で示すと「(2017/6/1,0)から(2017/6/1,45)まで」の線を引きます。座標は2個しかありませんが、これが「一筆書き」の3本目(系列3)です。
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日付(x),縦線のy座標(y) ← x座標が同じだと縦線になる
2017/06/01 , 0
2017/06/01 , 45
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もう1本、7月1日の縦線を入れてみます。「(2017/7/1,0)から(2017/7/1,45)まで」の線です。これが「一筆書き」の4本目(系列4)です。これらの縦線も自動的に色が付いてしまいますが、細い黒の点線にでも変えておくと見やすいかと思います。
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日付(x),縦線のy座標(y) ← x座標が同じだと縦線になる
2017/07/01 , 0
2017/07/01 , 45
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このグラフに横線を入れてみます。例えば「y軸の40の高さ」に、2018年2月1日から2019年1月1日までの横線を入れます。データを(x,y)の形式で示すと「(2018/2/1,40)から(2019/1/1,40)まで」の線です。前記と同様の方法で系列を追加します。これが5本目(系列5)の「一筆書き」です。
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日付(x),横線のy座標(y) ← y座標が同じだと横線になる
2018/02/01 , 40
2019/01/01 , 40
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このように、次々と「系列を増やす」ことでグラフはいくらでも複雑にすることが可能です。y軸のスケールは基本的に左側の主軸ですが、右側に副軸を作ることもできます。最初のイラストで示したように、この「一筆書き」は必要とあれば途中から日付を戻る(線が左側に戻る)ことさえできます。データが(x,y)座標で指定されていれば「一筆書き」はどのようにも描けるからです。これは通常の「折れ線グラフ」では不可能です。グラフには、文字列のコメントや簡単な図形を付け足すこともできます。この稿で示した方法でグラフを作ると、データがどれくらいの時間をかけて変化してきたかが直感的に分かります。「過去から現在までの推移」を視覚的に理解すると、「未来を予測」することも可能です。その場の数字の大小だけで一喜一憂していても仕方がありません。

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センター長  2019/09/08(Sun) 15:49:12
暦のこと (6) 新暦と旧暦の差
明治33年から明治39年までを調べる限り、旧暦の1年(平年)は 354日または 355日ですが、閏年では閏月(29日または30日)が挿入された分だけ、1年の日数が多くなります。旧暦では「大の月」は30日、「小の月」は29日でした。今だと違和感がありますが旧暦では 2月30日が存在しますし、12月29日が大晦日のこともありました。旧暦の閏年は 2~3年(平均 2.7年)に1度なので、けっこう頻回です。新暦と違って固定されている訳ではなく、専門の役人がこれを決めていました。「大の月」と「小の月」の順番も固定されていません。改暦以前(明治5年まで)、庶民は年末になって翌年の暦が発表されるまで、翌年の予定がたてられなかったようです。暦は単に日付の確認というだけではなく、吉凶にも関連します。行事予定や建築の際の方位決定・運勢など、実生活で重要な役目を果していました。小説「天地明察」で描かれてますが、日蝕や月蝕などの「蝕」は「凶のサイン」だったようです。暦には計算により算出された「蝕の日」が書かれています。これが正確かどうかは大問題だったようです。

明治5年(1872年)12月の改暦により28日分が失われました。明治5年12月3日に相当する日が明治6年 1月1日(新暦)になりました。明治5年12月は旧暦の「大の月」であり晦日は30日。改暦により明治5年の 12月3日から 12月30日までの28日が失われたことになります。ちょうど4週間なのは、曜日を狂わせないためです。これにより、まず新暦と旧暦には4週間という「暦上のズレ(差)」が生じました。このズレ(差)は (1) 旧暦と新暦では 1ヶ月の日数が異なることにより少しずつ変化していきます。旧暦の「大の月」は30日、「小の月」は29日です。新暦では「大の月」は31日、「小の月」は30日(ただし2月は例外)です。この1ヶ月の長さ(日数)の違いが、ズレ(差)の原因の1つ目です。旧暦では大の月と小の月の順番も固定されていませんでした。この他に (2) 旧暦で2~3年(約 2.7年)毎に挿入される閏月のため、別の「ズレ(差)」があります。2つの理由による暦上の「ズレ(差)」は周期的に変化します。旧暦の閏月が挿入される直前で最小(約1ヶ月)となり、閏月の挿入の直後で最大(約1ヶ月半)となります。

新暦(グレゴリオ暦)の1年は 365日です(4年に1度だけ 366日)。一方の旧暦(天保暦)では何月が「大の月」なのか「小の月」なのかは固定されていなかったので、年にもよりますが 1年(平年)は 354日前後です。この時点で、新暦と旧暦では 1年あたり 365-354=11日(新暦の閏年なら 366-354 = 12日)ズレることが分かります。このズレの蓄積は、前記のように旧暦と新暦で 1ヶ月の長さが異なることによります。旧暦の太陰太陽暦では「閏月」があります。月の満ち欠けを 太陽に合わせて調節するために、2~3年(平均すると 2.7年)に1度だけ 1年が12ヶ月ではなく「13ヶ月」になります。追加・挿入される月を「閏月」と言います。閏月は、けっこう頻回ありました。この閏月が「大の月」なら 30日、「小の月」なら 29日分だけ 1年が長くなります。この「閏月のある年」が「旧暦の閏年」です。「新暦(グレゴリオ暦)の閏年」は、閏日(2月29日)が1日長いだけなので 1年=366日です。「旧暦(天保暦)の閏年」では閏月の分だけ 1年が 30日または 29日分も長くなります。もともとの「旧暦の平年」は 1年=354日前後であり新暦より短いのですが、閏年では閏月分が加わるので1年=384日(または383日)にもなってしまい、新暦(365日または366日)より長くなります。旧暦の方式(太陰太陽暦)では、この閏月の挿入によって季節を調節していました。

これらの理由により新暦と旧暦で「暦上の日付の差(ズレ)」は周期的に変わっていきます。単純化すると「旧暦の平年」が続いている間は毎年 約11日縮まっていき、閏年があると一気に延びます。端数を外してさらに単純化すると、1年あたり10日ずつ縮んでいきます。閏月があると30日延びるので、10日縮んだ分と合わせると20日延びます。

例えとして12月1日(新暦)に絞って説明します。旧暦の明治33年は閏年であり「閏8月」が挿入されます。従って明治33年の12月1日(新暦)と、それに対応する10月10日(旧暦)は差(ズレ)が大きくて51日あります。明治34年では12月1日(新暦)と、それに対応する10月21日(旧暦)の差(ズレ)は40日であり、前年より11日短くなります。明治35年では12月1日(新暦)と、それに対応する11月2日(旧暦)の差(ズレ)は29日であり、前年より11日短くなります。ではこのまま差(ズレ)がどんどん縮まっていくかと言うと、そうはなりません。次に示すように「閏月」の存在があるからです。

小林多喜二が生まれた明治36年は旧暦の閏年であり「閏5月」がありました。従って12月1日(新暦)と、それに対応する10月13日(旧暦)の差(ズレ)は48日にもなります。前年(明治35年)よりも19日伸びるのです。多喜二の実際の誕生日(明治36年12月1日)において、新暦と旧暦換算(明治36年10月13日)の暦上の差(ズレ)が大きいのはこのためです。明治37年では12月1日(新暦)と、それに対応する10月24日(旧暦)の差(ズレ)は37日です。前年より11日短くなります。明治38年では12月1日(新暦)と、それに対応する11月5日(旧暦)の差(ズレ)は26日であり、前年より11日短くなります。明治39年は旧暦の閏年です。この年は「閏4月」がありました。従って12月1日(新暦)と、それに対応する10月16日(旧暦)の差(ズレ)は45日であり、前年よりも19日伸びてしまう・・・この繰り返しです。このように新暦と、それに対応する旧暦との間の「暦上の差(ズレ)」は、少しずつ縮んでは 2~3年毎に1度の閏月を越えると、また延びる・・・を繰り返します。この他に、新暦では4年に1度、閏日が挿入されるので、ここでも少しずれます。新暦の2月は28日(平年)と29日(閏年)の2通りですが、旧暦の2月は29日(小の月)と30日(大の月)の2通りです。また西暦1900年(明治33年:新暦)は、例外的に閏日(2月29日)が挿入されません。ですから、そう単純な話ではありません。

暦に関する一連の稿は、下記のURLに書いた内容を凝縮して載せたものです。図はすべて省略しました。暦に興味がある方は、こちらへどうぞ。ここでは小林多喜二の誕生日が間違って伝わっていた謎についても考察しています。誰かが旧暦変換を2回やってしまったのです。私は犯人は父親の末松さんだと推測しています。私の手元にあった曽祖父の除籍謄本が秋田さきがけ新報の記事になった時を境にしてウィキペディアの記載が変わりました。この除籍謄本は2019年2月に小樽文学館に寄贈しました。今も展示されていると思います。

http://www.ne.jp/asahi/tar/cat/index.html

センター長  2019/09/04(Wed) 16:02:28
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