音階について(3)
音楽の話に戻ります。例えばピアノの調律は「440Hzの<ラ>(A4)」を基本とするようです。ピアノの調律師は「ラ」の音叉を愛用してるのでしょう。神経内科医も音叉を持ち歩いています。調律のためではないので六角レンチで周波数が変えられるタイプのものもあります。これは患者さんの振動覚(深部覚)を検査する為のものです。踝(くるぶし)などの骨が体表に近い部分にあてて、振動を感じなくなるまでの時間を調べます。時報なども「ラ」の音が用いられています。プロのシンガーさんから聞いた話ですが、用いる楽器の「ラ」の音を440Hzではなく、442Hzとして調律するアーチストがいるそうです。周波数がわずかに高いと、何かブライトな感じがするのだそうです。

カラオケを歌う時などに、歌い易さのために「キーを上げる」とか「キーを下げる」とかすることがあります。ここで言うキー(key)とは「調」の事です。「調」とは「基準になる音を主音(第1音)とする音階でできた曲」の事だそうです。ピアノの場合、「<ド>→<レ>→<ミ>→<ファ>→<ソ>→<ラ>→<シ>→<ド>の変化」は、<ド>から始まって白鍵盤のみを打つものです。<ド>→(全音)→(全音)→[半音]→(全音)→(全音)→(全音)→[半音]と変化します。この配列は「ダイアトニック・スケール(全音階)」の中でも「イオニア」であり、後で触れます。「スケール(scale)」とは「高さが異なる複数の音からなる規則的な配列(音列)」のことであり、「音階」のことです。ダイアトニック・スケールは教会旋法です。「最も自然に響く7つの音を基にしたスケール(音階)」のことです。7種類あります。このダイアトニック・スケール(全音階)に対して、クロマティック・スケール(半音階)というのもあります。これは例えば<ド>から始まってオクターブ全ての音です。すなわち最初にピタゴラスが解明した、「ド・ド#・レ・レ#・ミ・ファ・ファ#・ソ・ソ#・ラ・ラ#・シ・ド」の13音であり、ピアノで言うと、白鍵盤と黒鍵盤の全てです。もうひとつ、ホール・トーン・スケール(全音音階)というのもあって、これは全てが全音の間隔の音階です。<ド>から始まると、「ド・レ・ミ・ファ#・ソ#・ラ#・ド」となります。

さきほどダイアトニック・スケール(全音階)には7種類あると書きましたが、この中の「イオニア」が、長音階(major scale)なんだそうですが、これ以上は深入りしないことにします。理論的背景は知りませんが、とにかく「ダイアトニック・スケール(全音階)」の中の「イオニア」パターンで鳴らすと、スタートの音が何であれ、私にはちゃんと「ドレミファソラシド」と聞こえます。これが不思議で仕方がありません。これが相対的音階というもののようです。ひとつの曲の途中からキー(調)が変わる場合を「転調」と言い、ひとつの曲をまるごと別のキー(調)に移すことを「移調」と言うそうです。最初に例に出したカラオケの歌い易さとは、これなのでしょう。

さきほど、「<ド>→(全音)→(全音)→[半音]→(全音)→(全音)→(全音)→[半音]」というパターンを示しましたが、このパターンを保ったまま「ドレミファソラシド(ハ長調:C major)」を半音上げて<ド#>から開始すると、次のようになります。
<ド#>から始める:<ド#>→<レ#>→<ファ>→<ファ#>→<ソ#>→<ラ#>→<ド>→<ド#>
全音あげて、<レ>から開始すると、次のようになります。
<レ>から始める:<レ>→<ミ>→<ファ#>→<ソ>→<ラ>→<シ>→<ド#>→<レ>
同じように<ファ>から始めると、次のようになります。
<ファ>から始める:<ファ>→<ソ>→<ラ>→<ラ#>→<ド>→<レ>→<ミ>→<ファ>
これは「ヘ長調」だそうです。ただし「ヘ長調」と言う場合は<ラ#>でなくて<シ♭>とします。平均律だと、<ラ#>と<シ♭>は同じ(同音異名)ですが、音律によっては違う(異名異音)のだとか。

ピアノなど手元にある方はやってみると良いですが、身近にピアノがあるくらいなら、とっくに知っていることでしょう。コンピュータだと、ちょっとした仮想鍵盤のアプリケーションがあります。ちゃんとドレミファソラシドに聞こえます。しかしながら、絶対音感がある人にとっては違和感があるかもしれません。絶対音感の人が「キーを変えたドレミの歌」を聞いても「ドレミ」にはなってないはずです。これは後で出てきますが、「固定ド派」の人には「ドレミ」ではないということであり、「移動ド派」の人にとっては「ドレミ」に違いないと言うことです。私にはちゃんと「ドレミ」と聞こえるので、私は「移動ド派」ということになります。人間の聴覚は、蝸牛という器官の中に、楽器のハープを横にず~っと伸ばしたような構造がもとになっています。そして「外界から入ってくる音」に対して、「それに対応する長さの弦」が共鳴して振動します。ですから物理現象がそのまま当てはまるはずです。従って人間の脳は、音を「差」ではなくて「比」で感じる仕組みなのでしょう。

厳密な定義では、「音名」とは「音そのものの名前」だそうです。音名は絶対値として周波数に対応していて、「いわゆるドレミファソラシド(ハ長調)」は、「ハニホヘトイロハ」とか「CDEFGABC」と表すのが正しいようです。この「音名」に対して、「階名」とは「単に主音から何番目かを示すだけ」です。ハ長調ならC4が<ド>、ヘ長調ならF4が<ド>になるそうです。ですから、本来なら「ドレミファソラシド」は「階名」としてのみ用いるべきであり、この立場の人を「移動ド派」と言うようです。一方、「ドレミファソラシド」を「音名」として考えてしまう、言わば「固定ド派」がいることが、混乱の元になっているようです。さきほど、自分自身は「聞こえ方」として「移動ド派」だと書きました。しかしながら、これまで「ピアノの鍵盤のハ長調の場所だけ」がドレミファソラシドだと思っていました。固定観念としては「固定ド派」だった訳です。私の疑問は、まさしくここにあったのです。

理屈っぽい事を書いてますが、私はテレビでやっているカラオケバトルが好きです。カラオケマシンが、歌う人の声を採点する仕組みです。基本的には、声の周波数分析だと思うのです。マイクから拾った声が、その楽曲の音階の周波数にどれだけ合致しているか、またそのタイミングが重要なのでしょう。それに、ビブラートとか色々な加点が付きます。以前、荒牧陽子さんが出演したとき、思ったより点数が伸びなかったことがありました。その時はマイクを口に近づけたり離したりしてました。人の耳には心地よくても、マシンが声をうまく拾えなかったため周波数の解析がうまくいかなかったのではないかと思います。荒牧陽子さんの「ものまね」は「凄い!」の一言に尽きます。私はファンとして何度かディナーショーに参加したことがあります。青木隆治さんの「ものまね」も凄いです。青木隆治さんは声帯の位置(高さ)をかなり調節できます。そうやって共鳴空間の体積(長さ)を変化させて声の周波数を巧みに変えているのだと思います。管としての共鳴空間の長さが短いと高音になるので女性のような声を出すことが可能なのでしょう。また最初の稿で「声帯自体は弦楽器に相当する」と書きました。弦の場合、出る音の高さを決める条件が3つあります。(1)単位長さ当たりの弦の質量 (2)弦の長さ (3)弦の張力です。人間の場合は声帯を交換することはできませんし、その構造から考えて長さを調節するのも困難と思います。しかしながら3番目の条件、声帯の張力を変えることは可能だと思います。男性の声帯は女性の声帯より長いために低い音が出るのですが、喉頭にぐっと力を入れて筋力で声帯を引っ張り伸ばして張力を上げることで、高振動にしているかと思われます。

ひとつ付け足します。<ド>から<次のド>までのオクターブにおいて、13音があると書きました。<次のド>を含めなければ12音です。例えばピアノの場合は、鍵盤ごとに弦の長さが決まっていますから、ある鍵盤と隣の鍵盤の間の音は存在しません。言わば階段状のデジタルのような世界であり、隣同士の鍵盤の音は断続的です。ところが管楽器では違います。ある音符の音と、その隣の音符の間の周波数を出すことが出来ます。このように、音をアナログとして連続して出す方法をグリッサンド奏法と言います。人間の発声器官の基本構造は管楽器と同じです。音符で表示できない音も出すことが出来るのです。人間の発声装置は言語まで使いこなすのですから万能の楽器と言えます。

(補足1)
ピアノでもグリッサンド奏法をすることができるようです。理論的には不可能だと思うのですが、おそらく人間の聴覚くらいなら胡麻化すことが出来るのでしょう。そう単純な技術ではなく、ネットに書かれていた方法としては・・・
音を上げていくとき
手掌を裏返しにして鍵盤に4本の指を当てる→それぞれの指に均等に重さをかけながら撫でるようにする
音を下げていくとき
4本の指を丸めて、爪先を鍵盤に当てる→水面を爪でなぞるようにする
・・・のが基本だそうです。

(補足2)
「ダイアトニック・スケール(全音階)」の中の「エオリア」パターンで鳴らすと短音階(自然的短音階:natural minor scale)です。ピアノの白鍵盤で構成される「ラシドレミファソラ」のように、「<ラ>→(全音)→[半音]→(全音)→(全音) →[半音]→(全音)→(全音)」というパターンだそうです。

(補足3)
音楽用語(英語)は日常的に用いられる意味と違うものがあって、それを知らない素人の私の混乱の元になりました。文中に出てきたものも含め、覚書として書き留めます。
key → 調
scale → 音階
note → 音、音符
code → 和音
major → 長
minor → 短
sharp → 嬰
flat → 変

センター長  2019/07/31(Wed) 15:46:30
音階について(2)ピタゴラス音律
1オクターブを12音に分けることは、かなり昔から行われてきました。紀元前500年頃に「三平方の定理」で有名なピタゴラス(BC582~BC496)が解明しました。時代的には釈迦や孔子と同じ頃です。日本では縄文文化時代の最後の頃です。ピタゴラスが古代ギリシャの街中を歩いているとき鍛冶屋の前に来ました。カンカンとハンマーで鉄が叩かれているのですが、音が2つ重なったときに、心地良い時と、そうでない時がありました。この差は何なのだろうと興味を持ったわけです。心地良いことを「協和する」と言いますが、ここでは表現を「心地良い」と統一します。早速、羊の腸で作った弦で実験を始めました。ある弦の長さを半分にして、元の長さの弦と同時にならすと、実に心地良い響きを出しました。単に心地良いだけでなく、「同じ音」に聞こえました。音の高さは違うのに関わらずです。このことを「オクターブ等価性」と言います。この2つの音の間に存在するいくつかの音を1オクターブとして、ひとつの集合体と考えました。

音階を解明するにあたり、ピタゴラスが何の音から開始したのか私は知りません。ここでは周波数が理解しやすいように<220Hzのラ>から始めます。ピタゴラスと同じ方法で次の<ラ>に続く12音を探します。<ラ>の弦の長さを半分(1/2)にすると物理の法則により周波数は2倍になります。これが、1オクターブ上の<ラ>です。元の長さの弦と一緒に鳴らすと実に心地良く響きました。これ以外に(1/3)にしても心地良いことがわかりました。弦の長さを長くすると低い音になります。元の長さは2倍でも3倍でも同じ理屈で、心地良いことになります。「弦の長さ」と、それが出す「音の周波数」は反比例します。弦の長さが半分になると、周波数が2倍になるのです。これを混ぜて書くと混乱してしまうので、以下では周波数についてのみ書きます。

2つの原則を利用します。
(1) 周波数が3倍(もしくは1/3)になっても、元の音とは協和性が良い(心地良い)。
(2) 周波数が2倍(もしくは1/2)になったら、元の音との協和性がものすごく良い。同じ音と見做すことができるほどであり、これを「オクターブ等価性の原理」と言います。

この2つの原理を用いて、「ラ・ラ#・シ・ド・ド#・レ・レ#・ミ・ファ・ファ#・ソ・ソ#・ラ」が出来るまでを芋づる式に追っていきます。<220Hzのラ>から始めますが、便宜上、1オクターブ上の<ラ>を <・ラ>、2オクターブ上の<ラ>を <・・ラ>という風に書きます。pdfファイルとして2つの図を添付します。図1の上から順に追っていくとよいでしょう。

(01) まず<220Hzのラ>です。
(02) この<220Hzのラ>の周波数を3倍します。すると660Hzになります。求めたい音階(オクターブ)の周波数は「220Hz<ラ>からその2倍である440Hz<・ラ>まで」です。従って660Hzでは、ひとつ上のオクターブです。そしてこれは上のオクターブの<・ミ>です。そこで、この660Hzを半分にして330Hzにします。これが求める範囲のオクターブの<ミ>になります。オクターブ等価性の原理により、周波数を半分にしたのです。
(03) この<330Hzのミ>を3倍します。990Hzになります。これは求めたい音からすると、2オクターブも上です。2オクターブ上の<・・シ>に相当します。これを半分にした495Hzは<・シ>です。これでも1オクターブ上なので、さらに半分にします。247.5Hzが求めたい<シ>です。オクターブ等価性の原理を2回使用しました。
(04) この後も芋づる式です。この<247.5Hzのシ>を3倍します。742.5Hzになります。これは1オクターブ上の<・ファ#>です。これもオクターブ等価性の原理により半分にします。これが<371.25Hzのファ#>です。
(05) この<371.25Hzのファ#>を3倍します。1113.75Hzになります。これは求めたい音からすると、2オクターブも上です。2オクターブ上の<・・ド#>に相当します。これを半分にした556.875Hzは<・ド#>です。これでも1オクターブ上なので、さらに半分にします。278.438Hzが求めたい<ド#>です。
(07) この<278.438Hzのド#>を3倍します。835.313Hzになります。これは1オクターブ上の<・ソ#>です。これもオクターブ等価性の原理により半分にします。<417.656Hzのソ#>です。
(08) この<417.656Hzのソ#>を3倍します。1252.969Hzになります。これは求めたい音からすると、2オクターブも上です。2オクターブ上の<・・レ#>に相当します。これを半分にした626.484Hzは<・レ#>です。これでも1オクターブ上なので、さらに半分にします。313.242Hzが求めたい<レ#>です。
(09) この<313.242Hzのレ#>を3倍します。939.727Hzになります。これは求めたい音からすると、2オクターブも上です。2オクターブ上の<・・ラ#>に相当します。これを半分にした469.863Hzは<・ラ#>です。これでも1オクターブ上なので、さらに半分にします。234.932Hzが求めたい<ラ#>です。
(10) この<234.932Hzのラ#>を3倍します。704.795Hzになります。これは1オクターブ上の<・ファ>です。これも半分にします。<352.397Hzのファ>となります。
(11) この<352.397Hzのファ>を3倍します。1057.192Hzになります。これは求めたい音からすると、2オクターブも上です。2オクターブ上の<・・ド>に相当します。これを半分にした528.596Hzは<・ド>です。これでも1オクターブ上なので、さらに半分にします。264.298Hzが求めたい<ド>です。
(12) この<264.298Hzのド>を3倍します。792.894Hzになります。これは1オクターブ上の<・ソ>です。これも半分にします。これが<396.447Hzのソ>です。
(13) この<396.447Hzのソ>を3倍します。1189.341Hzになります。これは求めたい音からすると、2オクターブも上です。2オクターブ上の<・・レ>に相当します。これを半分にした594.671Hzは<・レ>です。これでも1オクターブ上なので、さらに半分にします。297.335Hzが求めたい<レ>です。
(14) この<297.335Hzのレ>を3倍します。892.006Hzになります。これは求めたい音からすると、2オクターブ上の<・・ラ>に相当します。これを半分にした446.003Hzは<・ラ>です。最初に始めた<ラ>から1オクターブ上がりました。ここが終了点です。このように出来たのがピタゴラス音律です。人類初の音律の誕生です。

求めたいオクターブの音階は「220Hz<ラ>から440Hz<・ラ>まで」でした。ピタゴラス音律では、最後がピッタリと収まりません。この446.003Hzから、本来の440Hzを引いた「6.003Hz」の差分は、「ピタゴラスのコンマ」と言われる誤差でしょうか。前稿で示した「2の12乗根」の等比数列の場合(平均律)ほどは正確ではなく、わずかな誤差が生じます。pdfファイルの図2には「平均律」と「ピタゴラス音律」の音の周波数を並べて示しました。比べてみると分かるように、途中の音も少しずつ差があります。「ピタゴラス音律」では、「ピタゴラスのコンマ」は途中のどこかで調整して妥協しました。コンマとは「断片」の意味です。胡麻化したとはいえ、この時代として、かなり正確な音階が出来上がったのです。同じ頃、中国大陸でも「三分損益法」という似たような理屈により12音に分けられたようです。偶然の同時発生とも考えにくいので、どちらかがどちらかに形を変えて伝わったのかもしれません。

音楽は最初から単なる娯楽だったわけではありません。最初は宗教儀式とか、呪術や政治に用いられたはずです。現在、用いられている時刻は基本的に12分割です。方位も12分割。暦や季節も12分割です。「12」という数字は、「1」とそれ自身の「12」の他にも、「2」でも「3」でも「4」でも「6」でも割り切れる便利な数字です。

ところで、バッハやモーツァルトやベートーベンの時代の音楽は、前稿で示した「平均律」が普及する前に作曲されたものです。人類初のピタゴラス音律ではなく、それが改良されてできた純正律という音律で作られたそうです。現在、主流となっている平均律は数学的には正確で美しいのですが、「協和度」については純正律よりも劣ります。ですから現在、これらのクラシック音楽を当然のように「平均律」で演奏しているのだとすると、曲全体のニュアンスは当時の作曲者の意図とは異なっている可能性があります。現在の平均律を当然の事と思い込まされることで、人類の聴覚は昔よりも鈍くなっているという考えもあるそうです。

./image/1564479875_803.pdfPDFファイル


<< pdfファイルの説明 >>

図1
横棒の長さが「弦の長さ」に相当します。全長が「220Hzのラ」の弦から始めます。弦の長さを半分にすると、2倍の周波数になります。弦の長さを1/3にすると、3倍の周波数になります。弦の長さが、元の長さの半分になるまでの間(220~440Hz)に「求めたいオクターブの音」が存在します。この中(220~440Hz)に、「協和する音」を芋づる式にたどっていきます。周波数が440~880Hzは1つ上のオクターブです。880~1760Hzは2つ上のオクターブです。求めたいオクターブの弦長を赤(記号の例えは<ド>)、1つ上のオクターブを青(記号の例えは<・ド>)、2つ上のオクターブを緑(記号の例えは<・・ド>)で示しました。

図2
前稿で示した「平均律」の場合の周波数も書き入れました。芋づる式に音を追っていく途中のピタゴラス音律の場合との微妙な違いが分かります。最終的に「ピタゴラスのコンマ」が存在する理由も分かるでしょう。この図2では、「たどる順番」の数字を追っていくと、図1の通りになります。本文もそうですが、あくまで素人作ですから思い込みや間違いがあるかもしれません。

参考文献:音律と音階の科学(新装版) 小方厚 ブルーバックス 2018/5/20


センター長  2019/07/30(Tue) 18:43:21
音階について(1)平均律
人間の発声器官は極めて巧妙に出来ています。音を出す部分は弦(=声帯)が振動する弦楽器とも言えますが、全体の基本構造は管楽器と同じです。この稿は音階についてです。音階(1オクターブ)には「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」の8音があるのは誰でも知っているでしょう。ピアノの白鍵盤です。1オクターブとは、<あるド>から<次のド>までの8音のことを言います。「オクターブ」の語源には「8という数字」が関係しています。タコは8本足なのでオクトパスです。現在の「オクトーバー」は10月ですが、元々は8月のことでした。ひとつのオクターブには白鍵盤の「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」だけでなく黒鍵盤の「ド#・レ#・ファ#・ソ#・ラ#」がありますから、全部で「ド・ド#・レ・レ#・ミ・ファ・ファ#・ソ・ソ#・ラ・ラ#・シ・ド」の13音があります。<上の方のド>を外して考えると、半音ずつ上がって12個、全音だと6個です。以下では周波数の説明のために「ラ」から始まる音階を考えます。すなわち、「ラ・ラ#・シ・ド・ド#・レ・レ#・ミ・ファ・ファ#・ソ・ソ#・ラ」の13個です。それより下もありますが、便宜上220Hz(ヘルツ)から始めて説明します。220Hzとは空気が1秒間に220回振動した時に出る音です。この220Hzの音は「ラ」です。そして一定倍率で増えていき、次のオクターブの「ラ」では、ちょうど2倍の「440Hz」になります。その次の「ラ」は、その2倍の880Hzです。

現在の音階には「平均律」が採用されています。「220Hzのラ」から半音上がった<ラ#>の振動数は、<元のラ>の1.05946倍の「233.082Hz」です。その次の<シ>の振動数は<その前のラ#>の1.05946倍の「246.942Hz」です。数学的に表現すると「音階は1.05946・・・を公比とする等比数列である」ということになります。これを書き留めると下記のようになります。

<ラ> (A3) 220.000 Hz
<ラ#> (A#3) 233.082 Hz = 220.000(ラ)×1.05946
<シ> (B3) 246.942 Hz = 233.082 (ラ#)×1.05946
<ド>  (C4) 261.626 Hz = 246.942(シ) ×1.05946
<ド#> (C#4) 277.183 Hz = 261.626(ド)×1.05946
<レ>  (D4) 293.665 Hz = 277.183(ド#)×1.05946
<レ#> (D#4) 311.127 Hz = 293.665(レ)×1.05946
<ミ> (E4) 329.628 Hz = 311.127(レ#)×1.05946
<ファ> (F4) 349.228 Hz = 329.628(ミ)×1.05946
<ファ#>(F#4) 369.994 Hz = 349.228(ファ)×1.05946
<ソ> (G4) 391.995 Hz = 369.994(ファ#)×1.05946
<ソ#> (G#4) 415.305 Hz = 391.995(ソ)×1.05946
<ラ> (A4) 440.000 Hz = 415.305(ソ#)×1.05946

<ラ>から12回掛け算して2倍(<オクターブ上のラ>)になりますから、この<1.05946・・・>という数字は「2の12乗根」です。この「乗根」について触れておきます。一番単純なのは「2の2乗根(平方根)」です。√2(ルート2)と書きます。平方根について馴染みのあるものには以下があります。
√2=1.41421356(人世一夜に人見ごろ)
√3=1.7320508(人並みにおごれや)
√5=2.2360679(富士山麓オーム鳴く)

2の3乗根とは3回掛け算すると2になる数字です。2の4乗根とは4回掛け算すると2になる数字・・・という風になります。このように、12回掛け算して2になる数字は「2の12乗根」です。エクセルでは[=2^(1/12)]という数式で求めることができます。[^]は乗数の演算(べき乗)に用いられる記号です。2の2乗なら[=2^2]です。「乗根」の場合は、乗数を分数にします。ですから、「2の12乗根」とは「2の<1/12>乗」と表現します。関数としては[=POWER(a,b)]があります。これは「[a]の[b]乗」を意味します。関数という形式だと、他のセルを参照することが出来ます。[a=2]、[b=1/12]の場合が「2の12乗根」です。以上が、「平均律」と呼ばれる近年の音律の理論です。

センター長  2019/07/29(Mon) 21:03:28
小林多喜二の脚長差
三浦綾子さんは北海道旭川市出身の作家です。晩年、自身のパーキンソン病闘病生活を描いた「難病日記」という本を出しています。この稿はこれとは別の本の話です。「母」という本がありますが、これは小林多喜二の母親、セキさんを描いた作品です。「あとがき」の中には、「小林多喜二の母を書いて欲しいと三浦(夫)から頼まれたのは、かれこれ十年以上も前のことになろうか」と書かれています。この「母」を書いたのは1992年2月とありますから、依頼されたのは1982年(昭和57年)より数年前頃という事になります。セキさんは1961年(昭和36年)、ツギさんは1972年(昭和47年)、チマさんは1975年(昭和50年)に他界してます。当然ですが、セキさんへの取材はありません。ツギさんやチマさんにも会ってないでしょう。あとがきには「三吾氏始め、ごきょうだい」とありますが、その頃に健在だったのは弟の小林三吾さんの他には妹の高木幸(ユキ)さんしかいません。ですから、この「母」は、三吾さんと幸さんの2人、そして多喜二の知人からの情報、その他は種々の文献から作家なりの視点で描いたものと思われます。

この「母」には多喜二の外見に関する記述が出てきます。私が読んだのは文庫版ですが、まず167ページに三吾さんの言葉として「あの、あんちゃんの肩上がり、目立つなあ。何とかならんもんかなあ」とあります。2度目は174ページ、多喜二が他界した日の朝についてセキさんの回想として、「あの朝に限って、多喜二の右肩上がりのうしろ姿が、遠ざかって行くのが目に浮かぶ」とあります。これらは多喜二の姿勢が右肩上がりだったということを示しています。その身体的特徴から、遠くからでも特高警察に見つけられてしまうのではないかと家族が心配しているのです。

倉田稔氏の「小林多喜二伝」によると、多喜二は庁立小樽商業学校の3年生の器械体操の授業で、鉄棒から落ちて右下肢を骨折しました。チマさんは1年生だと記憶しているようです。庁立小樽商業学校は2年間の予科と3年間の本科からなっていました。ですから、チマさんの記憶が「本科1年生」とすると、これは庁立小樽商業学校として3年生にあたりますから、矛盾はありません。この骨折は、大腿か下腿か分かりません。大腿骨なら大ごとでしょうから、もっと大きな話題になってそうに思えます。骨折は下腿だったのではないでしょうか。多喜二がこの頃に書いた「病院の窓」という作品で、右下肢にギプスを巻いて松葉杖で歩いている人物が出てきます。自分自身がモデルです。入院した病院は前出の「小林多喜二伝」によると「鎌倉病院」だそうです。小樽の古地図には色内駅の近くに鎌倉病院があります。同じ名前の病院は近くには無いでしょうから、入院していたのはこの病院だと考えられます。骨折以外も含め多喜二が手術を受けたとの記録はないようですし、ギプスを巻いて保存的に治療したのだろうと思われます。化骨の途中で荷重をかけると偽関節が生じたりして問題がありますが、骨折自体は固定しておけば自然に治ります。その際、不完全な整復で曲がったままギプスを巻いてしまうと、曲がったまま骨が繋がってしまいます。従って、左右の下肢の長さに差が生じるのです。これが脚長差です。下肢の長さは大腿骨の大転子から外果(外くるぶし)までとして定義されます。正確に言うと「転子果長」と言って、足部を含みません。多喜二の骨折は右下肢ですから、右下肢が少し短かかったとすると、そのままでは上半身が右に傾きます。従って、バランスをとるために上体を左に傾ける必要があります。すなわち代償性の側弯となり、相対的に右肩が上がった状態になる可能性があるのです。多喜二を良く知る風間六三氏は「小林が商業三年の頃、機械(原文のママ)体操で右脚を怪我してから歩き方が変わったときいている。肩で風を切るような歩き方はそのせいだと思っている」と言っています。これは「脚長差による跛行」と、それによる「上体の揺れ」だと考えられます。

私が3歳の頃、セキさんに会ったことがあります。3歳ですから覚えていませんが、祖父の葬儀に来てくれた時のことです。多喜二は祖父の従弟でした。祖父の父親(私からすると曽祖父)は小樽でパン工場を創業して多喜二の学業援助をした人でした。このパン工場は苫小牧市の「株式会社三星」につながっています。そんな関係もあり、私の手元には世に出ていない資料があります。この話を含め、このブログとは別のホームページで展開しています。かなりマニアックではありますが、興味のある方は以下のURLでどうぞ。

「知られざる小林多喜二の周辺」

http://www.ne.jp/asahi/tar/cat/


センター長  2019/07/18(Thu) 20:31:09
怪文書
6月にブログを開始して、なるべく分かり易く書いたつもりですが、それでも難しいという声がありました。これまで直立二足歩行がひとつのテーマでした。今回は毛色の違うものを書きます。先日、机周りを整理していた時、ある文書が出てきました。10年以上も前のものですから公表しても問題はないでしょう。当時、皆で大笑いしました。今、読んでも笑えます。要するに医者を対象とした「振り込め詐欺」です。笑いどころは幾つかあります。まずこの文書を作った人は、「医者は脛に傷持つ者ばかり」と思ったようです。もうひとつ、この文書は対象者の名前だけ変更して同じ病院の何人にも来ました。他の部分は同じ内容ですから比べれば即座に分かります。それに句点と読点の使い方が変です。日本の初等教育を受けた人なら、こんな文章は書かないでしょう。いくつかを伏字にして再現しました。

--------------------------------------------
●●●病院
●●科医師
●●●●様

拝啓 梅雨の候、ご貴殿にはますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。

唐突ではございますが、個人調査の依頼が舞込み難問の処理について●●様にお伺いのお手紙を差上げた次第です。実は、特別依頼人より当事務所へご貴殿の身辺調査依頼があり現在調査を実施致しております。本件は、間接的に個人から出版関係へそして当調査事務所へと依頼の経緯があった模様ですが、個人調査の開始を指示された意図は、遺恨が原因ではと当方は解釈致しておりますが如何なものでしょうか、ついては下記をお伺致したくご連絡を致しました。

一、難問の処理についてと申しましたのは、依頼者より当方に対し大変な要望がありました。『院内各所にスキャンダル暴露記事を顔写真付きで数十枚を掲示』院内各所に告知を求められております。この様な要望・要求は初めてで我々も驚きを隠せません、万一履行した場合は当然職員、患者、病院等は大騒ぎになるのは必定。しかし、依頼人は正気です。

一、●●様の多情な女性遍歴による腐れ縁、セクシャルハラスメント等も掌握しており、「性」について特異な性癖をお持ちと聞き込みによる貴重な証言もあり現在進行中も含め、その他についても確認、解明を急がしております。

経緯は、上記進行中の調査で●●様の「スキャンダル」は現地事務所の報告により明白です。本件を放置すれば取り返しの付かない事態に至りますので、当方は個人の裁量により提議が必要と判断しご通知致しました、依って対処は間違の無い方法を選択され十分に気を付けて行う事が寛容かと存じます。昨今、日常的に紙面を賑わすセクシャルハラスメントによる女性蔑視、差別は深く考えさせられ、被害者の人格や心情を一顧だにせず、欲望を満たす為のケースが最近の兆候です、当事者は憤懣やるせない精神的苦痛を解消する為に暴露に及び、真相解明・問題解決へ訴訟に対する追跡調査の依頼件数も増加傾向です。

本件の重要性は当事者が一番ご承知の事で●●様の生命線を断ち切るに値する重大な問題です。●●様が過去に培って来られた、社会的信用と実績は一挙に崩壊致します。汚点を消し去るには早期に対処せねば成りません。良く熟考され保身は内々に対処すべきが重要かと進言致します。

本件の調査は、最終段階に入っており●●様身辺に関する勤務先及び自宅での聞き込み、素行調査等を手分し聞き取り調査を数名で当る準備が整っておりますが、勤務先、家族、ご近所に概況を察知されかねません。要らぬ風評により今後に及ぼす影響は計り知れないものと思われます、現在の立場を考えれば、深刻な事態に至らぬまでに素早い対応が必要かと推察いたします。

●●様の要望があれば協力は惜しみませんのでご連絡下さい。現時点ならば如何様にも対処方法、解決策はございます。但し、当方に協力要請希望の場合のみ ●●@yahoo.co.jp ご連絡下さい。その他、内容に対する相談等はご遠慮願います。

猶予期間も余り御座いませんので、連絡は平成●年7月14日迄の期日内に連絡がない場合は身辺調査を再開し事前の業務通り遂行し是非とも正確な資料を提出したいと思っておりますので速やかに連絡をお願いします。

本件についての進言は以前先生に大変お世話になった経緯があり注進に及んだ次第です、本人が直接処理ともなれば感情が入り良い進展は望めませんが、当方ならではの確実な処理の秘策がございます。当方は、個人信用調査会社に属する立場の者ですが、●●様の件に関し個人で対応しておりご貴殿に脅威を与える者では御座いませんのでご安心下さい。又、守秘義務厳守で行いますので安心してご連絡下さい。必要ならば解決後に資料を送付も致します。

●●様の社会的立場、今後の医師評価の減点を避け大過なく激務に励まれんことを希望しております。尚、この度は、ご貴殿の立場を考慮して、封筒・文面の差出人・住所すべて匿名にし書面で行ったのは配慮致したつもりです。

敬具

平成●年7月9日
東京都千代田区●●●●●●
●●●●オフィス
札幌統括 ●村●陽
--------------------------------------------

その後、医師会から注意を呼び掛ける文書が来ました。一部、黒塗りしてPDFファイルとして添付します。

./image/1563278794_768.pdfPDFファイル


センター長  2019/07/16(Tue) 21:05:46
ページトップへ