(1) 婦人科
内視鏡手術と癌診療が中心になっています。平成18年の総手術数は700件であり、そのうち腹腔鏡や子宮鏡を用いた内視鏡手術が427件と国内で有数の実績となっています。内視鏡手術の利点は何と言っても侵襲が少ない点にあります。そのため退院が早く、日常生活への復帰が早いことが特色です。退院までの標準日数は子宮鏡手術で翌日、腹腔鏡手術なら卵巣・卵管の手術や子宮筋腫の核出術で術後2-4日、子宮全摘術では4-5日となっています。しかし反面小さい穴を通したカメラや器械を使っての手術のため一般の手術とは異なった高度な熟練した技術が求められます。当科では比較的早くから内視鏡手術に取り組み、開院以来の内視鏡手術件数はすでに2500件に達し腹腔鏡手術だけでも2000件を超えています。これらの豊富な経験の積み重ねを生かし難度の高い内視鏡手術も行えるようになっています。これらのうち腹腔鏡手術から術中開腹手術に移行したのは3.6%、子宮鏡手術から術中開腹手術に移行したのは1.1%です。グラフのように年々内視鏡手術の割合が多くなっており今や内視鏡手術が標準といえます。夜間や緊急の患者さまも、当院では救急体制も麻酔科も充実していますので内視鏡で緊急手術を行う事もできます。
手術法のいろいろを知っていただくために代表的な婦人科良性疾患である子宮筋腫を例に挙げましょう。子宮筋腫の手術治療法では内視鏡・開腹手術ともに子宮を摘出する方法と子宮を残して筋腫だけ摘出する方法があります。いずれにもメリットもデメリットもありますのでどれが一番良いということではありません。当科の平成18年の子宮筋腫手術の内訳では91%が内視鏡手術で行われました。また子宮を温存する筋腫摘出(核出)術が全体の56%となっています。
がん治療は手術療法・化学療法・放射線療法を単独あるいは組み合わせて行います。当科では日本婦人科腫瘍学会専門医を中心としてがん診療を行っています。手術療法では排尿機能障害やリンパ浮腫などの後遺症が残る可能性がありますが、できるかぎり排尿機能を温存する手術を行うようにするなど、リンパ浮腫の治療にも力を入れております。さらには内視鏡を使ったがん手術も行うようになってきており、さらに体に対する侵襲を少なくできるように頑張っています。化学療法は非常に治療期間の長い治療法です。そのためなるべく入院期間を短くして自宅で過ごせる時間を増やせるよう工夫を重ねています。遠方の患者さまには地域の医療機関と連携しての治療も行っています。放射線療法は日本放射線腫瘍学会専門医が治療にあたっています。
がんの治療はガイドラインに沿った標準的治療を基本としますが、決して画一的なものではありません。がんの治療にも様々なオプションや組み合わせがあります。そして患者さま個人の人生観・価値観といった部分も大きな要素となります。その方にとって最適な治療は何かということを、話合いを重ねて選択してゆきます。
(2) 周産期
産科病棟・外来で働いているのは全員助産師です。妊娠中から妊婦さんとお話合いをしてその人に合った分娩プランを立て、栄養の取り方、生活の仕方や様々な不安などに対し色々とアドバイスを行っています。3室の分娩室はすべて陣痛から分娩まで個室内で行うLDRとなっています。夫立ち会いはもちろん、ご家族で新しい命の誕生に立ち会うこともできます。アロマセラピーやBGMによる自然な和痛を行いながら分娩まで過ごしていただきます。分娩は個性に合ったフリースタイルを取り入れ、側臥位や四つん這いなどその妊婦さんに最適なスタイルでのお産を行っています。LDRの他に分娩台ではなく畳を敷いたフラットルームもあります。出産されたママにはお祝いディナーをご用意しております。ご夫婦やご家族で病室ではなく貸し切りのレストランで心ゆくまで洋食フルコースをお楽しみいただけます。
赤ちゃんの哺育にはいかなる側面からも母乳がベストであることは世界的に認められた事実です。しかし全てのお母さんが簡単に母乳哺育をできるようになるわけではありません。当科の助産師は皆さんが母乳哺育できるよう入院中ばかりでなく退院後も母乳育児外来や電話相談などで様々なアドバイスをいたします。
当科には様々な合併症を持った妊婦さん、異常妊娠やハイリスクな妊婦さんも紹介されてきます。あらゆる病気に対応できる各専門科があり、緊急時にも麻酔科が迅速に帝王切開に対応し、生まれた赤ちゃんはすぐに小児科医が診てくれる、このようなバックアップがあってこそ良いお産に臨めるのだと思います。
(3) 生殖医療
結婚年齢が高くなってきている現在、赤ちゃんを望みたいけれどチャンスが少なくなってきてあせっているという方は増えています。子宮内膜症や子宮筋腫による子宮や卵管の異常が原因となる不妊も増加しています。当科では日本生殖医療学会指導医を中心にして最新の技術を駆使した治療に取り組んでいます。子宮内膜症や子宮筋腫による不妊や習慣流産に対しては内視鏡手術を用いた治療を行います。不妊治療としてはタイミング法から排卵誘発などのホルモン療法・人工授精(AIH)・体外受精・胚移植(IVF-ET)などの治療を行います。不妊治療は連日のように通院する場合もあり距離的な問題であきらめてしまう場合も少なくありません。当科では信頼できる不妊治療クリニックとの連携により、内視鏡手術で子宮や卵管の治療を行って良い状態にしたうえでそれらのクリニックで治療を続けていただくことも行っております。
(4) ウィメンズヘルス
女性ホルモンは生理や妊娠にだけ関係あるものではなくヒトの健康や若さを保つために必要不可欠なものです。ホルモンの失調や消失(閉経)は様々な健康への害をもたらします.下の図のように女性ホルモンがなくなると更年期障害ばかりでなく全身的な健康への影響が急速に進みます。更年期は自分にとってどのような体への影響がでるのかをチェックする良いチャンスです。若い人の無月経、月経に伴う苦痛や月経前緊張症、更年期障害、閉経後の骨粗鬆症などはいずれもホルモンに関連する疾患ですが適切な治療を受けられずに悩んでいる方も多いのが現状です。ピルや閉経後ホルモン療法は日本では過度に恐れられている印象があります。人によっては有害な事象が出るリスクもあることは事実ですが適切な使い方をすれば大きなメリットも得られます。もちろんこれらの疾患に対する治療法はホルモン療法ばかりではありません。それぞれに他の良い薬や漢方療法などがあり個人に合った治療法を選択することが可能です。当科にはホルモン療法やそれらの疾患のいろいろな治療法に精通した医師がおりますのでご相談ください。
(5) リンパ浮腫
婦人科がんや乳がんの手術や放射線療法を受けた後の大きな悩みの一つはリンパ浮腫です。リンパ浮腫が起きると蜂窩織炎という炎症を繰り返してだんだんひどくなり手足が硬く腫れ上がるなど、ひどい変形を起こし日常生活が困難になることもあります。何よりも女性にとって手足が腫れて変形することは耐え難い苦痛です。そのような重大な合併症にもかかわらず現在正式に保険がきく病気としては認められておらず、治療に取り組む医療機関もほとんどなく自己判断で弾性ストッキングやスリーブを着用たり自己流マッサージをするしかないという状態でした。
先進諸国ではリンパ浮腫に対して複合的理学療法を行うことが標準となっています。複合的理学療法とは炎症を防ぐためのスキンケア、リンパ液を流すリンパドレナージ(マッサージ)、圧迫療法、運動療法の4本柱からなっています。どの柱が欠けても充分な効果をもたらしません。また症状の出方は個人差が非常に大きいのでその人に合ったプログラムを行う必要があります。当院のリンパ浮腫外来は2003年1月、北海道初のリンパ浮腫治療専門外来として開設され、現在では北海道内外から多くの患者さまが受診されています。
当科の特色として、外来を担当する医師自らがリンパ浮腫治療セラピストの資格を持ち治療にかかわっております。これは全国的にも例を見ません。そして同様に専門訓練を受けセラピストの資格をもった看護師、理学療法士とチームを組んで治療を行っています。初期治療として3週間程度の集中治療を行い、その後の維持療法としてのセルフマッサージやセルフバンテージ(圧迫包帯)の指導を行います。普段の弾性ストッキングやスリーブも形・サイズ・圧迫の強さ・織り方など様々な違いがあり個人にあったものを選択します。場合によってはオーダーメイドが必要な事もあります。医師・看護師・理学療法士がそれぞれの特性を活かし、他科とも連携をとりながら、総合病院の特質を活かして充実したリハビリ施設を利用した質の高い治療が提供できるように心がけています。私たちは所属するリンパ浮腫治療研究会、日本産科婦人科学会、日本脈管学会などの関連学会を通じリンパ浮腫の複合的理学療法の健康保険適用を求めて厚生労働省に働きかけを行っています。