
心筋梗塞とは、心臓の筋肉に血液を送り込む血管冠動脈が詰まり、心筋細胞が壊死した状態のことを指します。できるだけ元通りの生活に戻るためには、迅速な治療がかかせません。心筋梗塞の症状や治療法などについて、手稲渓仁会病院の廣上貢 医師に聞きました。
心臓の表面には3本の冠動脈が走っていて、心臓を形づくる心筋に酸素と栄養を送り込んでいます。冠動脈が詰まって(閉塞といいます)血流が止まり、酸素と栄養の供給が滞ることで心筋の細胞が壊死した状態になることを、心筋梗塞といいます。心筋に壊死が起こるとポンプ機能が弱まり、放っておくと、壊死が広がるとともに心不全になったり死につながっていきます。
動脈硬化、すなわち血管(動脈)の老化現象が原因ですので、発症は60才代後半から70才代が最も多いです。ただし最近は、40才代から50才代にも増えてきているという報告もあり、若年の人でも油断できません。発症率は10万人に27〜30人/年ほど。男女比でいうと男性のほうが多いです。
心筋梗塞が起こるまでのメカニズムを追ってみましょう(図1)。
人が生きるうちに、血管の壁の内側に悪玉コレステロールなどがたまる部分が出てきます。これを処理するのがマクロファージ、通称おそうじ細胞です。しかし悪玉コレステロールをたくさんとり込んだマクロファージも死んでしまい、その死がいも蓄積されてきます。この沈着物は、血管の壁に徐々に蓄積して血管の内側に盛り上がっていき、やがて血管の内壁が破れて(破綻)、中身の脂質がむき出しになることがあります。この状態では、血液中の血小板や赤血球が血管の壁にくっつきやすくなり、血栓と言う血のかたまりになります。血栓は、いわゆるかさぶたですね。
動脈硬化の経過で血管が狭まったけれど、完全にはふさがってはいない状態を狭心症といいます。血液が流れにくくなっているため、運動や作業をした際に胸を押さえつけられるような鈍い痛みが出たりしますが、安静にして5〜10分でおさまります。
狭まった部分が、血栓によって完全に詰まってしまうと、いよいよ心筋梗塞が起こります。実際に発症した患者さまの話では、死を予感させる強い痛みを感じるそうです。冷や汗や吐き気もあります。
心臓の血流が滞ることで起こる狭心症と心筋梗塞。この2つをまとめて虚血性心疾患といいます。
心筋梗塞の急性期には、血栓吸引療法とステント留置療法からなる、カテーテル治療が一般的です。カテーテルという細い管を、太ももの付け根にある動脈から通し、冠動脈まですすめて行き、つまった冠動脈の血流を再開させます。
実際にはまず、最初に血栓を細い管で吸い出します。ひとまず血流は回復しますが、まだ再度つまりやすい状態です。そこで登場するのが、ステントと呼ばれる網目状の金属の筒です。細いバルーン付きのカテーテルにのせたステントを冠動脈の狭まった部分まで送り、バルーンをふくらませて血管ごとステントを押し広げ、バルーンだけをすぼめて体外にとり出します(図2)。図の左前下行枝という、左心室の前壁をやしなう冠動脈がつまって心筋梗塞となった例です。ステントが留置されて左前下行枝の血流が回復しています。
心筋細胞の壊死は、冠動脈の閉塞後、30分位からはじまります。社会復帰や元通りの生活を視野に入れると、できるだけ早期の血流再開が必要です。壊死しつつある心筋を助けるためには、発生から2時間以内の血流再開が必要です。先に挙げたような症状を感じたならば、“救急車”で一刻も早く病院に向かってください。
一度壊死してしまった心筋細胞が、元に戻ることはありません。壊死した部分は繊維化していき、時には壁が薄くなり、こぶのようにふくらむことがあります。また、心臓のポンプ機能が弱まるわけですから、壊死の程度によって心不全や不整脈といった後遺症も出現することがあります。
初回の発症で早期にステント治療をうけて、血流が再開した場合ですと入院期間は1週間から10日ほど。運動による心臓のリハビリを開始し、少しずつ運動量を増やしていきます。心臓リハビリも順調にすすめば社会復帰も可能ですよ。重労働はむずかしいですが、70%ほどの方が社会復帰しています。2時間以内にステント治療で血流を再開できた方は、ほぼ元通りの生活にもどれる可能性が高いです。
予防は糖尿病、高血圧症、脂質異常症(高コレステロール血症)と言った、いわゆる生活習慣病をきちんとコントロールすることと、タバコを吸っている人は頑張って禁煙することです。狭心症ということがわかっている方ですと、ある程度の危険予知ができる場合があります。しかし、実際には心筋梗塞の70%は突然起こっています。そして大切なのは、再発の予防です。一度心筋梗塞を起こすと、20~30%が数年以内に再発し、致命率も高くなります。心筋梗塞の予防のためには、正しい生活習慣を身につけ、適度な運動を行って生活習慣病をコントロールすることにつきると思います。
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廣上 貢(ひろかみ みつぐ) 所属/手稲渓仁会病院 循環器内科 副部長 ●プロフィール
[専門] ■虚血性心疾患の診断と治療(特にカテーテル治療) ■末梢動脈疾患のカテーテル治療 |
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