嚥下障害と誤嚥性肺炎について

“嚥下反射”とは口から取り入れた飲食物を正しく飲み込み、食道へと導く体の働きの事です。高 齢者や脳血管障害の後遺症がある人はこの働きが衰え、スムーズに食物や唾液を飲み込むことができなくなる“嚥下障害”がみられることがあります。嚥下障害 により、誤って唾液や食物が気管内へ入ってしまうと、肺炎を引き起こす危険もあります。この肺炎を“誤嚥性肺炎”といいます。 この誤嚥性肺炎を繰り返し発症した場合は「呼吸が苦しい」「むせる」「せき込む」「発熱」など、精神的にも肉体的にも多大な負担となり、結果的に寝たきりとなることもあります。最悪の場合、死に至るケースもあります

嚥下反射で重要な役割を果たすサブスタンス

嚥下反射で重要な役割を果たす神経伝達物質にサブスタンスPという物質があります。食べ物を飲み込む刺激によりサブスタンスPが放出され、嚥下反射が起こります。サブスタンスPの合成は、脳の中で生成されるドパミンという物質により促進されます。加齢による影響や脳血管障害などが原因でサブスタンスPが不足すると嚥下反射が低下することもあり、結果として嚥下障害や誤嚥性肺炎を引き起こしてしまうこともあります。

嚥下機能の簡単なスクリーニングテスト

水を3~5ccほど口に含んでから飲み込むまでの時間が5秒以上かかる人、ムセる人、飲み込むのに違和感のある人、飲み込んだあとに声が変わる人(水のみテスト)。30秒間でできるだけ唾液を飲み込み、飲み込めた回数が3回以下の人(反復唾液のみテスト)などは誤嚥のリスクが高くなるといわれています。

サブスタンスPを増加させる物質

サブスタンスPの分泌を促進する物質として身近な物に唐辛子の辛味成分であるカプサイシンがあります。このカプサイシンによってサブスタンスPの分泌を促進することにより、嚥下機能が改善したとの研究もあります。もし、「飲み込みがスムーズでなくなった」「最近よくムセる」などの自覚症状があるようでしたら、唐辛子を食してみるとよいかもしれません。ただし、必ず下記の注意事項を守ってください。

注意事項

  1. カプサイシンは大量に摂取すると毒作用もあるため、少量ずつ摂取すること
  2. 慢性気管支炎や呼吸器疾患の方(より咳き込むことがあるため)
  3. 消化器疾患(刺激により悪化することがあるため)
  4. 食べ物が口の中に多く残ってしまう方(口腔粘膜を強く刺激してしまうため)
  5. 食事中にのみ鼻水が多い方(鼻腔粘膜を刺激してしてしまうため)
  6. 脱水傾向の人(発汗を促してしまい、水分がより排出されてしまうため)
  7. 直腸・肛門疾患のある方(特に痔疾患のある方は症状を悪化させてしまうことがあるため)
  8. 辛いものが嫌いな方(食欲低下を引き起こすことがあるため)

など

お問い合わせ

コミュニティホーム白石 リハビリテーション部   作業療法士:福 島 雅 弘
Eメール:chsreh@keijinkai.or.jp